第196話 ・・・むしゃくしゃしてやりました。後悔はしてません
紅葉達がトレーニングルーム内での修行を始めてから、半年が経過した。
トレーニングルームの外の時間では、半日が経過しただけだが、内部では半年が過ぎている。
「ふむ。儂との模擬戦で、遂に気絶せずに済むようになったのう。大したもんじゃわい」
「はぁ、なんとか、はぁ、ですけどね・・・」
紅葉は修行開始から3か月後、オーディンと模擬戦をするようになった。
最初は一撃で気絶させられていたが、1か月後には、10回攻撃を防げるようになった。
2か月後には、30回攻撃を防げるようになり、3か月後の今日は時間いっぱい攻撃を防げるようになった。
オーディンと紅葉では、実力が雲泥の差なので、模擬戦は1分間と制限時間付きだし、オーディンはスキルも使わないという手加減もしている。
つまり、今日は1分間、オーディンの攻撃を全て防げたという訳だ。
もっとも、それに全神経を集中させていたせいで、紅葉は今座り込んで息を整えているのだが。
「これで、槍の型はばっちりじゃ。これを実戦で応用できれば、紅葉はソロモン72柱が相手でも、ソロ討伐が可能じゃわい」
「・・・ありがとうございます、師父」
どうにか息を整え終えたので、紅葉はオーディンに礼を言った。
「さて、次のステップじゃ。これからは、ロキの
パチン。
オーディンが指を鳴らすと、紅葉達の目の前に、以前紅葉達が五稜郭で倒したエリゴスが現れた。
しかし、前回と違うのは、ナイトメアホースに乗っておらず、ランスだけでなく盾を持っているところだ。
「師父、何故エリゴスがここにいるんですか?」
「こいつはのう、儂等が観察した限りのデータをロキが造った
「吾輩は断じてレプリカではない! 吾輩の名はエリゴス! 魔界の公爵だ!」
「・・・うわぁ、偉そうな態度までそっくりですね」
戦った時の記憶から、エリゴスそっくりな態度であることを思い出し、紅葉の顔は引きつっていた。
「うむ。まあ、今から紅葉にはエリゴス=レプリカと戦ってもらうぞい」
「わかりました。師父、壊してしまっても良いんですよね?」
「儂は一向に構わん」
「それを聞いて安心しました。じゃあ、エリゴス=レプリカ、始めましょうか」
「吾輩はレプリカではない! 吾輩の名はエリゴスだ! 【
バチバチバチッ!
本物同様、頭に血が上りやすいようで、エリゴス=レプリカは紅葉目掛けて【
それに対して、紅葉は静かに狙いを定めた。
「【
グサッ! ドゴォォォン!
「なんだとぉっ!?」
自分の槍の穂先よりも少し下に、【
そして、紅葉はエリゴス=レプリカがバランスを崩した隙を見逃さず、距離を詰めていた。
「【
ゴン! ドッシィィィィィン!
【
【
「これで終わりよ! 【
スパッ、ドガァァァン!
仰向けに倒れたエリゴス=レプリカの頭を狙い、紅葉は【
それにより、エリゴス=レプリカの頭部が爆発し、エリゴス=レプリカの動きは完全に止まった。
《迦具土の【
《迦具土の【
戦闘の終わりを告げるように、神の声が迦具土の装備スキルが上書きされたことを知らせた。
「ふむ、エリゴス=レプリカでは相手にならんかったのう。じゃあ、次はこれじゃ」
パチン。
オーディンが指を鳴らすと、紅葉達の目の前に、梟の頭をした燕尾服の男の姿が現れた。
「見たことない敵ですね。ソロモン72柱ですか?」
「これはアモンのレプリカじゃ。桜島に現れた炎の使い手だったんじゃが、楓を狙って攻撃しようとしたことで、奏がキレて瞬殺したソロモン72柱じゃわい」
「奏君・・・」
楓を大切にしていることはわかっているが、瞬殺してしまってはアモンも立場がなかっただろうと紅葉は同情した。
「この貧乳からは、ムカつく臭いがするな。【
ゴォォォォォッ!
