第11話 先輩と迷子の幼女 2



「サキちゃん、大丈夫だから。もう少し探せばきっと見つかるから、ね? だから泣き止んで?」


「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん‼‼」


 先輩が必死になだめようとするもサキちゃんは泣き止むことはなくて、それはもう漫画みたいにびえーーん! って感じで涙の水たまりができそう。


「姫野……」


 先輩が助けを求めるようにあたしを見ている。


 ……助けますか?


 それはまぁ、もちろん。


 こういうのはね男の先輩では出せないであろう母性をもって包み込んであげれば安心して泣き止むってもの。


 そしてサキちゃんからは、これで見ちゃいけないお姉ちゃんから母性溢れる素敵なお姉ちゃんと再認識されるはず。


 先輩に頷き返してあたしはサキちゃんの前に屈みこんで小さなその体をギュッと胸に抱きしめて優しく頭をなでてあげる。


「サキちゃん、大丈夫だよ。あたしたちがちゃんと見つかるまで探してあげるから」


「お姉ちゃん——」


 するとさっきまで大泣きしてたサキちゃんが泣き止んだ。


 ふふん! そらどうですか! あたしの溢れ出す母性は! って先輩にドヤ顔しようと振り向こうとして——。


「——おっぱい大きいね!」


「へ?」


 ——がしっと胸を掴まれた。


「お姉ちゃんのおっぱい、ママと同じくらい大きくてなんか安心する!」


「……」


 えぇ……いや、あたしの思ってた母性ってそういうことじゃないんですけど……。


 もっとこうなんかさ、包み込むようななんかさぁ……。


「……先輩、なんか思ってたのと違います」


「そりゃあ、Dカップは高一にしては大きい方だと思うけど。小さい子からしたら安心するんじゃない?」


「はぁ……まぁ、確かにあたし胸には自信ありますけ、ど……?」 


 今、さらっと言われてつい流そうとしちゃったけどおかしくなかった?


「……先輩、なんであたしの胸のサイズ知ってるんです?」


 そう! それだよそれ! 何で先輩知ってるの⁉ え、あたし先輩に言ったことあったっけ……?


 今までの自分の発言を高速で振り返ってると、先輩は指先で自分の目元を指さした。


「ステータスだよ」


 ステータス…………さっきかっ‼ え、ステータスってそういうこと⁉ バストサイズ見えちゃうの⁉


 しかも先輩何事もないようにサラッと言ったし。


 たぶん先輩にとってどうでもいい数値だからなんとも思ってないんだろうなぁ。


 ここは普通ならあたしが怒ってもおかしくないけど、先輩は異世界帰りの常識忘れだし仕方ない。


 しょうがない、ならあたしがおっぱいじゃなくて母性を持って優しく先輩に注意してあげよう!


「すぅー……はぁー……。先輩、いいですか?」


「ん?」


「あたしだったから良かったですけど、女の子にはそういうことにすごく気にする子もいるんです。だからこれからは不用意に人のステータス? を見たり、それを言ったりしちゃだめですよ」


 そう優しくたしなめるように言うと、先輩は理解の色を示してくれた。


「そういうものなのか、悪かった。これからは気を付けるよ」


 はい、素直でよろしいです。


「でも、勝手にステータスが見えちゃうのはどうすればいい?」


「え? 勝手に見えることがあるんですか?」


 そういうのって自分の意思とかさっきみたいに瞳を見つめ合ったりしないと見えないものじゃないの?


「あぁ、たまにいるんだよね社会の窓が全開の人が。異世界ではほとんどいないけど、こっちの世界では魔法が存在しないからかな? 割と多くの人がモロ出しの垂れ流ししてるよ」


「そ、そういうのは見て見ぬふりをしましょう!」


 ……というか社会の窓とかモロ出しとか垂れ流しとか……え、ステータスの話ですよねこれ?


「わかった。ちなみにこれは異世界の常識だけど、ステータス垂れ流しの人はそれはもうめちゃくちゃ笑いものにされるよ。子供が生まれたら一番最初にステータス制御を教えるくらいには」


「……先輩、ちなみにあたしのステータスはどうなってます?」


「姫野のステータスは大丈夫だよ。ちゃんと隠されてる」


 それは良かった。なんか、うん……よくわからないけど、よくわからないことで別の世界で笑いものにされるのは嫌だしね!


 さて、先輩にしっかり常識を教え直せたし、これで良しっと!


「……で、あなたはいつまで人の胸を触ってるの?」


 気にしないようにしてたけど、あたしが先輩に注意をしてる間、サキちゃんはずーっとあたしの胸を触ったり頬ずりしてたりする。


「えへへ、だっておっぱいのお姉ちゃんのおっぱい、なんか安心するんだもん」


「んんっ⁉」


 今あたしの呼び方すごいことになってなかった? おっぱいのお姉ちゃんて、見ちゃいけないお姉ちゃんより見ちゃいけない気がするんだけど……。


 でもでも、今のあたしは母性! おっぱいじゃなくて母性だから、優しくツッコむことにする。


「こら~、誰がおっぱいのお姉ちゃんか~、も~!」


「え~、でも……あ、そっか! お兄ちゃんが大きいって言ってたから……大おっぱいのお姉ちゃん? ……なんかおが多くて言いにくい……う~ん……。あ! ぱい姉ちゃん!」


「……ふふっ」


 そういうことじゃないんだよサキちゃん? あたしが気にしてるのは呼び方そのもので別に大きいことが入ってないことをツッコんだんじゃないんだよ? 


 ……って言うことをあたしは母性の微笑みをもって伝える。


 だって、口で伝えたら盛大にツッコミそうだし。


「ぱい姉ぇ! あ、これなんかいい! ぱい姉ぇ!」


「ぱい姉ぇ言うなっ! ……あ」


 くっ……流石にもう口を出さずにはいられなかった。


 しゅーりょーしゅーりょー! あたしの母性タイムはしゅーりょーでーす!


 ていうかあたし、サキちゃんにめっちゃなめられてない? ここは年上のおねーさんとしてガツンとお灸をすえてあげる必要が——。


「ぱい姉ぇ! ぱい姉ぇ!」


「やめいっ‼」


「……ふっ!」


「あ! 先輩、今笑いましたね! これ、元はと言えば半分くらい先輩のせいじゃないですか!」


「ぱい姉ぇ! あははははは!」


「もー! サキちゃん! 笑いすぎだよ!」


 ——ま、いっか。サキちゃんすっかり泣き止んで元気になったみたいだし、先輩も楽しそう。


 それにあたしも楽しいし、これでオールオッケー!



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