第15話 先輩と初デート 終

 


「ぜぇー……はぁー……ぜぇー……はぁー……もう、先輩、あとで覚えといてくださいよ」


「わ、悪かったって! つい出来心で……」


 あたしがじろりと睨むと先輩はふいっと明後日の方を向く。


 まったく、何が出来心ですか! あたしがゆっくりって言っても全然ゆっくりにしてくれなかったどころか加速させてたくせに!


「そ、それでこの先に〈シキガミ〉は行ったんだよね?」


 あ、露骨に話しそらしましたね。


 まぁ、いいですけど……後で掘り返します。


「うん! あっちに飛んで行った!」


 サキちゃんが指さすはどことなく見覚えのある扉……反対側にもあったなー。


「……もうこれだけでオチが読めそうなんですが」


「きっとこの先はボス部屋に違いない」


 ……先輩、まだそのダンジョン設定だったんですか……もう、色々ツッコむ気にもなれないよ。


「それじゃあ、行こうか」


「おー!」「……おー」


 そうして両開きのドアを両手で先輩が開ければその先は――。


「ボスは……いないみたいだね。というかここって……」


「そりゃ、いませんて! ここ、日本! いない、モンスター!」


 普通に買い物してる人たちを先輩は不思議そうな顔で見てる。


「いいですか先輩? あたし達は円形になってるショッピングモールの真ん中を突っ切って反対側にきたんです!」


「なるほど! まぁ〈シキガミ〉に探索をさせると真っ直ぐそこに向かうから、そういうこともあるよ」


「そういうこともって……まぁ、いいです先輩ですもんね。それよりサキちゃんのお母さんは……」


 ここに来た本来の目的を思い出して当たりを見回してみれば、ちょうど小鳥がクルクルしてる所があって。


「サキ! どこなの!」


 そのすぐ真下ではサキちゃんのお母さんが必死に名前を呼ぶ姿があった。


「——あっ! ママっ‼」


「サキっ!」


 あたしたちと手を繋いでたサキちゃんはお母さんの姿を見つけた途端パッと駆け寄り、お母さんもそれに気が付いて近づいてきたサキちゃんをギュッと抱きしめる。


 ふぅ……なんか色々ありすぎたけど、サキちゃんのお母さんが異世界に攫われることも特にトラブルに巻き込まれてることもなく無事に……無事に? 迷子の子を届ける簡単なことのはずだったんだけどなぁ……。


 あたしがちょっと黄昏てると、サキちゃんとお母さんがあたしたちのところにやってきた。


「あら、あなたたちは……サキのことありがとうございます」


「あ、いえいえ! 気にしないでください! あたしたちもサキちゃんといられて楽しかったですから」


「ママ、あのね! お兄ちゃんビュンビュン早くて、ぱい姉ぇはおっぱいがママみたいですごいんだよ!」


 サキちゃんや、ぱい姉ぇ呼びはもういいとして、それじゃああたしがおっぱいしかないみたいじゃん!


「うふふ、なんだか良くわからないけど楽しかったのね?」


「うん! あとね、小鳥さんがママを見つけてくれて……あ、小鳥さんが……」


 サキちゃんは先輩の手元をみて悲しそうな顔をする。


 先輩はその時ミサンガを付け直してるところで、つまりあの小鳥はもう元のミサンガに戻ってるということで。


 と、サキちゃんに見られてるのに気が付いた先輩は一瞬考えたそぶりを見せた後、付け直してたミサンガを再度外してサキちゃんの前にしゃがみこんだ。


「サキちゃん、腕かして?」


「うん?」


 不思議そうに出されたサキちゃんの手首に先輩は外したミサンガを付けてあげると。


「これはサキちゃんにあげるよ」


「いいの?」


「もちろん! 今日の大事な思い出に、ね」


「わぁ! ありがとう! お兄ちゃん大好き!」


「おっと」


 ギュっと抱き着いてきたサキちゃんを受け止めて先輩は穏やかな笑みを浮かべる。


 サキちゃんのお母さんは「あらあら、うふふ」って感じで微笑んでて。


 あたしはというと、別にね? こんな年端もいかない子に大人気なくもヤキモチなんて焼きませんとも、ええ!


