第17話 VSキラービー
「よくぞ、この村を救っていただきましたにゃ。ありがとうございましたにゃ」
すっかり晴れの引いた村長さんは、カバ族のような人ではなくてとってもチャーミングな猫族のお嬢さんでしたわ。
「いえいえ、勝手に治療をさせてもらい恐縮です」
「お礼というか……報酬なのですが……」
おお! それなら獣人全員をモフモフさせていただければ! っていうわけにもいかんよなあ。
「村は既に王国への拠出で、男手も食料もすっからかんな状態にございますにゃ。ましてやお金も……」
「それならば……」
いつものように『魔力』をいただければ結構でございますよ? 猫耳村長さん。
「ほ、本当にそれでいいのですかにゃ?」
「ええ、もし食料も必要であれば用意しましょうか?」
「にゃにゃんと! 一体どこに物資が?」
「魔法……察していただければ幸いです」
「あ、なるほど……空間…… いや、もうしわけないにゃ。秘密は守るにゃ」
「助かります」
まあ、今更隠すのもなんだって話なんだが、極力拡散は避けたい。
「それと…… 今回のキラービー、巣を叩かないとだめですよね?」
「そうなんだにゃ…… 今回そのための『冒険者』を雇ったんだけどにゃあ…… 反撃にあって全滅したらしいにゃ。どうしたものかにゃあ。また王都へ依頼する間に襲われたら手も足もでないにゃ」
「それでしたら、このよろずやキンタにお任せくださいませんか?」
「ん? 冒険者でもないキンタ殿が魔物の退治かにゃ?」
「ええ、策はあります。わたしと護衛のソフィ、あと数人お手伝いいただければ大丈夫かと」
「それも報酬は……」
「構いませんよ。村の方全員分の魔力をいただいて余剰があればそれで清算します。多分足りないと思います。その時は2日分以上ということでお願いします」
「す、すまないにゃ。キンタ殿のような商人に会ったことがないにゃ」
まあ、そうだね……おれは異世界仕様だから!
隣でニコニコと頷くソフィ…… 本当は自分たちエルフの村も救ってもらったと言いたいのだろうが、今は変装中である。
ということで、この村の多くが猫族出身というので試しに『キャットフード』なんかを提供させてもらったけど…… いいよね? 多分。
「う、美味いにゃ! この猫の顔が書いてある食い物(缶詰)美味すぎるにゃ!」
この村も次の収穫まで2か月ほどとのこと。できれば1か月分をなんとか用意してほしいとのこのなので、200人*30日*2食=12000食を通販でゲット。
12000*200円=240万相当の食料
対して猫族の人の平均魔力が120。
120*200人*2日=48000(480万円相当)
なので収支としては極めて真っ当な商売である。
まあ、追加の仕事次第では3~4日分の報酬(魔力)をいただければ問題はない。
「今回の塗り薬、食料、キラービー退治の費用すべてで5日分(1200万円相当)ということでどうでしょうか?」
キン○ンも100瓶分(約8万円相当)ほど使ったしねえ。
「わたしらは何日分でもかまわないにゃ。キンタ殿の好きなだけ持って行ってほしいにゃ。ついでに可愛い女の子もつけようかにゃ?」
え! ほんとに! いてっ!
鼻の下伸ばそうとしたら、ソフィ嬢に強烈に抓られたでござる。おれは悪くない……
「キンタ様…… キラービーの巣を退治に早く行きましょう!」
待て待て……しっかり準備が必要なんだ。
キラービーの巣退治に用意したのは、対虫用の防護服と殺虫剤、それに噴霧器である。
おれとソフィア、お手伝いの猫娘2名の計4人で行くことになった。
緊急退避が必要になった場合に備えて馬車も用意する。
「なんと……どこから馬車を…… いや、見なかったことにしますにゃ」
モフモフの敵キラービー! いざ退治せん!
~王国と帝国の国境付近~
「はあはあ…… 行け! 早く王国上層部に連絡を! おれはもうだめだ! なんとしてもこのことを伝えるのだ!」
「た、隊長! おれだけ逃げるわけには!」
「だ、黙れ! 命令だ! おれはここでやつらの足止めをする。一刻も早く救援を寄越せ!」
「た、隊長……」
魔国の放った先遣隊に囲まれ、全滅寸前の王国斥候隊の二人である。
「生き残ったらな、酒でも奢れ! 浴びるほど飲ませろ! 生まれたばかりの子供を泣かせるんじゃねえぞ」
「は、はい! 隊長!なんとしても生き抜いてください。すぐに戻ってきますから!」
「ああ、頼んだぞ……」
すでに脚部を引きずって歩けない状態の隊長と、生き残った部下がその後再び酒を飲み交わすことができたかどうかは定かではない。
正確な情報をつかみきれていない王国上層部。帝国と魔国の侵略軍は、まさに国境を越えんとしていた。
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