生徒会長エステリーゼ、風紀委員長ラシルド、王子サンバルト、教師オズワルド
アルベロは、右腕を軽くスナップさせて調子を確かめる。
いつもと同じ、モグの右腕だ。
召喚獣の王ジャバウォック。人の世界のために戦った真なる英雄……アルベロは、そう考えていた。
モグの姿で聞いた声は、ジャバウォックの声だったのだろう。だが、アルベロにとってモグもジャバウォックも同じ、ずっと一緒に過ごしてきた大事な友達だ。
アルベロは、演習場へ向かう。すると、演習場へ向かう通路に二人の男性がいた。
「ほっほっほ。いい面構えじゃの」
「うむ……」
一人は長い顎髭の男性。『
もう一人は、黒いコートに真っ白な髪、片目が完全につぶれ顔中に縫い後のある男性だった。
アルベロは警戒するが、グレイ教授は笑う。
「安心せい。こいつは顔こそ恐ろしいが小心者じゃよ。なぁリッパー」
「む……そ、そうだな。はぁ、『
「え……えっと」
いきなりすぎてアルベロは困惑。
すると、グレイ教授が笑顔で自己紹介。
「これから試合じゃから簡潔に挨拶じゃ。わしはグレイ、こっちはリッパー……ダモクレスやガーネットと同じじゃよ」
「あ……」
「い、いちおう私は医療班として待機している。その、気を付けて。あと、やりすぎないように」
「はい。わざわざありがとうございます」
アルベロは頭を下げる。
恐らく、釘を刺しに来たのだろう。アルベロが『憤怒』の魔人を倒したことは王国中に伝わっている。いくら模擬戦とはいえやりすぎない保証はない。
アルベロは気合を入れなおし、演習場内へ。
すると、そこにいたのは四人……エステリーゼ、ラシルド、サンバルト、オズワルドだ。
全員が、制服ではなく戦闘用の服に着替えている。
「───来たか」
エステリーゼが静かに呟く。
エステリーゼは全身を覆う黒いフィットスーツだ。短いスカートを履き、腰のベルトには『刀』と呼ばれる『斬る』ことに特化した剣が二本差してある。上半身はプロテクターのような鎧を装備し、長い黒髪は赤い髪紐でポニーテールに結わえていた。
「アルベロぉぉぉっ!! オレは以前より強くなった!! もう前のようにはいかんぞ!!」
ラシルドは、以前と同じ全身スーツだ。
だが、所々に装甲が追加されている。さらに手には手甲を装備していた。
「エステリーゼの弟か……悪いが、弟だろうと手は抜かないよ」
サンバルト王子は、エステリーゼと対照的な白いスーツだった。
腰にはレイピアを装備し、手にはヘルメットのような物を持っている。
「ふん……」
オズワルドは、全身ローブで身体をすっぽり覆っていた。
露出しているのは顔だけ。ローブの下には何を隠しているのか。
「…………四対一、か」
アルベロは、不思議なくらい落ち着いていた。
相手はA級召喚士三人、そしてA級に近いB級召喚士が一人。アベル程度なら三分と持たないだろう。
だが、アルベロは怖くなかった。
首をコキっと鳴らし、右手をプラプラさせる。
『では、召喚士の準備を』
演習場内に、ファルオの声が響く。
「来たれ我が騎士、『アークナイト』!!」
「唸れ、『ライボルトアックス』!!」
「輝け閃光、『シャイニング・レゾナンス』!!」
「蠢き喰らえ───『ア・バオア・クー』」
三メートルほどある純白の甲冑騎士、紫電を纏った巨大戦斧、『光』を媒介とした黄金の不死鳥、そして……禍々しい、巨大な毒蜘蛛が召喚された。
圧倒的な戦力。
記者たちは圧倒され、ごくりと唾を飲み込む者、蒼ざめる者、腰を抜かす者と多くいた。
そして、ヨルハも。
「───ちょっと、分の悪い賭けだったかも」
ツゥ───と、汗を流す。
A級を舐めていた。少しアルベロに入れ込みすぎていたとようやく自覚。
ヨルハはアルベロを見た。
「……え」
アルベロは、全く表情を変えていない。
それどころか、自分の右手を見て───淡く微笑んだ。
そして、右腕をエステリーゼたちに向けて開く。
「奪え───『ジャバウォック』!!」
アルベロの右腕が、肩から漆黒の外皮に覆われる。
右の首筋から顔半分も黒く染まり、右の白目部分が赤く、瞳が黄金に染まった。
アルベロは、清らかな力が満ちていくのを感じていた。
「いい加減、はっきり認めさせてやる。あんたらが無視し続けたのが上だってな」
「面白い……アルベロ、私がどれほど強いか、貴様より上だということをその身で思い知れ!!」
エステリーゼは剣を抜く───二刀流だ。
さらに、召喚獣アークナイトも腰の大剣を抜き、丸盾を構えた。
『そ、それでは……はじめ!!』
ファルオの合図と同時に、アルベロとエステリーゼは走り出した。
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