第185話

 水竜の集落は危機に陥っていた。

 上空には昏竜イビルドラゴンが二十体、地上には魔装機械が三十機並んでいる。

 水竜たちが激闘を繰り広げていた。


「ここまで侵入されているってことは、結界を突破されたか?」

「ガウ!」


 俺の後ろから襲いかかってきたアークヴァンパイアをガルヴがねじ伏せた。


「ガルヴ、助かった!」

 そう言うと同時に、俺は氷槍アイシクル・ランスを連続で作り出す。

 狙いは上空の昏竜だ。合計五十本の氷槍を二十体の昏竜に打ち込んだ。

 まともに食らった昏竜は致命傷をうけて地面に墜ちた。

 魔法障壁で防いだ昏竜も羽が凍り、大きく体勢を崩す。そこに水竜たちが殺到する。


 氷槍の発射と同時に俺は走る。

 次の狙いは魔装機械だ。俺の通常の魔力弾マジック・バレットで倒すには二発いる。

 より威力の高い魔法がいい。だが巻き込みが怖いので範囲の広い魔法は使えない。


「……これが早いか」


 邪神の頭部からラーニングした暗黒光線ダーク・レイを使うことにする。

 周囲に黒い球を十個出現させた。ふわふわと浮かぶ黒い球から光線を撃ち込むのだ。

 さすがは邪神の魔法。

 暗黒光線は魔装機械の青い障壁を砕いて、装甲を突き破り、内部で爆発した。


「よし」

 十機を倒して、次の魔装機械十機に狙いを定める。

 その瞬間、魔装機械の障壁の色が黒に変わった。そこに暗黒光線がぶつかる。


「なっ!」

 魔装機械の張る障壁によって、暗黒光線は完全に弾かれた。

 魔装機械は色々な魔法障壁を使い分けられるらしい。


「ならば!」

 俺は一気に近くの魔装機械との距離をつめると、魔神王の剣で斬り裂いた。

 俺を目掛けて、魔装機械が攻撃を一斉に繰り出してくる。

 眼にもとまらぬ速さの小さな金属の塊が何十、何百と飛んでくる。


 ――ガガガガガガガッガ

 魔法障壁を三枚張って防ぐ。一枚目の障壁は砕かれたが、二枚目で止まった。

 素早く移動しながら、魔装機械を斬り飛ばしていく。

 ガルヴは俺の真後ろを走ってついてくる。なかなか速い。


 正面の魔装機械を斬り飛ばし、右にいる魔装機械を下から魔法の槍で貫く。

 すると、また障壁の色が変わる。今度は無色だ。

 一機が魔法で破壊されると、残り全機がその属性を防ぐ障壁に変わるようだ。

 前回戦った時にはなかった機能だ。進化しているのだろう。


 水竜たちは水属性の魔法が得意だ。

 だが、水の魔法で一機でも破壊すれば、もう水魔法が通じなくなる。

 水竜に対して非常に有効な機能と言えるだろう。


「これは、苦戦しても仕方がない」


 そして俺は大声を出す。


「魔装機械に対しても、水の魔法をどんどん使ってください!」

「で、ですが! ラックさん。水の魔法はなぜか通用しなくて」

 水竜の一体が叫んだ。効かなかったことを伝えようとしているのだろう。


「知ってる! 俺を信じろ!」

「っ! わかりましたっ!」


 水竜たちは一斉に水の魔法を使い始める。

 水の魔法が常に通用するように、俺は水以外の魔法で破壊し続けなければならない。


 魔法の槍、暗黒光線、雷撃サンダーストライク。交互に使って倒していく。

 魔神王の剣でも斬り裂いていく。


 真横や後ろからヴァンパイアロードから何度も奇襲を受けた。

「ガガウ!」

 それはガルヴが防いでくれる。

 ロードの首に噛みつきねじ伏せ、完全に息の根を止めるのだ。


「GYAAAAAAAAA」

 羽が凍り地面に墜ちた昏竜が俺に向かって爪をふるう。

 かわす間がない。咄嗟に剣で防いだ。

 昏竜の真横からガルヴが首に噛みついた。


「GYAAA!」

 ガルヴの牙は昏竜にも効いているようだ。

 動きの鈍った昏竜を魔法の槍で腹の下から背中に向けて貫いた。

 断末魔の声を上げて、昏竜は動かなくなる。


 ケーテもリーアも侍従長モーリスも竜の姿で、戦っている。

 モーリスは相変わらずの強さだ。

 ケーテは風のブレスを使いにくいようだ。集落ごと破壊してしまうからだろう。


「ガラクタと雑魚竜ごときが! 風竜王を舐めすぎなのである!」

 爪で魔装機械を貫き、昏竜を牙でねじ伏せている。

 昏竜のブレスも障壁と羽で防いでいる。当代の風竜王は伊達ではないようだ。


「あぶないの!」

 リーアもかなり強い。昏竜にねじ伏せられかけた水竜を助けている。

 そして水の魔法。水刃アクア・ブレードが魔装機械を斬り裂いていく。


「甘いです!」

 リーアの真後ろに現れたヴァンパイアロードをニアが斬り裂く。

 ニアはリーアの羽と羽の間に乗って、その背中を守っていたらしい。


「ニア。ありがとう」

「いえ! こちらこそありがとうです!」

 活躍の場を得ることが出来て、ニアはとても嬉しそうだ。


「風の魔法の効きがいいのである!」

 ケーテは少し嬉しそうだ。

 ケーテの竜巻の刃トルネードブレードが魔装機械を上空へ跳ね上げながら、斬り裂いていく。

 周りが水の魔法を使いまくっているせいで、風は効きやすいのだろう。


 俺も快調に魔装機械と昏竜を退治していく。

 俺は特に大きな昏竜を目標にした。

 魔法の槍と氷槍を連続で撃ち込みながら、距離を詰め剣で斬りかかる。

 昏竜も強力だ。魔法障壁と爪で俺の攻撃を防ぎきる。


 至近距離で魔法を撃ち込もうとした、その瞬間、

「うらああああ」

 真後ろからヴァンパイアに襲われた。

 ガルヴが噛みついて防ぐ。一瞬で息の根を止めた。だが、それも囮。

 別のヴァンパイアが俺の真横に出現すると同時に剣をふるう。

 俺は咄嗟に障壁で防ぐ。あっさり砕かれた。後方にとんで距離をとる。

 浅いが剣で腹を斬られている。直後、一瞬くらりとした。

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