第33話 「悪根の墓」

「ヨーデルさん!

アダム皇帝とは

スンツヴァル王都の皇帝ですよね!

なぜ私達のリムラ村復興の計画に

加担してくださるのですか?」


「それは当然の事だろう?

このガデム村もリムラ村も

スンツヴァル王都の支配下にあり

庇護を受けているのだから


それにあの方は人格者であり

初代巫女様が王都の礎を築き

歴代の皇帝達は 今日まで 聖典の教えを守り

健全な政治がなされるよう 努力されてきたのだ!


勿論 歴代の皇帝が全てが 

良い王であった訳ではなく

悪根の呪術者を支配する

「赤い星」の組織の影響を受け

王国の政治 道徳は腐敗し

危機的な時期を通った時代もあったが


アダム皇帝の父君の代になり

王都の秩序をかなり 回復されてきている」


「何故?

王都の秩序は 守られてきたのですか?」


「それはスンツヴァル王都に

代々守り語り継がれてきた

初代巫女様の「十戒」という教えがあり

全国民は 生まれたその日から

神の言葉を 毎日の挨拶をするより多く

互いに語り合う習慣があるからだ!」


「葵ちゃんは十戒を

知っているかい?」


「勿論です!

私も 毎朝唱えて 暗記しています!


□◆□◇◆


第一戒:あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない。

第二戒:あなたは、自分のために、偶像を造ってはならない。

    それらを拝んではならない。それらに仕えてはならない。

第三戒:あなたは、あなたの神、主の御名を、みだりに唱えてはならない。

第四戒:安息日を覚えて、これを聖なる日とせよ。

第五戒:あなたの父と母を敬え。

第六戒:殺してはならない。

第七戒:姦淫してはならない。

第八戒:盗んではならない。

第九戒:あなたの隣人に対し、偽りの証言をしてはならない。

第十戒:あなたの隣人の家を欲しがってはならない。


 □◆□◇◆ □◆□◇◆ (BIBLEより引用)


スンツヴァル王都の全国民が

この「十戒」の教えが精神の真髄にまで 

浸透できているのは

歴代の巫女様と妖精族の守護者達の

血と涙の結晶といえる 

努力の賜物があったと言われている」


「つまり反発する者達も

多かったという事ですか?」


「その通りだ!

今のスンツヴァル王都の約3割は

忠実な信徒といえるが


残りの者達は

時代の流れに 身を任せて

目の前の欲望に身を投じ

刺激と快楽と 贅沢な暮らしを求め

衣食住の豊かさを 互いに自慢し合い

より高みを目指して 生きている!

その先には 決して満たされる事のない

「悪根の墓」と言われる溝に一旦入り込むと

自力では 決して抜け出せなくなり・・・

人間不審に陥り・・・家庭は崩壊し・・

狂人化が進んでしまうのだ・・」


「つまりリムラ村の廃村化と

同じ結果になってしまう・・という事ですね!」


「その通りだ!

だからアダム皇帝は

リムラ村が1年半前に 崩壊して以降

その原因を調査し 村を離れた人々を王都で保護し

彼らが 狂人化した 悪根の術からの解放に

尽力されてきたのだ!」


「村を離れた人達は 

正気に戻ったのですか?」


「いや・・まだ完全ではない・・

しかし少しづつだが 

回復に近づいているのは確かだ!」


「そうですか?

それを聞いて 安心しました!

彼らが 完全に回復したら

リムラ村はに戻る事も可能なのですね?

そうなれたら 私は・・・」

葵は涙ぐみ 感極まっていた


「葵ちゃん!大丈夫だよ!

必ず リムラ村は元の平和な村になると!

僕達は信じている!

だからみんなで力を合わせて頑張ろう!!」

ラック内なる勇気が湧きあがり

大胆に宣言した!!


「よく言った!ラックよ!」


ガンメル村長はラックの両肩を持ち 

力強い眼光で ラックを見つめていた


「リムラ村復興計画の為に

お前達に重要な任務を 与えたいのだが!

頼まれてくれるか!」


これまで無口で 発言を控えていた

ガンメル村長が ラック達にとんでもない使命を与えた


今回リムラ村への

ボランティア活動発足の提案をするつもりが

アダム皇帝からの勅命といえる 

ガデム村が総力をあげた取り組みへと

発展していくのであった!







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