第21話
ピンポーン
「あ、海来たわよー」
「ああ、わかってる」
朝、いつものように支度をし、リビングで待っていると、呼び鈴がなる。
勿論、この時間帯に家にくるのは一人しかいない。だが、俺はその一人に会うのに、物凄く緊張してしまっている。
理由は、母親から課せられたミッションで、恋人を名前で呼べと言われ、何とか呼ぶことは出来たが、へたれも相まって呼んだ瞬間に家に入ってしまった。
そのためリアクションを見ることができず、そのまま名前を呼んで良いのか、いつものように戻すべきなのか考えた結果、丸一日無駄にしただけだった。
ここでイケメンならさらっと名前を呼ぶことができ、そのまま浸透させていくことも容易なのだろうが、今まで彼女の一人もいなかった俺には少々ハードルが高かった。
だが、時間は止まってはくれない。ついに葉山に会う時間になってしまった。俺は決心し、扉を開ける。
もしかしたらあまり葉山は気にしていないかもしれない。そんな希望的観測は、葉山の顔を見てすぐにわかった。
葉山は顔を真っ赤にし、物凄く動揺していた。単刀直入に言うと、めちゃくちゃ意識していた。引き戻ることはできないため、気付いていないふりをする。
「お、おはよう」
「お、おはようございます。海君」
「そ、それじゃあ学校に行こうか」
そう言い、学校に向かうことにした。
____________________________________________
き、気まずい……!物凄く気まずい!
お互い意識しあっているため当然会話はなく、必然的に静かになってしまう。
葉山はどのように対応すれば良いのかで悩み、俺は話しかけようにもどう呼べば良いのかわからないため、このようになっている。
しかし、このままとはいかないため、俺も勇気を出すことにする。
「と、ところで葉山。この前は……」
「…」
俺はいつも通り名字で呼び、話しかけた。しかしそれが良くなかったのだろう。赤みを帯びていた葉山の顔はどんどん変化していき、最終的に機嫌の悪そうに頬を膨らましている。
「は、葉山?どうした?」
「……気付くまで喋りませんからね」
そう言いプイッと顔を背けてしまう葉山。勿論、理由は知っている。俺はもう一度、なけなしの勇気を振り絞り葉山の期待に応える。
「す、菫」
「……!」
喜んだようにこちらを見る葉山。彼女の嬉しそうな顔を見ると、何でもしてあげたくなってしまう。
「……多分海君は私の名前を呼ぶのに、凄く勇気を振り絞っているんだと思います」
「そ、そりゃそうだろ……」
「けど、私はやっぱり名前で呼んでほしいです。私の事を名前で呼んでくれる男性は、海君だけでいてほしいです」
「は、葉山……」
「はい違います。やり直し」
「す、すまん!いつもの癖で!……菫」
「つまらずにちゃんと言ってくれましたね!」
笑顔で嬉しそうに手を繋いでくる葉山。勿論手を絡ませながら。
「でも、まだ詰まっちゃうかもしれない。それでも、俺は菫ってちゃんと呼ぶから」
「ありがとうございます」
そう言い、学校に向かい出す。少しずつで良いから、二人の仲を深めていこうと思った今日の一幕だった。
____________________________________________
長い間更新できなくてすみません!m(._.)m。
予定が重なってしまって、体調を崩してしまい遅くなってしまいました。
これからはぼちぼち(毎日とは言わない)投稿出来そうなので、お願いします!
読んでくれてありがとうございました!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます