第198話 あれれ~? 自分の毒にやられてる無能がいるよ~?
響と月読、アランはノートルダム大聖堂の前にやって来た。
「あれ、ここのダンジョン、他と違うや」
『本当だね。ダンジョンの外側に、モンスターの警備がいるじゃん』
月読が言った通り、ノートルダム大聖堂はモンスター達によって警備されていた。
響の視界に映る
「この布陣からして、バラ窓を守ってるのは間違いないよね」
『ボス部屋がバラ窓にあるから、それを守るためにそうしてるんだよ』
「なるほど。じゃあ、わざわざ内部に侵入して上を目指すのは面倒だね」
その言い草から、響が正攻法ではこのダンジョンに挑まないのだと月読は悟った。
『・・・響、何をする気だい?』
「外を警備するモンスター達を倒してから、ボス部屋まで飛んでくんだよ」
『ダンジョンでそんなことができると思う? 奏ぐらいの強さになれば、壊して入るとかもできるだろうけど』
「多分大丈夫。だって、外から侵入できないなら、外に警備を置く必要はないじゃん。つまり、ダンジョンの外側から入れるってことだよ」
『そっか。じゃあ、やってみようよ』
「そうだね。アラン、乗せてね」
「任せるでござる」
響はアランに乗り、ノートルダム大聖堂上空に移動した。
すると、先程まで響達に無関心だったはずなのに、ノートルダム大聖堂よりも響達が高く飛んだ瞬間、一斉に紅葉達目掛けて突撃し始めた。
「邪魔。【
ザァァァァァッ! ジュワァァァァァッ! パァァァッ。
滝のように流れ落ちる王水により、響達に釣られたグレートデーモン達は融けて魔石と化した。
1年の修業により、【
響はロキとの修行の中で、1対多数をどれだけ楽にこなせるかという問題を出された。
その答えとして、響が編み出したのは、敵が縦に一直線に並んだタイミングで、【
それを繰り返し行うと、気づけば先程使った【
響は地面に落ちた魔石を回収すると、再びアランに乗り、ノートルダム大聖堂のバラ窓を外側から目指した。
バラ窓のステンドグラスに近づくと、響は違和感を抱いた。
「ん? これって・・・」
『どうしたんだい?』
「このステンドグラス、ボス部屋の扉じゃないかな?」
『え? なんでそう思うの?』
「真ん中を半分に割るように、薄いけど線が見える」
『もしかして、内部から入ろうとしたら、いつまで経ってもボスに辿り着けなかったってこと?』
「そうみたい。適当にショートカットしようとしたのが、功を奏したみたいだね」
『なんてこった・・・』
月読は衝撃を受けた。
正解を導き出した響の思考もそうだが、それと同等の思考でフランスの冒険者を騙し続けたボス部屋の主がいることに、驚かずにはいられなかった。
しかし、月読が驚くのはこれからだった。
「【
ザァァァァァッ! ジュワァァァァァッ!
『何やってんの!? 貴重な建築物なのに!?』
ボス部屋の扉を開けるのかと思ったら、響が融かして道を拓くものだから、月読は思わず大声を出してしまった。
「大丈夫だって。今はダンジョン化してるから、ボスさえ倒せば元通りだよ。奏ちゃんに倣って、安全第一でやってみた」
『はぁ・・・。うん、そだね』
月読がダンジョン攻略に参加するのは、エジプトのピラミッドを含めてまだ2回目なので、奏がどのようにしてダンジョンを踏破したのか知らない。
それは当然、奏のやり方を真似た響のやり方についても、知らないという訳だ。
そうであるならば、ボス部屋の扉を融かし、その中に入るという方法を選択した響に驚くのは仕方のないことだろう。
響達がボス部屋に入ると、100体は確実に超えている武器を持った各種グレートデーモンの軍隊が隊列を組んで待機していた。
その奥には、ライオンの頭から山羊の脚が5本、風車のように生えている見た目のモンスターが浮いていた。
「あの奥の変なのがボスか」
『ブエルだね』
「ゲギャギャ、ようこそ我が大聖堂へ!」
「【
ズズズズズッ、グササササササササササッ! パァァァッ。
「何ぃっ!? 我が軍が一瞬で倒されただと!?」
地面を陥没させるのは、響の十八番だ。
だが、修行を経てその後の追撃がパワーアップした。
今までは、【
ところが、【
それにより、各種グレートデーモンの軍隊は、下だけでなく左右からも突き刺されてしまったのだ。
翼が生えていたとしても、不意打ちで地面を消されて落下している最中に、壁から勢いに乗って無数の槍が突き出して来たら、全て避けるのは不可能だっただろう。
現に、それができなかったせいで、各種グレートデーモンの軍隊は一瞬にして全滅したのだから。
「おのれぇぇぇっ! 【
プシュゥゥゥゥゥッ!
