『灰髪のアーシャ』は、スケールの大きな世界観をもつ物語です。
物語のはじまりは、「紅蓮の魔女」と呼ばれる伝説の少女。彼女が発動させた強大な炎は、世界を焼き尽くしてしまう。
世にいう「炎の百日」、そして、それから1000年。「豊かな自然に恵まれた大地は、燃え続ける炎に焼き尽くされ、後には灰に覆われた荒野だけが残った」(第1話)。
――メチャクチャかっこいいですよね、この世界観!
話の中心になるのは、孤児院で育った2人の幼なじみ、アーシャこと、アナスタシア・ストラグルと、ダニーこと、ダニエル・アミキータ。
このレビュー執筆時点で、第4章まで連載が進んでいますが、序章は、成長したアーシャとダニーが、17歳の「成人の儀」を迎え、孤児院から巣立っていくまでを描きます。
アーシャたちを待ち受ける運命は、ときに悲しく、ときに過酷で、さまざまな苦悩や犠牲をともないます。2人は、行く先々で個性的な人物たちに出会い、ともに問題を克服し、成長していく。
その様子を見守りながら、読者は、いつか2人が――子供のころかいま見たような――幸せな世界を取り戻せるよう、祈ってしまうにちがいありません。
さて、物語は主にアーシャの視点から語られるのですが、彼女は、あの紅蓮の魔女を思わせる炎の魔力をもっています。しかも、この魔力のコントロールがうまくできず、たびたび暴走させてもいる。
この設定が『灰髪のアーシャ』の要になっているといってよいでしょう。
アーシャが直面する課題は、力を身につけて強くなることより、むしろ、この力をどのように制御していくか、なのです。
彼女が最も恐れるのは、敵ではなく、自分のなかに秘められた強大すぎる魔力。強大すぎるからこそ、ともすると、愛する人までも傷つけてしまう。あるいは、自分自身までも滅ぼしてしまう。
だからアーシャは、物語が進むにしたがって、自分が戦うべき相手は誰/何なのか? なぜ戦わなければならないのか? を真剣に考えざるをえなくなります。
ある登場人物が語る「恐いのは力そのものではなく、それを使う者の魂」だという言葉(第9話)は、物語を進める中心テーマのように聞こえます。
はたして、アーシャとダニーは、それぞれの困難を乗り越えることができるのか? また、2人が戦う相手はいったい何者なのか?
物語は、まだまだこれからいくつもの山場を迎えそうです。読み進めるにつれて、作者さんが周到に用意した伏線がみごとに回収されていくのも、この作品の大きな魅力といえるでしょう。
"紅蓮の魔女"が、世界を燃やしてから1000年後。
灰に覆われた荒野が、活気を取り戻してきたころ。
――この物語の舞台は、そんな世界にあります。
炎に焼かれ、灰になってしまった世の中なので、「樹」が平和の象徴なのだと思います。
そのため、都は「樹都ユグリア」で、国を守る騎士は「聖樹士」です。
言葉の使われ方ひとつひとつから、この世界の風景が鮮やかに広がっていきます。
主人公は、炎の異能を持つ少女、アーシャ。
"紅蓮の魔女"と関係があるのか否かは、謎に包まれています。
自分の力はなんのためかと自問しながら、彼女が強く生きていく物語です。
孤児院育ちの彼女は、規定の年齢がきて、ひとり立ちします。
その先で、出会う人々、出会う事件。
シビアな局面もあります。それでも、人の優しさが根底にあるのを感じます。
個人的に好きなのは、アーシャが出会う人物のひとり、ニド。
彼の辛い過去、深い想いが描かれたエピソードは読んでいて震えが止まりませんでした。
また、体術の活かされた戦闘シーンも、見どころのひとつです。
炎を扱うアーシャですが、異能の力押しではなく、師匠譲りの旋回の動きと組み合わせて、それはそれは見事な技を繰り出します。
他にも、例えば先述のニドなら、体格を活かした技を。アーシャと同じ人物を師匠に持つ幼馴染のダニーなら、アーシャと同じ旋回の技でありながらも男らしい力強さを見せつけてくれます。
たくさんの魅力にあふれた、この物語。
毎回、毎回、更新を楽しみにしている作品です。
異能を生まれ持った主人公アーシャ。
子供のころに大事な人を傷つけてしまい、訓練して上手にコントロールできるようになり、人々の役に立つように成長していく…。
特殊な力って便利だけど、人を傷つけてしまったり…。
でも、大事なのはその力を使う人の心…。
主人公の成長物語ですが、読みやすく、面白くて、そして文章がかっこいい!キャラクターもかっこいい!
主人公のアーシャ、幼馴染のダニー、二人の成長と冒険の物語を是非、楽しんでください♪
お勧めです♪
あと、私も小説を書いているから思ったのですが、改行の仕方が上手で読みやすいし、読者を引き込む効果があるなと思いました。
単語力、表現力、技術…脱帽です。