 それよりもサキちゃんのあの抱き着くときにあたしに見せた意味深な笑みだよ! そうだった、サキちゃんただの幼女じゃなくて悪幼女だった! 油断した!


 だけど在庫置き場を渡ってきたため無駄に時間がかかったせいで既に結構いい時間になってるわけで。


「それじゃあ、サキ。お二人にお礼言って帰りましょう?」


 って、当然そうなる。そうなれば。


「え~、もう? サキまだお兄ちゃんたちと一緒にいたい!」


 そんな感じになって、サキちゃんが先輩の手をギュって握る。


「でも、お夕飯の準備をしなきゃよ? お父さんも待ってるし」


 そうそう、いい子はもう帰る時間ですよサキちゃん! だからいつまでも先輩の手を握ってないの、あたしだって握ってないのに。


 という感情はもちろん表情には出さずにあたしはやんわりとサキちゃんを説得する。


「サキちゃん、大丈夫だよ、あたしはよくここで買い物してるからまた会えるよ?」


「ぱい姉ぇ……お兄ちゃんも?」


「もちろん、これは再会のミサンガだからお願いすればきっとね。次会う時はもっとたくさん遊ぼう、約束する」


「約束……分かった! お兄ちゃんもぱい姉ぇもまた会おうね!」


 それから改めてお礼をしてくれたお母さんと手を繋いだサキちゃんはあたしたちが見えなくなるまで手を振ってくれた。


「ばいばい! ぱい姉ぇ! お兄ちゃん! またね~~! ちゅっ♡」


「おーう! またなー!」


「またねーって……たぁっ!」


 悪いねサキちゃん、先輩への投げキッスは叩き落させてもらったよ! 最後まで油断ならない幼女め!


 まぁ、それはそれとして。


「よかったんですか? あのミサンガ、大事なものなんじゃ?」


「ん? まぁそうだね、孤児院の子たちには悪いとは思うけど、やっぱり俺はもう向こうに戻るつもりは無いし、それならああやって喜んでもらえたほうがいいと思って」


「そうですか、なんだか先輩らしいですね」


「まぁ、ずっとつけてたから手首が寂しくなってちょっと違和感があるけど」


「なら今度あたしが作ってあげますよ」


 あれ? 自然と口から出た言葉だけど結構いい提案では? だって——。


「ん? いいの?」


「はい! せっかくですしお揃いにしましょう!」


 ——おそろい。


 それってすごく恋人っぽくない? あ、でもそういうの重いって苦手な人もいるっけ、先輩は……。


「いいね! なら材料は俺が用意するよ」


 お、よかった。先輩は結構ノリ気っぽい! でもなんか材料とか言ってるのがどことなく不安だけど……何か変なものとかじゃないよね……? 


 まぁいっか、その時はその時!


「なら今度一緒に作りましょう!」


「そうだね、楽しみにしてる」


「はい!」


 なんか先輩とこんな感じに落ち着いて話すのすごく久々な気がする。


 ほら、先輩口開いたらちょっとよくわからないこと言ってるし、あたしのこと照れさしてくるし。


「それじゃあ俺たちも帰ろうか、家まで送ってくよ」


「そうですね、ありがとうございます。それじゃあ、行きましょうか」


 そう言って出口に向かうため先輩の横を通り過ぎようとして。


「――んにゃっ!?」


 めちゃくちゃ変な声がでた。


 ……でも出るよ変な声。


 だってさ、だってね?


