第18話 先輩と通学路 3

 



 二年前の先輩とのメッセのやり取りなんて本当に何気ないものばかりで特別なことなんて何もなかったと思う、写真もないことは無いけど本当に数枚程度。


 それなのに、大切に思ってくれてることはすごく嬉しくて、胸がキュ~ってなって。


 あ~……もうっ!


 ほんとうに…………好きっ! ってなる。


 だから、ちょっとしょんぼりしてる先輩を喜ばせてあげたくてあたしはスマホの内カメラをオンにした。


「先輩!」


「ん?」


 不思議そうにこっちを見た先輩にグッと顔を近づけて。


「はい! チーズ!」


 ——パシャリ。


 うん、我ながらうまくとれたんじゃないかな?


 でも一応写りの確認を……っと、その前に目をぱちぱちさせて状況についていけてない先輩……なんか可愛い! 


 じゃなくて、そんな先輩の目を見てあたしは伝える。


「大丈夫ですよ、先輩! 想い出はこうやってこれからいっぱい作っていけばいいんです! というか、あたしが先輩との想い出がもっと欲しい……さっきも言った通り、先輩はここにいてずっと一緒なんですから」


 すると、先輩はすごくいい笑顔になって。


「そうだね——姫野、ありがとう」


「——っ⁉」


 あぅ……先輩の笑顔はあたしには効果抜群すぎる……。


 無理! だめ! 直視できない!


「……は、はい! 色々なところいっていろんなことしたいですから! 先輩もそういうのあったら遠慮なくいってくださいね!」


 ギャ~! めっちゃ声上ずりすぎの早口になっちゃったよ!


 それがまた恥ずかしさに磨きをかけて結局慌てて視線を外してさっき撮った写真の確認をして。


「……え」


 衝撃的な写真につい声が漏れた。


「どうした?」


 あたしの声に再び歩き出そうとした先輩が足を止めたから慌てて画面を見せる。


「ちょ、ちょっと見てください! 先輩写ってないんですけど! え、いますよね⁉ 先輩ほんとにいますよね⁉ ゆ、幽霊とかじゃ……」


 そう、写真にはバッチリの笑顔であたしが写ってて、先輩の姿は写ってなかった。


「ん? あ~、ほんとだ……うーん……あっ!」


 画面をみた先輩はちょっと悩んだかと思えば、何かに気づいたようで何故かパンッ! って手を打った。


「先輩?」


 ……あれ、今の動きって魔法使ったり消したりする動作じゃ? 


 なんだか先輩の纏う空気? 的ななにかが変わった気がするし。


「たぶんこれで大丈夫だと思う、もう一回撮ってみて?」


「——っ⁉ ふぁっ、はいっ!」


 かと思えば先輩がグイっと急接近してきて顔を近づけてきて思わず変な声がでちゃって……あ、先輩のいい匂い……。


 じゃなくて! さっきは勢いもあったしあたしからだったから平気だったけど、先輩から急にこんな風に来られるとテンパるっていうか……。


 でも、そんなことお構いなしな先輩は「まだ?」って感じにじっとあたしを見つめてきて。


 その瞳の近さにますます顔が熱くなるのを感じながらあたしは恥ずかしさに震える腕をなんとか抑え、ぶれないようにしながらシャッターを切る。


「は、はいチーズ……」


 うぅ……今の絶対ヤバい……どんな顔してたのか想像できる、絶対にヤバい顔。


「どう? 今度はちゃんと写ってると思うけど」


「ふぅ……ちょっと待ってください、今確認しますから」


 暴れる心臓を息を吐いて落ち着かせながらやっと離れてくれた先輩に促されてさっき撮った写真の確認をする。まぁ、予想は付いてるんだけど。


 まず先輩は、大丈夫。今度はちゃんと写ってて爽やかスマイルのバッチリ笑顔! 先輩写真写り良すぎかっ! って感じ。


 で、肝心のあたしはというと、案の定というか……。


 顔は真っ赤で目もちょっとうるんでて恥ずかしさを耐えてる感すごくて、だけど先輩がめっちゃ近くにいることの嬉しみが隠しきれないように口の端が緩んでて……。


 言うなればめっちゃにやけ顔……それはもう人様にお見せできないくらいに。


「……こんなん、見せられないよ」


「姫野? どうだった?」


「え? あっ、バッチリです! 先輩ちょー写ってます!」


 ちょー写ってるってなんぞや! って感じだけど。


「お、やっぱり? 緊急事態に備えて普段からある程度魔力を纏うようにしてたんだけど、それが原因みたいだね」


 先輩がなんか写真に写らなかった理由を説明してくれてたみたいだけど、あたしはもう胸の鼓動と顔の赤みとあふれ出る好きを抑えるのに必死で話を全く聞いてなくて。


 ……本当にヤバいなぁ……朝からこんなに悶絶して、あたし今日一日耐えられるかな……? 


 だって、今日から先輩とたぶん同じクラスになるんでしょ。


 そんなんもうこれから毎日ヤバいじゃん、しかもクラスのみんなもいるわけで……。


 くっ……頑張れあたし! 先輩に負けるな! えいえいお~!


 って、自分を鼓舞してたらいつの間にか学校についてました。


「あれ? いつの間に?」


「姫野大丈夫? なんかぼーっとしてたけど」


「だ、大丈夫ですよ! なんかあっという間でしたね」


「そう?」


 あ、いや、実際結構時間かかった? 何回も立ち止まっちゃったし。


 ……なんかまだテンパっちゃってるなぁ。


「あ、そうださっき撮った写真、後で先輩に送っときますね!」


 まぁ、一枚目の写真と二枚目の写真を合成してあたしのにやけずらを加工してですけど。


 ……あんなん先輩に見せられないし。


「あっ、でも先輩スマホが……」


 そうだった、先輩のスマホは世紀末になってるんだった……。


「ん? まだ言ってなかったっけ? それなら確か今日に――」



「ヒナタ遅い。今日は手続きあるから早く来るようにって言った」



 と、その時、先輩の声を遮って上から凛とした声が降ってきた。


 その声の主はチラッとあたしに視線を向けたけどすぐに振り返って職員玄関の方に歩いてく。


「あぁ、悪い今行くよ」


 その後ろ姿にそう声をかけた先輩は今度はあたしの方に振り向いて。


「じゃあ、なんか手続き? が、あるらしいからここで。ちなみに俺は姫野と同じクラスにしてもらったからまた後でね」


「え? あっ、はい? また後で、で……す?」


 ……ん? んんん? 先輩ふつーに行っちゃったけど今なんかおかしくなかった?


 一人残されたあたしはとても混乱するのだった。


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