第24話 先輩とイツメン



 一時間目の英語をさぼった後、二時間目からは普通に教室に戻って授業を受けたんだけど先輩は……まぁ、何事もなくとは行くことは無くなかなかにやらかしてた。


 まず言葉遣いだけど、先輩は基本誰に対してもタメ語で、それは先生と話すときも変わらず。


 そうなればもちろん注意してくる先生もいるわけで……。


「君、歳上には敬意をもって敬語で話しなさい」


「……ならあなたの方こそ俺に敬語を使うべきだと思うけど」


「はい?」


「あなたの方が歳下だろう?」


「いったい何を言って——」


「あぁぁぁっ! 先生が若くて歳下に見えるってことですよねっ⁉ ねっ‼」


「……あ、あぁ、うん」


「あら~、な~んだそういうことなの~? もう、ヒカル先生のカツラ吹き飛ばしたと聞いてどんな生徒なのかと思ったらいい子じゃないっ! うふふふふ~!」


 って、感じにその先生からの好感度が爆上がりしたり。


 それと一つ思ったことがあるんだけど、たぶん先輩、あたし以外の人と話すときどことなくそっけないような気がする。別に先輩はコミュ障ってことじゃないと思うし、何か意味があるのかな?


 あとはクラスメイトに話しかけられて異世界語? なのかよくわからない言葉を話したり、異世界関連のタブーなことを口にしちゃったりして、その度にあたしが無理やり乱入すること多数……いや、今のところほぼ全部。


 でも、こういう言動はあたしが有耶無耶にできるからまだいい方で、先輩が動いたときはもうフォローがしきれない。


 先輩の後ろに立った人を無意識に吹き飛ばしてしまうことも何回もやって……キシくんなんて七回も吹き飛ばされてたなぁ……。


 後は、あのよくわからない超反応の高速移動も何度もやってクラスメイト達に驚かれて。


 そんなことばっかりしてたら、それはもうヒカリンのカツラ吹き飛ばしたことも相まって先輩のヤバい奴認識は確定、四時間目を終わるころには高等部中に先輩の噂が出回ることになって。


 あたしのカレシ、例の三教師並に瞬く間に有名になりました。


 そして今は昼休み、あたしはこれからのことお話するために先輩をご飯に誘おうとしてるんだけど……。


「ねぇ、先輩知らない?」


「あっ、ユナちゃん! 先輩って長谷川くんのこと? 見てないけど……」


「そっか、引き留めちゃってごめんね!」


 ……はい、先輩が行方不明になりました!


 もーーーうっ! どこにいったんですか先輩っ‼



 ■■



『昼休みに一人で屋上に来なさい』


 そんなことが書かれた紙きれが机の中に入っていて、俺は今屋上に向かって足を向けてるところだ。


 いったい誰の仕業かは知らないがこういう果たし状なら異世界で何度も受けたから慣れている。


 一応、これが姫野の敵であった場合、俺を姫野から引き離すという目的がある可能性も考慮し、いつでも姫野の危機が分かるようにしてあるけど……今、姫野は俺を探してるみたいだね。


 こんなことはさっさと終わらして姫野のところに戻ろう。


 少し急ぎ足で階段を登れば屋上の扉まではあっという間についた。


「奥にいるのは……三人か」


 不意打ちを食らっても迎撃できるよう、いつでも攻撃魔法を打てるようにしながら俺は屋上へ続く扉を開いて。


「ちゃんと来たわね」


 そう俺を出迎えたのは、姫野が親友と言ってた七瀬琴葉を筆頭に神崎大河、岸優太の三人。


「俺を呼び出したのは君たちか?」


「そう、話があるって言ったでしょ」


 確か朝に担任が来た時だったか。


「そうだったな、それで要件は?」


 俺は七瀬琴葉に聞いたつもりだったんだが、俺の聞き返しに答えたのはなぜか七瀬琴葉ではなく、岸優太で……。


「そんなの決まっている! 今すぐ姫と別れ——むぐっ⁉」


 ……いや、なんか口抑えられてすぐに退場していった。こいつはなぜかやたらめったら絡んでくるんだよな。


「キシ、あんたは黙ってなさい! まぁ、場合によってはそうしてもらうかもだけど」


「……どういうことだ?」


「簡単よ、あんたがユナのカレシとして相応しいかどうか確かめさせてもらおうってこと」


 ふむ、俺にとって姫野以外のその他は正直どうでもいいと思ってる、途中割り込んできたメガネなんて特に。


 が、姫野から七瀬琴葉とはなるべく仲良くして欲しいとも言われてる。


 姫野から拒絶されない限り別れるつもりなんてこれっぽっちもないけれど、七瀬琴葉からの話ならむげにするのはよくないか。


「いいよ、どうすれば認めてもらえるのかな?」


「そうね、とりあえず質問に答えてもらおうかしら。あんたのこと知るために」


「まぁ、答えられることならなるべく答えるよ」


「そう……じゃあまず、あんたとユナの馴れ初めは?」


 馴れ初め……姫野と出会ったころか、あの頃はまだ姫野に対する気持ちに気づいてなかったし魔法も使えなかったから少し朧気だが……。


「確か、もう二十年以上前になるんだけど放課後の教室で——」


「待て待て待てっ⁉」


「ん?」


「に、二十年前ってどゆことっ⁉ あんた何歳よ!」


「……あ、しまった」


 う……またやってしまった……姫野に散々言われてたのに、それに今は姫野がいない。


 仕方ない、ここはなんとか俺がごまかして。


「……じ、実は二十年前に前世で会って」


「前世っ⁉」


「生まれ変わってまた会えたら、と将来を誓い合った」


「……」


 うん、うまくごまかせたんじゃないか? 実際に向こうの世界で本当にあった出来事を真似してみたのだが。


「つまり、話すつもりは無いってこと?」


 ……あれ? やっぱりごまかしきれてない? 


 じっと睨みつけてくるその目は騙されないわよって語っているようで……だが、俺が異世界転移していたことだけは言えない。


 しょうがない、魔法を使うのは姫野に禁止されてるがほんの少し、二十年前っていうキーワードだけを記憶から消して——。


「なにぃっ⁉ つまり私と同じということかっ⁉ 私も前世では姫に一生の忠誠を誓ったからな。しかしだ! それでも認めない! 今すぐ姫と別れ——むぐっ⁉」


「だからあんたは黙ってなさい! 邪魔よ! ……あーもういいわ、次の質問だけど——」 


 ん~……ん? ごまかせた? のか?


 なんだかよくわからないがあのメガネに感謝だな。


「——あんた、二年前に倒れたんでしょう? で、先日目が覚めて入院してた病院から退院したと……これ、どう考えてもおかしいわよね?」


「……というと?」


「ウチのママ、看護師だから知ってるんだけど、普通は二年も寝た切りになっていきなり起きて、はい学校。なんてならない。リハビリとかしてゆっくり体力を戻さないと歩くのも難しいはずよ」


 ……痛いところを疲れたな。


 確かに起きた時に医師たちにとても驚かれたが。


「あと、こっちには情報収集に強い協力者がいてね。調べてもらったんだけど……あんたが倒れた病名が不明なのよ。身体は健康なのに意識だけが戻らない状態だったらしいわ。まるで意識だけ別の場所に行ったみたいに……ねぇ、あんた、この寝たきりの二年の間に何してたの?」


「……」


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