1月23日(土曜日)笠間市で驚きの遭遇


 茨城県ドライブ旅行。

 まず俺達は向かったのは笠間市だった。

 比較的自然の多い地域で、ドライブに行くには気持ちのいいところだ。


 そして楓坂に勧められた笠間稲荷神社へ到着。

 俺達は参拝を済ませて、神社の周辺にある門前通りを散策していた。


「風情があっていい町だな」

「食べ歩きが人気ですけど、美術館とか伝統工芸とか楽しめるところがたくさんありますね」

「へぇ。とりあえず昼だし、何か食いに行くか?」

「そうですね」


 笠間市のオススメグルメを検索すると、そばや稲荷寿司がよく目立つ。

 他にも地元ならではのスイーツも盛んのようだ。

 なるほど、食べ歩きが人気というのも頷ける。


 すると楓坂が急に立ち止まった。


「あ、笹宮さん。ちょっと知り合いがいたので挨拶をしてきます。すぐに戻ってきますね」

「ああ」


 楓坂はそう言って足早に一人の女性の元へ向かった。

 俺よりも年上の人みたいだが、誰だろうか。

 よくよく見ると、近くに高校生くらいの男女が十人くらい集まっている。


 その時、よく知っている女子高生が話し掛けてきた。


「おはよ。お兄さん」


 振り向くと、そこには私服姿の結衣花がいた。

 首から大きなデジタルカメラを下げている。


「よぉ、結衣花。合宿って言ってたけど、こっちに来てたのか」

「うん、他校と合同でね。今は写真撮影してるの。」


 なるほど、そういうことか。

 よくよく見てみると、他の学生も全員カメラを持っていた。

 きっとCG制作の資料にするのだろう。


 ということは、楓坂が今話している女性は顧問の先生というわけか。


「CG部の合宿って何をするのかわからなかったが、写真撮影だったのか」

「うん。他にもデッサンとか立体模型を作ったりとかするかな」

「意外だな。デジタル機器は使わないのか」

「今の顧問の先生はCGを学ぶならアナログも知っておくべきっていう考え方なんだよね」


 うちの会社にもデザイナーはいるが、どんな勉強をしていたのかなんて聞いたことがないから知らなかった。

 もっとも結衣花の学校だけがこういう方針なのかもしれないのだが……。


 でもカッターとかの使い方は知っておいて損はないし、カメラの知識も役に立つからな。

 将来のことを考えるのなら、無駄にはならないだろう。


 俺は会社に入ってから勉強したから、ぶっちゃけ苦労したんだよな。


「そういえば俺がここに来ていることは驚かないんだな」

「楓坂さんと旅行なんでしょ? 聞いてたから知ってるよ」


 さては楓坂のやつ、結衣花と合流するのを狙ってここを勧めてきやがったな。

 めずらしく結衣花を誘わないと思ったら、そういうことか。


 でも楓坂の様子からすると、今日は結衣花というより顧問の先生に会いたかったみたいだ。


 楓坂が結衣花以外の人間と楽しそうに話をする姿なんて初めて見るかもしれない。


 その時、一人の男子生徒が俺達に近づいてきた。


「結衣花さん、ここにいたんだ。よかったら一緒に撮影して回らない?」


 今どきの男子高生らしい襟足が短めの清潔感のある髪型で、優しそうな目つき。いかにも陽キャラという男子だ。


「ありがとう。でも知り合いがいるから後で合流するね」

「……そうか。うん、それなら仕方ないね」


 結衣花に断られた男子生徒は苦笑いをして、そのまま別のグループに合流した。

 だが俺達が気になるらしく、何度もこちらを見てくる。


「友達か?」

「ううん。合同で合宿に来ている高校の男子。夏目君って言うの」

「へぇ、なかなかイケメンだな」

「そうだね。主張しすぎない陽キャラって感じかな」


 最近は少しマシになったが、陰キャラの俺にはまぶしい存在だ。

 俺も学生の頃にあれだけイケメンオーラを持っていたらな……。


 すると結衣花が俺の腕をムニった。


「妬いた?」

「まさか。妬くわけないだろ」

「そろそろ素直になっていいよ」

「ちょっと気にはなった」

「よろしい」


 実際、俺が結衣花の交友関係についてとやかくいう資格はないのだが、やはり男が近づくと何とも言えない気持ちが湧いてくる。

 十歳年下の女子に独占欲を持つとか、俺は何を考えてるんだ。


 だが、それとは別に俺は気になることがあった。


「……さっきの夏目ってやつ、結衣花のことをチラチラ見てないか?」

「なんでだろうね」

「俺の事を嫌そうに見てくるんだけど」

「うーん。夏目君って去年私に告白してくれた男子だから、お兄さんのことを敵視してるのかもね」


 ん? んん? ……んんんん!!???


 結衣花の言葉を聞いて、俺は耳を疑った。


「え……。今なんて言った?」

「告白してくれた男子って言ったかな」

「……マジで?」

「うん。去年の八月に言ったじゃん」

「いや……、聞いたけどさ。まさか本人に会うとか思わないだろ」

「レアな体験ができてよかったね」



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・♡応援、とても励みになっています。


夏目君が告白したのは、去年の八月上旬です。

次回はラブコメ度が高くなりそうな予感!!


投稿は朝7時15分。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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