638話 ハイブリッジ家配下の紹介 執事とメイド

 合同結婚式が終わった。

 続いて、立食パーティーが行われる。

 今回の主役である俺、ニム、ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテは会場の中央で貴族たちから挨拶を受けていた。


「本日はおめでとうございます。噂には聞いておりましたが、これほどの美人揃いだとは想像以上でした」


「いやはや。まことに羨ましい限りだ」


「ハイブリッジ騎士爵家の未来は明るいでしょう」


 サザリアナ王国の各貴族家の当主や名代が次々に祝いの言葉を口にしていく。


「ありがとうございます。今後もハイブリッジ騎士爵領、そしてサザリアナ王国の発展のために尽力するつもりです。もちろん、妻たちもしっかりと幸せにしますがね」


「はっはっは! それは結構なことですな!」


「わしらも安心して隠居できますぞ」


 そう言うのは、ええと……。

 それぞれ別の子爵家の当主だったかな?

 そろそろ代替わりしてもいい年頃ではある。


「そうですか? まだまだ現役で活躍していただきたいのですが」


「ほほう。嬉しいことを言ってくれのう! だが、わしはもう十分に働いたからのう。後進の育成に力を入れるつもりじゃよ」


「私はまだ引退など考えておりませんぞ!」


 代替わりの時期については、法律などで明文化されているわけではない。

 早めに引退して後進の育成に励む者もいれば、ギリギリまで働く者もいる。


「元気なおじ様たちばかりですわね」


「まったくだ」


 リーゼロッテも楽しげに話に参加している。


「しかし、改めて見ても、ハイブリッジ騎士爵の配下には優秀な人材が多いようですね」


「一人ひとりを紹介してほしいぐらいですな。まことに素晴らしい」


「そう言ってもらえると嬉しいですよ。俺にはもったいないくらいの自慢の部下たちばかりです」


 俺は謙遜しておく。

 当主がへりくだり過ぎるのはよくないだろうが、ふんぞり返るのもよくない。

 と、そこへ新たに近づいてくる者たちがいた。

 ラスターレイン伯爵とハルク男爵だ。


「何を言っておる。配下の優秀さは認めるが、それ以上の規格外の実力を持つお前がそれを言ったら、部下たちの立つ瀬がないではないか」


「その通り。タカシ君の治療魔法と戦闘能力は格別だ。その上、統治の能力もあったのだからな。我が男爵家や王国と共に、末永く発展してもらわなければならん」


「ははは……。もちろん頑張りますよ」


 二人とも、今日は正装をしている。

 ラスターレイン伯爵は青を基調とした礼服、ハルク男爵は黒系統の色をした上品なスーツだ。

 どちらも仕立てが良くて、とても似合っている。

 俺たちはそんな雑談を交えながら、食事を楽しんだ。


「さあ、皆様お食事は楽しんでおられますでしょうか? ここで、ハイブリッジ騎士爵家が誇る素晴らしい配下たちをご紹介させていただきましょう!」


 引き続きネリーが司会を行ってくれている。

 そして、食事会の会場前方にある舞台に、たくさんの男女が現れた。

 彼らはそれぞれ普段の仕事着ではなく、しっかりとした正装を着込んでいる。


「まずは執事長のセバス! 彼の仕事は多岐にわたり、屋敷の管理全般や使用人の統括などをこなしています! ハイブリッジ騎士爵の不在時には、彼の名代として采配を振るうこともあります! また、武術の腕にも優れ、ハイブリッジ杯でも激闘を見せてくれました!」


「おお……!!」


「あれはハルク男爵家の……」


「引退したと聞いていたが、復帰していたのか」


 会場にいる参加者たちから感嘆の声が上がる。

 セバスは軽く一礼をして、後ろに下がっていく。


「続いて、元は使用人から農業改革担当官に抜擢され、現在はハイブリッジ騎士爵領の生産力アップに尽力しているニルスとハンナです! 彼らの手腕により、ハイブリッジ騎士爵領の作物は品質も量も安定し、領民たちに喜ばれています! ちなみに彼ら2人は夫婦です!」


「ほう、奴らが噂の……」


「収穫量が増大したのはハイブリッジ騎士爵本人や第四夫人ニム殿だけではなく、あの二人の力も大きかったらしい」


「夫婦で活動しているということは、末永く貢献しそうだな」


「ああ、いいことだ」


 会場内から温かい拍手が送られる。

 ニルスとハンナは緊張した様子だが、それ以上に嬉しそうな表情をしている。


「続いてはハイブリッジ家を陰ながら支えるメイドを紹介します! レイン、オリビア、クルミナ! さらには将来性豊かなメイドとして、リンとロロです!」


「「「「「おお……!!!」」」」」


 会場内にどよめきが起こる。

 彼女たちが可愛い美少女であるのはもちろんなのだが、それだけではない。

 レインとオリビアは、ブーケの争奪戦に参加して確かな身体能力を見せつけた。

 また、リンとロロについてはまだかなり幼いものの、その身体から発せられる雰囲気は同年代の者と比べても上だ。


 オリビアとロロは落ち着いた様子で、クルミナはのほほんとした様子で、レインとリンはカチンコチンに緊張している。

 ネリーの紹介を受けて、彼女たちが一礼をする。

 優秀で可愛いメイドたちが勢ぞろいしているのを見て、参加者たちからは嫉妬や羨望、感心の視線が向けられる。


 ふふふ。

 どうだ?

 俺の配下は優秀な者が揃っているだろう?


 特に今紹介した者たちは、俺の加護(小)の恩恵を受けている者たちばかりだからな。

 例外はオリビアとクルミナだが、彼女たちも加護(微)の恩恵は受けているし、元々優秀だ。

 その上、みんな見目も麗しい。

 他家からすれば、喉から手が出るほど欲しい人材だろうな。


 だが、ハイブリッジ家の人材はまだまだこれだけにとどまらない。

 警備兵や御用達冒険者にも優秀な人材がいるのだ。

 引き続き、参加者たちにドヤ顔を見せつけてやることにしよう。

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