雑話:教皇捕獲組
タスクたちがクラ―トラム帝国に向かった一方――。
レヴェリア聖国に転移した、クラフト族王、ステイブ族王、ガンディ獣王、ゼファの四人は崖の上に立っていた。
「あん!?崖の上じゃねえか!あのスクロールは欠陥品か!?」
「どうであろうな。タスクに限って欠陥品など渡すはずはないと思うが」
「それもそうだな。で!?どうする、ガンディ!?」
「どうする、とは?」
「作戦だ!!」
「クラフト、おぬし、作戦を考える頭なんて持っておったか?」
「…………ねえな!!」
「であろう?」
ゴキゴキと首を鳴らすクラフト。
隣ではガンディが準備運動をしている。
その二人の後ろで、ステイブは顔を青くした。
「それじゃあ……」
「では……」
「「正面突破と行くか!!」」
クラフトは魔法鞄からアルプホルンに似た、一管の大きな笛を取り出す。
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――発動。
クラフトが演奏を始めると、四人の体は薄っすらと発光した。
「ステイブ!!俺たちを中央にある、あの神殿まで連れてけ!」
「……はあ。わかったよ。それじゃあ、ガンディさん、ゼファさん失礼しますね」
「すまぬ、ステイブ。頼んだ」
「申し訳ございません、ステイブ族王。よろしくお願いします」
ステイブが演奏を続けるクラフト、ガンディ、ゼファの三人を持ち上げる。
そして、スキルを発動させると駆け出し崖を飛び下りた。
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数秒後、着地と同時に轟音を響かせレヴェリア聖国内に突入した。
「お邪魔しまーす」
「言っとる場合か!!さっさと走らんかい!!」
ステイブはドシンドシンと大きな足音を立てて走る。
突然の事に驚いたレヴェリア聖国に住む信徒たちは慌てふためき、パニック状態になっていた。
そんな中――。
「そこの巨人!止まれ!」
道の真ん中でステイブを止めようとする一人の男が居た。
ステイブが足を止め首を傾げていると、男がまくし立てるように口を開く。
「私はレヴェリア聖国の創造神教会、五柱が一人、大司教ズーク・シクナデロ!巨人、此処が男神様の御加護を受けたレヴェリア聖国と知っての狼藉か!元よりお前のような巨人、
「どうしよう、クラフト?大司教さんが怒ってるよ?」
「大司教?知るかそんなもん!!用があるのは教皇――」
「私の話を聞けえ!」
「うるさいなあ。今、クラフトと話してるんだけど」
「き、貴様!大司教である私に五月蠅いとは……万死に値――グハッ!!」
激昂したズークは顔を真っ赤にして剣を抜こうとする。
刹那、ステイブはズークを蹴り飛ばした。
<体術>スキル『パワーブロー』:威力重視の打撃。
蹴られたボールのように宙を舞うズーク。
数十メートル吹っ飛んだズークの姿は建物を超え見えなくなった。
「あっ」
「ステイブ、おぬし。加減というものを知らんのか?」
「し、死んでないと良いですね」
「フンッ!!大司教っていやあ、ベルアナ魔帝都を襲ってきた奴らの上役だろ?気にすんな!いいから行くぞ!」
その後、レヴェリア聖国の中心に位置する大きな神殿の近くまでやって来た四人は、神殿前に停まっている馬車に乗り込もうとしている一人の男とそれを守るように取り囲む信徒の人だかりを見つけた。
男は豪華な刺繍の入った如何にも高位の祭服を着ており、手には大きな手荷物を抱えている。
「あれさ、どう見ても逃げようとしてるよね?」
ステイブが指をさすとクラフトは大声を上げる。
「オイ、ゴラァ!!逃げんじゃねえ!追え、ステイブ!!」
ステイブが走り出そうとした時、ガンディとゼファが地面に降り立つ。
「我が行こう。取り巻きは三人に任せる」
ガンディはその言葉と同時にメキメキと姿を変えた。
巨大化した体は人種に近い皮膚から分厚い皮膚に変わり、その上にはモサモサとした硬い剛毛が生えてくる。
元からあった長い鼻や象牙は更に伸び、より猛々しさを増したその姿は“
<獣化>スキル『チェンジシェイプ・
「ブォオオオオオオオオオオ!」
姿を変えたガンディは雄叫びを上げ、既に走り出した馬車の方へと走り出す。
それに呼応するようにクラフトは笛を吹き、ステイブとゼファは信徒の方へと走り出した。
一分も経たない内に追いついたガンディは馬車を真横から跳ね飛ばす。
その一撃で馬車の車輪や轅などの至る所が壊れ、横転し、繋がれていた馬が逃亡した。
すると、完全に動きを止めた馬車から一人の男が頭を押さえながら出てくる。
白に近い金髪に白銀の目、体は丸々と太っていた。
その男は黄金の歯を剥き出しにしながら、ガンディの方を見て叫ぶ。
「クソッ!何故、お前たちがここに居る!?円卓会議とやらの最中ではなかったのか!」
「我らが居る理由などどうでも良い事だろう。それよりもおぬし、レヴェリア聖国の新教皇ミスカ・ゴアカだな?」
「そ、そうだ!ご、五柱である私に危害を加えたら、どうなると――」
『ドサドサッ』
叫ぶミスカの隣に、先ほどまで取り囲んでいた信徒たちの山が出来上がった。
「ほう……で?どうなると?」
ガンディは凄むように顔を近付け、問いかける。
すると、ミスカは「ヒッ」と小さく声を漏らし、その場に座りこむと地面に勢いよく額を付けた。
「も、申し訳ございませんでした!ですが、聞いて欲しい!私は悪くないのです!すべては、そう!真祖レオンがやった事なのです!私に偽りの思想を植え付け、挙句、教会の権力を使い魔人種を貶めようとしたのです!悪いのは全て、真祖レオンなのです!」
「前教皇を殺したのも真祖と?」
「いいえ!違います!前教皇の件は現枢機卿であり、殺人一家のクランマスターでもあるモーハという男の仕業なのです!アイツは前教皇の教義は間違っていると言い、殺したのです!本当です!だから、私は何も悪くない!」
「ふむ。悪くないと言うのなら我らについて来れるよな?」
「と、当然です!私は何も罪を犯していないのですから」
その言葉を聞いたガンディは『チェンジシェイプ・
「では、帰ろうか」
「獣王様、これを」
ゼファはタスクから預かっていた教皇用の転移スクロールをガンディに渡す。
受け取ったガンディはそれを、ミスカに渡しながら言う。
「これは転移スクロールだ。それを使って先にベルアナ魔帝都へ飛べ」
「わ、わかった」
ミスカは文言を唱えると姿を消した。
それを見届けた四人も文言を唱え、ベルアナ魔帝都に帰還する。
「「「「転移、ベルアナ魔帝都」」」」
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