第16話 シンガーソングライター

スポットライトはなくて


拍手のひとつもなくて


乾いた靴の音に消えぬように



彼は歌う



彼は歌う



人の優しさを


あたたかさを


綺麗なものを


…人知れず落ちた涙を



零点の空のした



100点も取れなかった歌声で


どんな賞もくぐれなかった歌詞を



その笑顔はきっと気にしちゃいない



好きなんだ


好きなんだよと


君のうたにはないのに


そのえくぼは言うんだ



よれたパーカー


傷だらけのギター


くるりと月を向く毛先


立派なものなんかなにひとつないけれど


大事なものをひとつだけ知っているんだ




靴の音を沈めた


冴えないひとりぼっちと


しっぽを振った小さな赤いチョーカー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る