7話 エルミナ視点5


 そして闘技大会が始まった。私は予選第1ブロックでクリスが第2ブロック。まずは私が予選突破をしてクリスを安心させてあげたい。




 そう思いつつ試合が始まった。すると若い男性に(?)巨大な風魔法で場外に飛ばされてしまう。




「え?」




 一瞬の出来事であった。なんで? 実力が出せずに終わってしまった。




(クリスごめんなさい...)




 でもクリスが第1ブロックじゃなくてよかった。もしクリスがこのブロックで場外に出てしまったら、クリスのことだから罪悪感で押しつぶされてしまうかもしれない。




(本当に私でよかった)




 そしてクリスの番になった。クリスはあの騎士と一緒に手を組んで予選を突破した。でもなぜか予選通過して、あの騎士と少し戦ったら棄権してしまっていた。




(もっと見たかったのに。でもおめでとう!)





 そして次の日、本戦が始まった。クリスは本戦1回戦を魔法無効化を使ってあっさりと勝ってしまった。本当に強い。あそこまで強くなっていたなんて...。戦っている姿もかっこよかったな...。でもクリスのおかげでルビアと一緒にパーティが組める! 




 クリスが観客席に来たので最初に声をかけた。




「おめでとう!」




 クリスが勝った次の日は準々決勝。対戦相手は去年の覇者。もう無理はしないで...。怪我だけはしないで。そして試合が始まった。一方的にボコボコにされている...。もう棄権して! 危ないよ...。




 そう思った時、クリスの反撃が始まった。なんでそこまで戦うの? ルビアのため? そんな気持ちになる私が嫌い...。




 そして私がもう一度見た時、クリスが切られていた。




(いや!)




 死なないで! もう大切な人を失うのはいやなの。私は体が勝手に動き、医務室に走っていた。10分程度たったところでクリスが目をつむってきた。




 え? 死んでいないよね? なんで? なんでなの? なんで私の周りはそんな人が傷つけられるの? そして1時間ほどたったところでクリスが目を覚ました。




「無理しないでよ。バカ...」




「ごめん」




 目を覚ました時涙が出てきた。本当に心配したんだから...。バカ...。その後ルビアとルビアパパとクリスが話してみんなが出ていった時、文句を言ってしまった。




「死んじゃったんだと思ったんだから」




「本当にごめんって」




「もう心配させないで!」




「頑張るよ」




「バカ...」




 でも生きていてよかった...。クリスにうつぶせになって考えた。もうクリスが消えると思うのは嫌。もしこれが試合じゃなかったら? そう思うと嫌だ。だから私も強くなろう...。




 医務室から出て、ルビアの家で3日間は安静にするように言った。こんな体なのに試合が見たいって何を考えているの? もうクリスの体はクリスだけのものじゃないんだよ? 




 3日後にルビアとクリスと一緒に新しい旅が始まる。楽しみだな。もっとクリスのことも知りたいし、ルビアのことも知りたい。そう思いながらギルドに向かう途中にあの時クリスと戦っていた人会う。話を聞く限り仲間がいないとか...。だったら一緒にパーティを組みたい。今は男1に女2。この構成だとクリスが大変だと思う。だったらクリスが信用できる人が仲間になったらクリスの負担もなくなると思うしね。




(クリスと後どれぐらい一緒に居れるのかな? これからも一緒に居れたらいいな)




 多分クリスは私にとって大切な人。その存在が何なのかわからないけど大切にしたいと思った初めての他人だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る