第14話 深泥


すこしだけ休めたら


けれど時は止まらぬ


すこしだけ立ち止まれたら


けれど夜は明けてしまう




背負ったぶん重くなるだけ


休んだ分溜まるだけ


歩みを止めた分


その重さで深く深く


沼に落ちていく






ああ 時が止まってくれたなら


ああ 足を止めてしまえたなら


だけど願っても足掻いてもそれは叶わぬ


だからぼくらは自らの時を止めるのだ



まだここに拾いきれていないものがあるから


まだ足が沼から抜けていないから


それでなお


明日へと切り替わる夜明けに身を刻まれぬよう


「ごめんな、まだ明日へはいけないや」


この夜のうちに閉じ込める




本当はひとやすみさえできたなら


きっとまたここに帰るはずなのに




ああ


でもそうだな


大切な人たちの時は止めたくはないのだ



この存在など空気のように溶けて


その記憶など抜け落ちてくれたなら良いのに

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