「死ね。【
ゴォォォォォッ! ドガガガガガァァァァァン!
アモン=レプリカの【
その結果、爆炎が収まると、アモン=レプリカの姿は跡形もなく消し飛んでいた。
「奏も容赦なかったが、紅葉も大概じゃな。槍の訓練をするはずが、【
「・・・むしゃくしゃしてやりました。後悔はしてません」
「やれやれ。次は、大技で終わらせぬようにするんじゃぞ?」
パチン。
ジト目のオーディンが指を鳴らすと、紅葉達の目の前に、額に黒い2本の角を生やした赤髪の美青年が現れた。
その青年は、両手で振るような大剣をそれぞれの手で1本ずつ持っていた。
「またしても、見たことない敵ですね。今度はなんですか?」
「これは、日本で唯一ソロモン72柱で王の地位にあったベリアルのレプリカじゃ。仲間になれば、奏に世界の半分をやろうと言ったが、奏に断られて尋問され、儂等に貴重な情報をペラペラと喋った奴じゃわい」
「くっ、その場にいたかった・・・」
オタクとして、是非とも生で見たかったシーンを見逃したことを知り、紅葉は本気で悔しがった。
そんな紅葉を見て、ベリアル=レプリカは笑った。
「クックック。君、愉快だね。僕の味方になれば、世界の半分を君にやろう」
「キタァァァッ!」
「・・・おやおや、そんなに喜んでくれたのかい。僕の邪魔をしないなら、君には好き勝手に過ごしてもらって構わないよ」
「本当に味方になれば、積みゲーやりまくって部屋に引き籠っても良いの?」
「つ、積みゲー? ああ、勿論だ。存分に堕落しした生活を過ごすが良いさ」
「だが断る」
「何故だ!?」
「この秋山紅葉が最も好きな事の1つは、自分で(自分のことを)強いと思ってる奴にNOと断ってやる事だから」
そう言った紅葉は、香ばしいポーズとドヤ顔を決めていた。
「くっ、どいつもこいつも言うことを聞かないなぁ、もう! 【
スパパパパパァァァァァン!
「師父に比べたら、遅い」
キキキキキィィィィィン!
いくつもの斬撃を見極め、紅葉は自分に当たらないように、迦具土を大道芸のように回して弾き飛ばした。
「馬鹿な!?」
「まさか、王たる存在がその程度じゃないよね?」
「舐めるな! 【
「【
グサッ! ドガガガァァァン!
「ぐはっ!?」
十字になるように、ベリアル=レプリカが同時に斬ろうとした瞬間を狙って、紅葉が一点集中のスキルを放つと、ベリアル=レプリカが力負けした。
バランスを崩したベリアル=レプリカだったが、隙を見せたら拙いとわかっていたため、紅葉が攻撃するよりも前に体勢を立て直し、次の攻撃に移った。
「【
ブンッ! ブンッ! ゴォォォォォッ!
ベリアル=レプリカがスキル名を唱えると、2本の大剣に黒い炎を纏わせ、そのまま横薙ぎにすることで、黒い炎が紅葉に向かって放たれた。
その火力は、アモン=レプリカが放った【
しかし、紅葉が慌てることはなかった。
「【
ボワワワァァァン。
紅葉の目が紫色に光ると、紅葉の目から放射状に紫色の光が放たれた。
紫色の光が、【
「何故だ何故だ何故だぁぁぁっ!? 何故、僕の攻撃が当たらない!?」
「答えは単純。私の方が強いからよ。【
グサァッ! ゴゴゴォォォッ!
攻撃が当たらず、心が折れて背を向けて逃げ出したベリアルに、紅葉は【
それは見事に命中し、ベリアルは力なく地面へと倒れた。
《おめでとうございます。個体名:秋山紅葉が、クエスト1-9をクリアしました。報酬として、迦具土の復活率が90%になりました》
《迦具土の【
神の声が鳴り止むと、紅葉はオーディンの方を向いた。
「ふむ。日本に現れたソロモン72柱なら、問題なかったようじゃな。まだやれるかのう?」
「勿論です」
この後も、紅葉は天界のデータベースに記録されたソロモン72柱の
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