4話 アメリア視点3


 魔王と戦闘が始まるとクリスとノアさんが前線に出て戦い始める。その二人にルビアさんとエルミナさんがなんの合図もなしに援護をし始める。




(あー。私もこんな冒険者になりたかったな...)




 魔王と戦っているのに私は違うことを考えてしまっていた。私が思っていた冒険をこの人たちはやっている。私はジャック様のサポートをするだけでこんなに連携ができるわけじゃない。誰もパーティメンバーを疑わずに戦っている。私だってジャック様を疑っているわけじゃない。でもここまでの連携ができるわけじゃない。それほどすごいと思った。




 でもそんな簡単に魔王が倒されるわけもなく、魔王は3体に分身した。




(こんなの卑怯じゃない...)




 そう思っているとクリスとノアさんが1体ずつを相手して私たち3人で1体を相手する。前衛職がいないためエルミナさんがしょうがなく戦っているが、防戦一方になっていた。それに加えて私はこの戦闘がみんなと戦うことが初めてのため、うまく連携ができない。ルビアさんはエルミナさんの行動を読んでいるかのように援護しているが私はそんなことできないため、回復魔法に専念する。




 数分立ったところでノアさんが私たちのところに援護に来てくれた。ノアさんがこんなに早く魔王の分身を倒してきてくれたと思ったがそうじゃなかった。クリスが魔王2体を相手してくれていた。




(なんで...)




 ノアさんが今来てくれなかったら私たちの誰かが数分後には死んでいたと思う。だけどそれはクリスやノアさんも同じ。それなのにクリスは自分の命を削ってまでノアさんを私たちの援護に行かした。




 私たちの方は劣勢だった状況が優勢まで持ち直したが、クリスの方は違う。一人で戦っていた時も劣勢だったが、今はそれ以上に危ない状況だとみてわかる。すぐ助けに行ってあげたいが手を放す余裕がない。今のクリスは無理をしているのが分かる。さっきまでも本気で戦っていただろうけど、今は本気ってより自分の命を捨てて戦っている感じがする。






 この均衡状態が少し経ったところでクリスがお腹と足を刺されてしまい倒れる。その瞬間エルミナさんが叫ぶ。




「い、いやー」




 私だって叫びたい。大切な幼馴染。でも今私も止まってしまったらクリスが作ってくれた状況を無駄にしてしまう。魔王がクリスにとどめを刺そうとした時、私は頭の中とは別にクリスを助けに行こうとしていた。もう無理かもしてれない。でもクリスが死んじゃったら...。そう思っていたのだと思う。すると3人の男性が助けに来てくれて魔王がクリスにとどめを刺そうとしたのを間一髪で止める。




(よかった...)




 こちらの戦闘にも1人の男性が来てくれたので私がクリスのところまで行き回復魔法をかける。ひどい状態。お腹と足に数カ所の穴が開いていた。治すことはできる。でもそれは治すだけで血液が戻るわけじゃない。今のクリスは生と死の狭間にいる。




 回復魔法をすぐさまかけると青い顔が少しずつ治っていく。




「クリス クリス大丈夫?」




「なんとか...。助かった」




「無茶しないで...」




 まだ安心と言うわけじゃない。後1回攻撃を受けてしまうと致死量に達してしまう。私がクリスを回復して少し経ったところで2体倒してくれていた。




 そして最後の1体も倒してもらい、宿に戻った。そこで一人の騎士に言われる。




「それでだけど、アメリアさん」




「はい」




「勇者とのパーティから抜けてもらえないかな?」




「え?」




「勇者に治療する時間が欲しい。だから君には一時的にでもいいからパーティを抜けてもらいたい」




「...。分かりました」




 わかっていた。世界で唯一の勇者。こんな状況になったらパーティ解散なんて目に見えていたこと。でもジャック様とパーティ解散をした私はどうなるの?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る