閑話 2-2 親友のカレシとユナ応援隊隊長


 そんな風に意気込んでやってきた屋上だけど、本当は分かってる。


 ユナが選んだ人なんだから、きっと悪い人なんかじゃないってことくらい。


 それでもなんだかモヤモヤして長谷川陽詩を認めたくないって思ったのは、ずっと親友だったユナが突然恋人を作って、その相手がウチも全く知らない赤の他人で、なんだか横取りされた気分になって気が立ってただけ。


 ウチもタイガと付き合ってるのに何様だって感じだけどね。


 ユナが長谷川陽詩のことが好きなのはウチには朝見かけた時から気が付いた。


 だからこれはただの確認、ウチが納得するための。


 けど、やってきた長谷川陽詩は話してみればみるほど、訳の分からないヤツって認識がさらに高まるだけだった。


 だってユナとの馴れ初めを聞いたら何て言ったと思う?  


『……実は、二〇年前に前世で会って』


 いや、前世ってなによっ! 


 そんなん誰が信じられるかっ!


 って思ったけど、信じるバカもいるもので、キシが食いついてきたのだけどお呼びじゃないのですぐご退場願った。


 まぁ、でも馴れ初めを人に語るなんて恥ずかしいものね。


 ごまかしたくなるのも分からなくない……かくいうウチだってタイガとの馴れ初めを誰かに言うのはちょっと抵抗あるし……大事な想い出っていうか?


 それから別のもう一つ気になってた入院やら退院のことも聞いたけれど、またキシの介入で修行とか死にかけたとかよくわからないことを言いだして。


 もしかしてこのあほのキシにノリを合わせて? なんだ結構ノリいいんじゃんって思ったけど、長谷川陽詩の顔はマジだった、とても嘘というかノリ良く言ってるんじゃない感じで。


 そこでウチは察した。あぁ、この人は拗らせてるんだなと、いわゆる中二病を。


 それなら色々納得がいく。たまに呟いてた良くわからない単語とかも言ってたし、口癖っぽく「魔法使えれば」って呟いてたのも一回聞いた。


 きっとあの授業中の空中に手をかざしたりしてるのもなんかそれっぽいことをしようとしてやった怪奇行動に違いない!


 つまり長谷川陽詩はキシに次ぐ変人……ユナの性癖大丈夫かな?


 そこからはもう何がなんだかよくわからない怒涛の展開だった。


 一応ちゃんとヤバイクスリとかやってないことだは確認しようと思ったら、長谷川陽詩にいきなり影がさしてユナの恋人に相応しくないとか言い出すし、けど好きなのかの問いには力強く好きと答えて、度々邪魔してくるキシはなぜか屋上で叫び出して。


 あれ、前にユナが近所迷惑になりそうって言ってたからやめさせないと。


 そして、一番衝撃的だったのがアレ。


『俺は姫野優凪が大好きだぁぁぁーーーっ‼』


 キシに対抗意識を燃やしたのか、長谷川陽詩もそう叫んで。


 だけど、キシとは比べ物にならないくらいその迫力が、何よりもその言葉に籠ってる想いの大きさの違いを思い知らされて、キシなんてメガネが割れてるし、タイガまで気絶して、ウチも思わず尻もちをついちゃって。


 その後にやってきたユナと長谷川陽詩のやり取りをみてウチはもう納得せざるを得なかった。


 だってユナは真っすぐに長谷川陽詩のところに行って、その時に見たユナの顔はウチの知らない顔。


 ちょっと怒ってる感じもあったけど、目はハートで猪突猛進な完全に恋する乙女の顔。


 それにまさかユナまでも叫ぶと思ってなかったし。


 顔を真っ赤にしてお互いを好き好き言い合う二人の姿は砂糖を吐きそうになるぐらいのバカップルで、もしウチが長谷川陽詩を認められなくて二人を別れさせようとしても、それはできないって思った。


