ゲーム対決!
旅館の中にある休憩室は異様な盛り上がりを見せていた。
休憩時間になり、エプロンと帽子を脱いだ正岡さんは休憩室の畳の上にあぐらをかく。
服装は半袖のシャツにデニムパンツと動きやすさを重視し、細身で引き締まった身体がよくわかる。
そのうえ黒い髪をポニーテールに鋭い眼光をしているので、どことなく侍のような雰囲気が漂っていた。
もっとも女侍が持っているのは剣ではなく、スマホなのだが……。
俺達全員がスマホのゲームアプリを起動する。
ゲームはオープンワールドで戦うガンシューティング。
自由自在に動き、障害物や落ちている武器を駆使して戦うことができる、戦略性の高いゲームだ。
「さぁて。私は一人、そっちは三人でいいよ。三回ヒットで退場。どっちが先に全滅するか、勝負と行こうじゃないか」
「正岡さん、それでは俺達が有利過ぎませんか?」
「へっへっへ! 私を甘く見るんじゃないよ!」
っていうか、俺達が甘く見られているような気がするんだが……。
こうしてゲームはスタートした。
「行くよ!」
始まると同時に、正岡さんは先制攻撃を仕掛けてくる。
「うおっ!」
「きゃあ!」
準備を整える間もなく、俺と楓坂のライフが一瞬で一つ減る。
まさに電光石火というにふさわしい素早い攻撃。
正岡さんの攻撃を回避した結衣花の援護のおかげで、俺達は壁裏に隠れて次の攻撃をしのぐことができた。
「とろいねぇ。そんなんじゃ、ハンデを二倍にした方がよかったかねぇ」
余裕の表情で笑う正岡さんの近くで、俺と楓坂は苦虫を嚙み潰したような顔をしてみせる。
「くっ……。ゲーセンのモデルガンタイプならもっとできたのに」
「そうね。コントローラーが悪いのよ。本気が出せればすごいんだから……」
「二人とも、それザコキャラっぽいよ……」
俺と楓坂の不満を聞いて、結衣花は半ば呆れたようにつぶやいた。
しょうがねぇじゃん。
だって悔しいんだもん。
一方結衣花は正岡さんの攻撃を回避して、反撃をしていた。
二人の実力はほぼ互角。
まさに強者同士の戦いだ。
「ヤバいぞ、楓坂。このままだと俺達が空気だ」
「そうね。せめてけん制をして結衣花さんをフォローしましょう」
こうして俺と楓坂がけん制をし、結衣花が隙をついて攻撃をするという連携が成り立っていく。
最初は互角に見えた戦いも、しだいに俺達が有利に傾いてきた。
そんな様子を見て、正岡さんが嬉しそうに笑う。
「いいチームワークじゃないか。それが四季岡ファミリアにもあったらねぇ」
「どういうことですか?」
「四季岡ファミリアはね、別にクリエイター集団とかAI開発のチームじゃなかったんだ。ただ単にみんなで集まって何か楽しい事をしようっていうチームだったんだよ」
まるで学生のサークルのようなノリだ。
でも、わかるなぁ。
仲のいいやつらで集まって何かを作るって、理屈抜きでとにかく楽しいんだ。
「ところがね……、ひとつ成果を上げるたびにみんな変わっていってね。結局、最後は手柄の取り合いになって初期メンバーは解散ってことになったのさ」
それで残ったわずかなメンバーを秋作さんがまとめて、新しい四季岡ファミリアが生まれたってわけか。
「じゃあ、秋作さんはいい事をしているってことですか?」
「んん~。どうなのかねぇ……。あの坊やは昔の女にこだわってて暴走気味だから」
「えぇ!? 昔の女!?」
予想外の答えに驚いたのは俺だけじゃない。
隣に座っている結衣花と楓坂も、画面から目を離して正岡さんの方を見た。
その瞬間、結衣花が操作するプレイヤーに正岡さんの攻撃が命中する。
「あっ!」
「へっへ! もらったよ!」
きったね! 注意を引くような会話をして、俺達の隙を作りやがった!
だけどこっちは結衣花メインのチームだ。
ここで彼女がやられたら、負けが確定してしまう。
こうなったら!
「させるか!」
「なっ!?」
俺はプレイヤーを操作し、正岡さんの攻撃を妨害。ほとんど自分の体を盾にするような状態だった。
しかしこの行動が功を奏して、正岡さんに隙が生まれる。
そこへ結衣花の攻撃が決まった。
「やったな、結衣花」
「うん。二人がサポートしてくれたおかげだよ」
俺達の会話を聞いていた正岡さんは苦笑いをしながら姿勢を崩した。
「ホント……、あんたら仲がいいね」
「普段は俺がイジラレまくってますけどね」
「それだけ愛されてるんだよ。へっへっへ。今日はこの街に泊っていくんだろ? 夕食でも食いながら、知ってることを話してやろうじゃないか」
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
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次回、鹿児島で夕食!
投稿は朝7時15分。
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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