17話 闘技大会 本戦2
突然のことで意味が分からなかった。なんで降参? 現状五分五分の戦いだったと思う。なんなら俺の方が劣勢だった。それなのになんで...。
俺が混乱していたが、会場は待ってくれない。観客からの歓声。そして勝者に対する眼差し。
「底辺職業なのに本戦勝ったぞ」
「だな、でもあんまり戦っていなくないか?」
「そうだな、ミノが手を抜いたとか?」
「宮廷魔導士が手を抜くとか許されないだろ」
「それもそうだな」
「でも宮廷魔導士に勝ったんだ。次も期待できるかもしれないな!」
「だな、次は多分アーサーだろうけど頑張れよー」
観客からの声が聞こえる。それを聞いてやっと理解する。
(本当に勝ったんだな...)
俺がホッとしていたところにミノさんが歩み寄ってくる。何か話したそうな顔をして俺を見てくる。ちょうどよかった。俺も聞きたいことがあった。
「お疲れさまでした」
「お疲れ様」
「なんで棄権したのですか?」
「私の予想だとこのまま戦ってもギリギリのところで負けていたでしょう」
なぜそんなことが言える? 勝負はやって見なくちゃ分からない。
「なんでわかるのですか?」
「まずクリスさんは何かしらの魔法で魔法をレジストしていましたよね? それがある時点で魔法はある程度防がれてしまう。それに付け加えて懐の剣。近接戦に持ってこられていたら勝てない。だから遠距離でクリスさんを倒すことが最優先でしたが、魔法をレジストされることが分かった時点でそれができないと判断しました」
「それはやって見なくちゃ分からなくないですか?」
俺だって炎の玉が連発されたときはきつかった。それにまだミノさんは魔法を隠している。それをうまくすれば勝てていた可能性はあっただろう。なのになんで?
「そんなの簡単です。クリスさんは隠しているように振舞っていましたが、レジストする以外にも何か違う魔法を持っていますよね? それも強力なやつ」
「...」
「それも考慮に入れて判断しましたよ。手を抜いたとか考えなくて大丈夫ですよ。私は本気で戦っていましたし」
「ありがとうございました」
「次も頑張ってください」
「はい」
あまりスッキリした勝ちではなかったけど勝ちは勝ちだ。これでルビアさんと一緒のパーティに組める最低条件にはなった。でもそれだけじゃダメだろう。次の試合でボロボロにされたらマックスさんがなんて言うかわからない。もしかしたらダメって言うかもしれない。
(こう考えている時点で俺はルビアさんのことを信用しているんだろうな)
ミノさんと話し終わって司会者がインタビューが入る。
「ベスト8おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
「今大会のダークホースになりましたね! 次の相手は前大会の優勝者---アーサーさんと第4ブロックの2位通過の方ですがどちらと戦いたいですか?」
ダークホースね...。
「そうですね。勝ちを考えるなら2位通過した人ですが、アーサーさんと対戦してみたいです」
「それはなんでですか?」
「自分の実力を確かめるためです」
「そうですか、次戦も期待しています!」
「ありがとうございます」
インタビューが終わり、会場を後にする。観客席に行くと
「さっき戦っていた人だよな、おめでとう!」
「本当におめでとう! 次も期待しているぞ!」
「お前は俺たちの希望だ! 底辺職業でも勝てるってことを証明してくれ! いや、証明してくれたか!」
証明したことになるのか? 敵が棄権してくれただけで? でもそんな風に言ってくれるのは嬉しい。今までは底辺職業だからお前じゃ無理、現実見なよなどいろいろ否定的なことを言われてきたが、今日は違う。みんなが褒めてくれている。それが本当に嬉しかった。
「ありがとうございます」
観客たちと話してエルミナたちがいる席に行く。席に着くとエルミナとルビアさんが言う。
「おめでとう!」
「おめでとうございます!」
「ありがとう、これで一緒に冒険できますね!」
「はい!」
もう敬語はやめていいだろうか? でもまだマックスさんから許可は聞いていない。それに今更ため口だと馴れ馴れしいかな?
「次も頑張ってよね!」
「そのつもりだよ」
勝った認識したとき嬉しさがこみ上げてきたが、エレノアやルビアさんが喜んでくれた顔を見れた方が嬉しかった。
☆
俺の試合が終わり、次々と試合が始まる。ミノさんも強かったけど、去年ベスト8以上に残っていた人達も強いな。次々と予選勝者の人たちが負けていく。そしてノアさんの番がくる。
やっぱり強い。去年ベスト8の人と戦っているけど、圧倒している。相手の魔法をうまくかわしつつ、間合いを詰める。相手が虚をつような攻撃をしてもうまく受け流している。
(やっぱり強いな...)
そのままジワジワとノアさんの優勢になっていき、勝ってしまった。本当に強いな。こんな人と戦ったと考えるとゾッとする。もう極力戦いたくない。
そして今日ラストの試合はアーサーさん。本当にあっさり終わってしまった。開始の合図と同時にグランドクロスを撃って試合終了。
もっとアーサーさんの試合を見て情報が欲しかった。でもグランドクロスを1回見れただけよかったか。範囲は思っていた以上だった。でも威力は思っていたより出ていなかったためここが勝つためのポイントだと思う。
今日の結果は予選通過者は俺とノアさんの二人のみ。他は本戦から出場した人たち。本当に厳しい世界だな...。
「明日はアーサーだってね。昨年の覇者だけど頑張って。怪我だけはしないように!」
「うん」
宿に戻って預言を使う。
{クリスやっと呼んでくれた! それでどの未来がみたいの?}
{ごめん、明日俺は大怪我を負う?}
{そこらへんは大丈夫だよ!}
{そっか、ありがとう。明日は戦闘中も頼ると思う。よろしくな相棒}
{うん!}
明日大怪我はしない。それを聞けたのはでかい。もし大怪我をする未来が見られたらどうしようか迷った。でもその心配は無くなった。これで心置きなく本気で戦える。
そう思っておきながらあっさり負けなければいいけど...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます