第12話 サラの料理

「葵ちゃん!

ここがガデム村で最も美味しい地方料理を出す

サラさんの店だよ!」


葵はラックの案内で

ヨーデルと3人で

店の中に入っていった


店内はガデム村の労働者で溢れており

ほとんどの席はいっぱいだった

かろうじて奥の1席だけ空いており

そこに座る事にした


「葵ちゃん!

この店はね!

 スンツヴァル王都の貴族達も

お忍びで食べき来る程

人気のある店なんだよ!


何が凄いかというと

お客にとってベストな料理を出してくるんだ!」


「ベストな料理とは 

どういう事?」


「お店のマスターの女将サラさんは 

とにかく凄い人で

人を見る目があるらしく 

一目見ただけで 相手の性格や体調

これまでどういう人生を歩んで来たのか

見抜く洞察力があるらしく


その上で、一人ひとりに合わせて

考えられた食事を出す事で有名な店なんだ!


ある旅人は、家族を火事で失い 

ひどく落胆していたらしいのだけど・・

たまたまこの店に立ち寄って

サラさんの料理を食べて とても元気が出て

生きる気力が 湧いてきたらしく

今もこのガデム村で 

頑張って働いているらしいよ!」


「凄い人ね.....

是非会って見たいわ!」


「父さんは 

昔からの知り合い何だよね?」


「あぁ・・・ 12年前に

王都から一緒に招聘されたメンバーの一人だよ」


「父さん達は どうして

王都から この村に来る事になったの?」


「それは...」


ヨーデルが 

少し話す事を戸惑っていると

雰囲気を察してか、サラが姿を現した


「ラックいらっしゃい!

ヨーデルさん 久しぶりね!

元気だった?」


「サラ!君も元気そうで

何よりだ!ご主人も変わりないかい?」


「ええ!体力だけはある人だから

お店の料理を ひとりでまわして疲れ知らずで 

毎日働いているわよ!」


「ハハハ 相変わらずだね!」


「それより・・ヨーデルさん

この子は誰? 

はじめて見る子ね?

お嬢ちゃんお名前は?」


「はじめまして 葵です!」


「葵ちゃんか?

よく来てくれたわね!

私は、この店の女将サラよ!

よろしくね!」


サラは挨拶すると 

すこし表情が固まった・・

葵から発せられる隠された秘めたオーラを察し

少し困惑している様子だった・・・


「葵ちゃん 

あなたには不思議な力が・・

私と通ずる力を持っているわね?

あなたはどういう・・・」


そしてラックにも目を向けると


「ラック!あなたも

少し見ない内に頼もしくなったわね!」


「そうかな?

何も変わらないと思うけど・・・

今日は ここにいる葵ちゃんの仕事を手伝って

たくさん働いたから 

大人の仲間入りした気分だよ!」


「何を 偉そうに!!」

ヨーデルは 嬉しそうに 

ラックの頭をこついた


(確かに・・ラックは

葵ちゃんと出会ってから

何か心境の変化があったのか・・以前より

強い精神力を身に付けたような気がするが・・・

気のせいだろうか?)


ヨーデルは息子ラックから 

12年前に ガデム村に派遣を命じた

預言者アブラハと ラックがなぜか? 

重なるものを感じていた


(ラックが・・・まさかな?)


預言者アブラハと ここにいるサラは

妖精族の守護者であり 

神に選ばれた民である

だからサラが店に来る人々を元気づけ

励ます力があるのは 

妖精族の秘術によるものだと

ヨーデルは、分かっていた


そしてもうひとり 

妖精族の守護者がおり

村長の妻ルスタである!


12年前、我々預言者アブラハ様に選ばれた5名は

「神の使命」を受けた派遣だと

アブラハ様は おっしゃっていた!


それがどういう事なのか?

ヨーデルは、いまだに分からずにいたが・・


1年前 リムラ村の廃村化が起こり 

悪根の呪術者達の動きが激しくなり・・ 

我々が住む水源の大陸ピジョンで 

何かが起こりはじめているのは確かだだった!


一体何が!?


今晩でも我ら主要メンバー5名

ガデム村長とルスタ サラと夫のカムイで

話し合いを するべきだろう!

あとで サラに声をかけるとしよう!)


□◆□◇◆


「葵ちゃん

あなたどこか昔の私に似てるような・・・」

サラは葵の顔をじっと見つめた


葵は見つめられ 真っ赤になり

恥ずかしそうに俯いてしまった


「サラさんそんなに見つめたら注文ができないよ!

オレはワインとガラスタ料理を頼むよ!

ラックはどうする?」


「オレの前に

葵ちゃんが先さ!」


「ハハハ!

ラック葵ちゃんに惚れてるのね!」


「なっ!

何言ってんだ!サラさん」

ラックは顔を真っ赤にして

タジタジでかなり焦っているようだった

(こいつマジで惚れてるな(笑)

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