 ――突然、先輩に手を繋がれたんだから。


「あの……先輩?」


「違った、かな?」


 そう言う先輩の目は確認の言葉をしつつも確信してるようで。


「……違わない……です」


 あたしはサキちゃんと手を繋いでる先輩を見て自分も繋ぎたい気持ちだったから。


 でもそれは表情に出ないようにしてたはずで、実際に先輩だって気がついてない感じだったし……。


「なんで……」

 

「分かるよ、姫野のことはステータスなんて見なくたって分かる」


「もぅ、そういうとこやっぱずるいです……不意打ちよくない……でも、繋ぐならこうがいいです」


 あたしはいったん先輩の手を離して、指を一本一本指を絡ませ合って恋人繋ぎにする。


「えへへ、なんかすっごい恋人って感じですね!」


「恋人だろう、姫野は俺の彼女なんだから」


「――!」


 ……だからそうやって……そうやってかっこいいこと突然言われると、照れる……恥ずかしい……けど、それ以上に嬉しい。


「それじゃ、帰ろっか」


「はい! てか先輩、あたしの気持ち気がついてたならサキちゃんのいる時にもあたしがどうして欲しいのか分かってたんですよね? それでサキちゃんにデレデレしてたんですか?」


「え? えー……んー、デレデレはしてないと思うよ?」


 でもどうして欲しいか分かってたのは否定しない、と。


「……先輩のイジワル、ケチ」


「それを言うならあんなちっちゃい子にヤキモチ妬いてる姫野は大人気ないなぁー」


「は、はぁー!? ヤキモチなんて妬いてませーん!」


「えー? いやいや、あの時の姫野のヤキモチステータス高かっただろ」


「そ、そんなステータスはありません! てかそういう先輩こそ今日何回やらかしてると思ってるんですか! 朝から鎧着て!」


「うっ……それは……」


 あたしの言葉にたじろぐ先輩。


 ていうか改めて思い返すとヤバいね、朝から鎧て!


「あ、あははははは! もう、今日のこと思い出したら笑えてきちゃえましたよ! あはははははっ! 先輩ヤバすぎ!」


 そんなあたしに先輩もつられるように表情を緩めて一緒に笑ってくれて、なんかそれだけで身体がポカポカしてきて、はぁ~幸せってなる!


 こうやって先輩と笑い合うことは二年前にもあったけど、その時とは違くて。


 二年前より楽しい今の気持ち。二年前には気づいて無かった……好きって気持ち。


 まだ始まったばかりの先輩とあたしの新しい関係だけど、今日みたいな日がこれからもたくさん、そしてずっと続いて欲しいと思うから。


 だから今、先輩に伝えるべき言葉は、


「やっぱし、先輩と一緒にいるとすごく楽しいです! もうどこにも行かないでくださいね? ずっと一緒にいてください」


 ずっと一緒、それが今思うあたしのすべてで……それだけでいい。


 言葉だけじゃなくて、もっと身体でも伝えたくて、無意識のうちに繋いだ手をギュッと握れば、優しく先輩も握り返してくれて。


「もちろん、言われなくたって俺はずっと姫野といるよ」


 そんな嬉しい言葉と共にそっと笑い返してくれる先輩に胸がキュ~ってなって、ごまかしきれない恥ずかしさとか照れとか嬉しさとかに身悶えするけど、いつまでもこの時が続けばいいと思うのでした。



 なお、あたしの家に着くまでずっと手を繋いで二人でニギニギしてたのをここに追記しておきます!




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ずっと思ってたんですけど、カクヨムってなろうとかみたいにあとがき書く欄ってあるんですか?


ちょっと探してみたけど見つからなかったのでこんな感じになっちゃいました。

もし、あるなら教えてください!


ごほんっ! これにて二人の初デートは終了、次は一話だけ閑話を挟んで先輩の初登校です! ……まぁ、また色々やらかしますww


閑話を挟むのは箸休めというか、自分でいうのもなんですけどここまで胸やけするくらい砂糖ドバドバじゃないですか? ですので、そんな感じです。


ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございます!

フォローも応援もたくさん頂けて嬉しいです!

もしよろしければ、率直な感想やご意見(どこどこが読みにくかったとかでもいいです)そういうのがあればご指摘いただけると作者は泣いて感謝します!


どうぞ、これからもどうかよろしくお願いします!

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