 きっとちょっとやそっとテコ入れしたくらいじゃ無理。それくらい二人は互いに互いを求めあってて、それこそ本当に前世で将来を誓い合ったっていうのが本当に思えるくらい。


 だからウチは幸せそうな顔で長谷川陽詩の腕の中で意識を失ったユナを見て、ちゃんと祝福して応援してあげようって決意した。


「いっつつ……長谷川陽詩とんでもないな、まさか声だけでぶっ倒されるなんて……うわっ、キシのやつメガネ割れてるし」


「……タイガ、起きたんだ」


 長谷川陽詩にあとはウチらに任せてユナを家に送ってあげるように言って、二人が屋上から降りて行った直ぐ後、ウチのカレシも起きてきた。


 ……なんかユナたちのあんなラブラブな姿見た後だと、もう慣れたはずなのにタイガにドギマギしそうになるわね……変に影響受けたかも。


「少し前にな。ヒメのやつ、幸せそうだったな。これで俺に対するやっかみが少しでも減るといいんだけどな。それで、この騒ぎどうするんだよ? ってかちょっと顔赤いけどどうした?」


「ご、ごほんっ! なんでもない……そとりあえずユナたちは今日はもう家に帰したし、ウチらで収めるしかないでしょ」


「それもそうだな。てか、ほんとに凄かったなあれ、大好きだぁぁぁって。まさかヒメの方も叫ぶとは、俺らも一発叫んどくか?」


「は、はぁっ⁉ ば、バカじゃないのっ! そんな恥ずかしいことできるわけないでしょうがっ! ほ、ほらさっさとそのアホ起こして行くよ!」


 それからウチらも屋上から降りて、集まってたギャラリーたちを撤収させて先生にユナと長谷川陽詩は早退したことを伝えて昼休みの騒動を収めた。



 ■■



 その日の放課後、とある空き教室にて。


 机をコの字に並べ数人の少年少女たちが向かい会ってた。


 ここはユナ親衛隊の会議室、現在会議が開かれていて議題はもちろん『長谷川陽詩とユナの関係』について。


「——てことで、あの二人を見守り応援する。それがきっとユナが一番喜ぶはずだし、それでいい?」


 昼休みでのことを話して、ウチは隊長として親衛隊の今後の方針を伝える。


 大体の人は昼休みのあの二人の叫び声は聞こえていたからか、二人が本気であることを分かってるため頷いて賛成してくれてる……けど。


「私は認めない! 君たちもそうだろう?」


「もちろんだ!」「どこの誰とも知らないヤツに任せられるか!」「そうだそうだ!」


 机を叩いて反論してくる人たちが数名。


 一応副隊長ってことになってるメガネことキシと数名の男子たち。


「ならどうするの? 無理やりにでも別れさせたらユナはきっと悲しむと思うけれど?」


「う、うぐっ……だが……」


「そもそもウチらは最初からユナの恋人を勝手に決める権利なんてないし、ユナが選んだんだから、それを応援するのがあたりまえでしょう?」


 それに、あの二人をどうこうするなんてことは絶対にできないと思う。


 それはキシも昼休みに思い知ったと思うのだけれど。


 ウチのThe正論にキシは俯いてなにも言えなくなった。


 だけど、握りしめた拳はプルプルと震えていて……。


「――やはり、どうしても認められない! 長谷川陽詩には任せられない!」


 そうして静かに立ち上がった。


「そっ、ならあんたらとはここまでね」


「そのようだ、実に残念でならない。さらばだ隊長」


 そう言って教室を出ていくキシたちにウチは忠告をする。


「もし、あの二人になにかしようものなら覚えときなさい」


 ■■


 この日、今まで志を一つにしていたユナ親衛隊は二つに分かたれた。


 ユナ×ヒナタ容認派こと『旧ユナ親衛隊』改め『ユナ応援隊』。


 そしてユナ×ヒナタ否認派こと『姫騎士団』。


 この二つの派閥は決して本人たちには知りえないながらも、今後この先のことある事に水面下で激しい抗争がくり広げられることになる。



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