「アラン、抑え込んで」
「承知したでござる。【
ズゥゥゥゥゥン!
アランのオーラが膨れ上がり、それがボス部屋内部を包み込もうとするにつれて、ブエルの【
「ゲホッ、ゴホッ! クソがっ!」
「あれれ~? 自分の毒にやられてる無能がいるよ~?」
ここぞとばかりに、響はロキ直伝の挑発を披露した。
「舐めるなぁぁぁっ! 【
キュィィィン、ゴォォォッ!
「アラン、よろしく」
「了解でござる。【
ズゥゥゥゥゥン! ズサズサズサズサズサァッ!
「ヌァァァァァッ!?」
アランの【
【
「そろそろ終わりだよ。【
スパァァァァァン! ジュワァッ! パァァァッ。
アランの背中から、影を経由してブエルの背後に回ると、MPによって生成した猛毒濡れの刃が、ブエルの首を真っ二つにした。
切り口から毒が染み込み、万が一首を切断しても倒せなかった場合にも、猛毒で苦しめることができる恐ろしいスキルだ。
もっとも、ブエルは首を斬ったら倒れたので、猛毒の出番はなかったのだが。
響が地面に着地すると同時に、神の声が響達の耳に届き始めた。
《おめでとうございます。個体名:新田響が、クエスト1-8をクリアしました。報酬として、月読の復活率が80%になりました》
《響の【
神の声が鳴り止むと、響はブエルを倒したことで現れた魔石とモンスターカードを回収し、宝箱も開けた。
すると、そこには音符のマークが浮かんだ銀色の球があった。
「なんとなくではござるが、その球に惹かれるものがあるでござる」
「もしかして、アランの進化に使う物?」
「かもしれぬでござる」
そんな話をしていると、銀色の球が光を放ち、その光がボス部屋を包み込んだ。
それから少し遅れて、響達の耳に神の声が再び届いた。
《アランが進化条件を満たしたことにより、サウンドシルバーの効果で進化を開始します》
《おめでとうございます。個体名:アランは、フレースヴェルグで初めて2回目の進化により、シルバーバルドに進化しました。初回特典として、アランの従魔の証が音聖獣の証にグレードアップされました》
《アランは<聖獣>を会得しました》
《アランが<不老>を会得しました》
《アランの【
《アランの【
《アランの【
《アランの【
神の声が鳴り止むと、そのすぐ後に光が収まった。
響が目を開けると、赤茶色だった体毛は銀色に染まり、白い頭部と黄色い嘴だけはそのままのアランの姿があった。
外見が変わったとわかると、響はすぐにアランの変化を確かめた。
「【
-----------------------------------------
名前:アラン 種族:シルバーバルド
年齢:22歳 性別:雄 Lv:100
-----------------------------------------
HP:1,300/1,300
MP:1,300/1,300
STR:1,500
VIT:1,300
DEX:1,300
AGI:1,300
INT:1,500
LUK:1,300
-----------------------------------------
称号:<響の従魔> <鬼畜><聖獣><不老>
スキル:【
【
固有スキル:【
-----------------------------------------
装備:音聖獣の証(響)
-----------------------------------------
「アラン、やったじゃん。ついに全能力値が1,000の大台に乗ったよ」
「誠でござるか!? やったでござる!」
普段、働きたくないと言いつつ、能力値がなかなか1,000を超えないことを気にしていたため、アランは響からその事実を知らされて珍しく喜んだ。
アランが落ち着くと、響達はいつまでもこの場に留まっている意味がないので、ダンジョンを脱出した。
すると、オーディンが言っていた通り、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます