第342話 ダンと預言者アブラハ

「ソルカ!?

どこへ行った!!

ソルカ!!!!!!!!」


ダンは家を飛び出すと

周辺を叫びながら捜し回った!


「どこだ!?

どこにいる?

何故、生まれたばかりの娘を置いて

出ていってしまったんだ!


僕は、君と一緒に

葵を育てるのではなかったのか?


ソルカ!!!!!!!」


ダンの叫びは空しく・・

声だけが響き渡った


「何故だ・・・・・

何故なんだ・・・・・」

ダンは気落ちし

膝を付き 途方にくれてしまっていた


その時、前方より

ひとりの老人が近づいてきた

(預言者アブラハであった)



「若者よ!

どうしたのだ?

何かあったのかい?」


「おじいさん!

この辺りに、若い女性を見ませんでしたか?

まだ遠くへ行っていないと思うのだけど・・

家を出て、居なくなってしまったのです!」


「居なくなった?

何があったのだ?

若い女性か・・・見てはいないが・・

何か事情がありそうだね!

良かったら 儂に話を聞かせてくれないか?

人に話を聞いて貰うと 

心が楽になるものだよ!」


「・・・・・・・・・・・・・」

ダンはじっと預言者アブラハを見つめた


「あなたの名は?」


「儂か?

通りすがりの 旅の老人だ!

名はアブラハと申す!

スンツヴァル王都に用事があってな!


昨晩、珍しい星を見かけたので

この村に 立ち寄ったのだよ!」


「そうですか・・・」

ダンは返事をするだけでやっとであった


ソルカとの別れ。。これから

葵と暮らしていけるかが

とても心配であった!


自分の子ではないけれど・・・

ソルカが一緒なら

育てる事もできただろう

しかし母親が失踪したのだ!

自分が育てる 義理はないのではないか?


そのような思いが・・

脳裏をよぎったが

ダンにとって 葵はもはや他人ではなかった・・


そして葵に対して

もはや特別な存在になっており

葵に見つめられているだけで 心が安らぐ


それに神が 

自分に対して この子を育てるように

望まれているように 思えてならない・・

どうしてだろう?


それに自分は 貧しく

決して 裕福ではない

この子を養う経済力はなく

食べていくだけで やっとなのである


ソルカが 生活に困った時の為に

手紙と袋に入った宝石のような物を置いていったが・・

それは非常に貴重なカーメルタザイト鉱石であったが

ダンには、その価値が 

まだ分からないでいた


「若者よ!

私が 力になれるかもしれない

悪いが 今晩泊めてくれるかい?


赤ん坊の世話も 

手慣れたものだぞ!」


「そうですね・・・

あなたが泊まってくれたら

心が落ち着くような気がします!


狭い家ですが

どうぞお泊りください!」


ダンは預言者アブラハを案内し

一晩泊まらせる事になった

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