第172話
夕方になり、ヴァリミエも帰ってきた。ヴァリミエにも経緯を説明した後夕食になる。
俺は夕食の後片付けを終えてから、ティミショアラに尋ねた。
「死神はどうして、ゾンビを研究していた魔導士を使徒に選んだのかな?」
「わからぬ。神の考えることなど推測するだけ無駄だ」
やはりティミは神の意思は人にはわからないという考えらしい。
それを聞いていたルカが言う。
「でも、死神は不死を許さない神様でしょ? だから恐ろしいゾンビをばらまいて人々に不死への恐怖を与えそうってことで選んだんじゃないの?」
「確かに。前魔王や魔人王にゾンビ化の技術を教えて、恐怖を与えたのは事実じゃ」
「教訓を与えるためにってことじゃな……」
ヴィヴィとヴァリミエがルカに賛同する。
「たしか、我が教えに背いた旧き死神の使徒を倒せだっけ?」
ユリーナは俺から聞いた死神からの神託を口にする。
正確には「我が教えに背いた旧き使徒に死を与えよ」である。
「つまり、ゾンビ化の技術を広めたりアンデッドの研究をするのは教えに背いてないってことなのだわ」
「そういう考えもあるな」
「だけど、自らがアンデッドになるのは教えに反しているということで、加護を喪った。そう考えるのが素直かしらね?」
ユリーナの推測は当たっている気がする。
俺はチェルノボクにも尋ねることにした。
「チェルはどう思う?」
『んーわかんない』
「そうか、わかんないか」
『うんー』
チェルノボクは少し眠そうだ。
夕飯の時、チェルノボクは美味しそうにミレットの作ったご飯を食べていた。
お腹いっぱいになって眠くなったのだろう。
そういうところは人間と同じなのかもしれない。不思議な感じだ。
ティミショアラはシギショアラを指先でこちょこちょしながら、つぶやくように言う。
「もう一度言うが……神の意志などわからないと考えたほうがいい」
「そんなもんか」
「わかりやすいなどと考えるのは不敬だろう」
「ふむ」
「わかったつもりになるのも不敬だ。人間の身、いや古代竜の身ですら傲岸と言える」
そして、俺の目を見た。
とても真剣な目をしていた。
「アルラ。そなたは強い。だが傲岸不遜は身を滅ぼす。ゆめゆめ忘れるでない」
「肝に銘じる」
そしてティミは笑顔になる。
「アルラには、シギショアラを成長させるまで死んでもらっては困るからな!」
「りゃっりゃ!」
「ほら、シギも死なないでって言っておる」
「ほんとに言ったの?」
ティミはシギの言葉を適当に翻訳している気がしてきた。
「いや。そのー。あれだ。たぶんそんな気配があった」
「やっぱり適当に言ったんだな」
「りゃっりゃー」
シギはティミのところから俺の前までふわふわ飛んでくる。
そして、俺の手に体をこすりつけてくる。可愛い。
俺はシギの頭を、そしてお腹を撫でまくってやった。
「りゃあ!」
シギは嬉しそうに声を上げる。
俺がシギと遊んでいると、クルスがルカに尋ねた。
「ルカ、チェルちゃんって、なんて種類のスライムかな?」
「うーん。そうねー。青いからブルースライムでしょ? チェル。何か特殊能力は持っているの?」
『わかんないー』
チェルノボクがフルフルしながらそう言うので、代わりに俺がルカに教えてやる。
「チェルは超強いターンアンデッドを使えるんだよ。あと今日念話も使えるようになった」
「なるほど……」
ルカは考え込んだ。両手でチェルノボクをもみもみしている。
「ぴぎぃぴぎぃ」
チェルノボクは声を上げる。どこか気持ちよさそうな声だ。
マッサージみたいなものかもしれない。
「スライムは外見による分類と能力による分類があるの」
「ほうほう」
「外見からの分類はそのままブルースライム、グリーンスライムとかね」
外見での分類というより、ただの色分けである。
スライム自体が不定形なので仕方ないのかもしれない。
「能力による分類はどういうのがあるんだ?」
「アシッドスライムとか、ポイズンスライムとか、フレイムスライム、フリーズスライムとかかしら」
それを聞いていたクルスがいう。
「いっぱいあるんだねー。知らなかったよ」
「アシッドとポイズン以外、見かけることは滅多にないから」
「チェルちゃんは、酸とか毒とか使えるの?」
『つかえないー』
「炎とか氷とかは使えないのー?」
『つかえないよー』
「そうなると、ブルースライム……かしらね」
「ただのブルースライム?」
「恐らく」
ルカはそういうが、少し腑に落ちなくもある。
「ただのブルースライムを前死王が実験魔獣として飼ったりするかね?」
「そこは不思議ね。チェル、何か聞いてない?」
『うーん。せいめいりょくがたかいとかいってたー』
「なるほど。わかったわ」
ルカが満足げに、うんうんとうなずいた。
「ブルーライフスライムね!」
「それってどんなスライムなの?」
「青くて耐久力が異常に高いスライムよ。魔獣ランクはBね」
「Bランク魔獣か。チェルは強いんだな」
「ピギー」
チェルノボクは鳴いた。どこか嬉しそうだった。
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