第13話 先輩と母親探し 2

 


 ショピングモールのキッズ広場の野を越え、スーパーのトイレットペーパーの山を越え、DVDショップの十八禁暖簾を潜り……って、サキちゃんのお母さんどんなところに行ってるの!


 そうしてやってきたのは、


「小鳥さん、この中に消えちゃった」


「つまりこの先ってことか」


「……いや、ほんとにサキちゃんのお母さん、なんでこんなところにいるの? 子供探すにしても絶対いないと思うんですけど」


 あたし達がやってきたのは、客であるあたし達では入ることの出来ない絶対領域……ショッピングモールの裏の世界。


 ……とか何とか、世界と戦う心持ち風に言ってみたけど、要は関係者以外立ち入り禁止の扉の前。


「よし、それじゃあ行こうか」


「うん!」


 って! なんか普通に先輩たち入ろうとしてるんですけど!


「いやいや、先輩! ふつーに怒られますって! ここは店員さんとかに言ってみましょうよ!」


「いや、姫野。その店員が諸悪の根源とかだったらどうするのさ」


「そんなことふつーありえませんよ!」


「ぱい姉ぇは覚悟が足りないよ!」


「あー! もー! 分かりましたよ! 行きます行きます!」


 結局、なんの躊躇いもなく堂々と入ってく二人の後ろをあたしはビクビクしながら恐る恐る入ってく。


「……お、おじゃましまーす……っと」


 中はドアが閉まるとちょっとよく目を凝らさないと辺りは見えないくらいに薄暗く、そのせいで先に中に入った先輩達が立ち止まってるのに気が付かなくて、軽くぶつかった。


「先輩、立ち止まってどうしたんです? もう店員さんに見つかりました? なら、今すぐ謝って――」


「姫野……」


 戻りましょうって言おうとした言葉を妙に真剣味がました先輩に呼ばれて遮られる。


「……どうしたんです?」


 先輩の声が深刻そうだったから聞き返しつつ、徐々に暗闇に目が慣れてきて、中の様子が見えてくる。


 大量のダンボールや何かが入ってるケースなどが雑然と積みおかれて山のようになってる空間。


「ここからは気を引き締めて行くよ、どうやらここはダンジョンのようだ」


「………………在庫の山ですよね?」


 う、うーん……おかしいな、これは先輩の異世界ジョーク?


「こういうダンジョンはトラップとかが多い、あまりは離れないようにね」


「………あの、ただの在庫の山ですよ?」


 大事なことなので二回言いました。


 けど、ダンボールの山をじっと睨むように見る先輩はジョークでも冗談でもなく本気でダンジョン? に思ってるぽい。


「あ! お兄ちゃん、あそこ!」


 と、その時サキちゃんがなにか見つけたらしく指さした先には、あの小鳥がいた。


 小鳥はまたひと鳴きすると奥の方へと飛んでいく。


「向こうみたいだね。それじゃあ細心の注意を払って行こうか、俺についてきて」


「うん!」


「いや、先輩! もう戻った方がいいですってば!」


 そんなあたしの言葉は当然のようにスルー!


 二人はつかつかと奥に進んでく。


「あー! もー! ほんとにどうなっても知らないですからね!」


 だから、しょうがなくあたしもついてくしかないのだった。


 でもまぁ、先輩がちょっと真剣になる気持ちも分からなくはない気がする。


 薄暗くてなんだか不気味だし、ダンボールとかほんとに多くて結構高くまで積まれてるから、それが壁っぽくもなってて、昔やったゲームで冒険したところに似てなくもないから。


 でもなぁ……さすがにサキちゃんのお母さんがここにいるとは思えないんだけどなぁ……。


 というか在庫の量すっごい、これ全部売れ残りだったり?


 そんなことをうつうつと考えていると、


「姫野! 危ない!」


「ふぇっ!?」


 超高速移動してきた先輩に覆い被さられてた。


 ちょっ……近い近い! あ、なんか先輩のいい香り……。


「ふぅ……危なかったな」


「せん、ぱい? どうしたんです、それ」


「トラップだよ、さっき姫野の頭上から落ちてきた」


 起き上がった先輩の手にはちょうどそこらに積まれてるダンボールのひとつを掴んでる。


 え、えぇ……嘘ぉ……マジで危ないじゃんここ、そりゃあ関係者以外立ち入り禁止にもなるよ。


「あの先輩、ありがとうございます」


「いや、礼には及ばないよ。言った通り、姫野のことは何があっても守るから」


「………はぃ」


 もぅ……またそう言う……先輩、イケメンすぎる。


 ……まぁ、ダンボールの山をダンジョンって勘違いしたり、事故で落ちてきたダンボールをトラップと本気で思っちゃう人だけど。


「お兄ちゃん! ぱい姉ぇ! はやく! 小鳥さん行っちゃうよ!」


 それから急かしてくるサキちゃんにドナドナされながら数十分。


 かなり奥の方まで来て、もう流石に先輩でもサキちゃんのお母さんがここにはいないことが分かったかな? なら、そろそろ戻って改めて探しましょうって進言しようとしたとき、声が聞こえてきた。


「おい! どうしたんだよそれ!」


「うん? さっき表で見つけて来てな。出来心でつい攫ってきてしまった」


「お前、いい加減にしないと店長に怒られっぞ」


「いや、捲って見て見ろよたまらねーぞ?」


「どれどれ? うわっ、でっけ! D? いや、Eはあるか?」


「そうだろうそうだろう、それにほらこの人妻感がまたなんとも——」


「わかるわ~、じゃあちょっと俺も失礼して一発——」


 ……え、えっ⁉ まじで、ほんとにっ!? でもでもEって! 人妻って!


 ま、まさか先輩の言う異世界に攫われたって言うのは大袈裟でも、サキちゃんのお母さんは関係者以外立ち入り禁止のとこに攫われて、あんなことやこんなことをされてるってことぉぉぉおおおっ!?


 あたしはそう理解した瞬間、考えるよりも先に身体が動いて飛び出してた。


「あなた達! サキちゃんのお母さんになんてことし、てる……の……え?」


「「え?」」


 そこに居たのはどことなーく見覚えのある男二人。


 なんかムフフな感じの雑誌を覗き込んでるところでした。


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