547話 新しいミッション

 俺の寝室で、ミリオンズの秘密会議を開いている。

 全員の最新ステータスの共有を終えた。

 最後に、新しいミッションの内容を共有しておこう。


「ええと。次のミッションはこんな感じだな」



ミッション

加護(小)を新たに5人へ付与せよ。

報酬:加護(微)の開放、スキルポイント20



「加護(微)とはどういった力なのでしょう?」


 ミティがそう問う。


「分からん。通常の加護と加護(小)の違いはみんなに話していたよな? 加護(小)よりもさらに条件が緩い分、恩恵も控えめなイメージだと思うが……」


 通常の加護を付与するには、忠義度50が必要だ。

 現在の対象者はミリオンズの9名。

 いずれも、それなりの期間いっしょに過ごしたり、大きな物事に共に取り組んで解決したり、男女の仲になったりして条件を満たした。


 その恩恵は、基礎ステータスの3割向上。

 さらには、スキルポイントを消費してほぼ自由にスキルを取得・強化できる。

 ステータス画面で各ステータスや取得済みスキルを確認できるという副次的な恩恵もある。


 加護(小)を付与するには、忠義度40が必要だ。

 現在の対象者は、リン、ロロ、トリスタ、ヒナ、セバス、キリヤ、ヴィルナの7名。

 いずれも、ミリオンズの面々ほどではないが俺と深い絆を構築している。

 俺がBランク冒険者として、そして騎士爵として名声を高めつつある今、以前よりも少しだけ忠義度が稼ぎやすくなっている感覚はあるが……。

 やはり、忠義度40はまだまだそれなりに大変な数値である。


 そんな加護(小)の恩恵は、基礎ステータスの2割向上。

 そして、所持スキルの内の最大3つのスキルレベルがそれぞれ1ずつ上昇する。

 かなり大きな恩恵ではあるものの、通常の加護の強力さや利便性に比べると少し劣る。

 また、簡易的なステータスや一部の所有スキルを確認できるという恩恵もある。


 今回のミッション報酬となる加護(微)の仕様はどのようなものになるだろうか?

 今までの傾向から考えて、付与条件は忠義度30か35あたりだと思う。

 そして恩恵は、基礎ステータスの1割向上や、特定スキルのレベルを1上昇あたりかもしれない。

 ステータスの確認については、加護(小)よりさらに簡易的なものになる可能性が高い。

 もしくはそもそも確認できないかだ。


 忠義度30でいいのならば、現時点でも満たしている者は数え切れないほど存在する。

 俺に対してそれなりに協力的な者を広く浅く強化できると考えれば、なかなかに有用なチートだ。


 ま、実際のところの付与条件や恩恵は、ミッションを達成してから運用しつつ確認していくことになるが。

 なにはともあれ、まずはミッションを達成しないと。


「5人? それは大変そうだね」


 モニカがそう言う。

 確かに、加護(小)を5人に付与するとなると相当に大変だ。


「ここ最近でたくさん対象者が増えたんだよね? タイミングが悪いなー」


 アイリスがそう言うわ、


「いや、このミッションが追加されたのは、ヴィルナに加護(小)を付与した直後だった。通算で加護(小)を得た人数が10名となることが、ミッション追加の条件になっていた可能性が高いように思う」


 サリエ、リーゼロッテ、蓮華。

 リン、ロロ。

 トリスタ、ヒナ、セバス、キリヤ、ヴィルナ。

 以上の10人だ。


「確かに、それはあるかもしれませんね」


「さらに追加で5人ですか……。大変ですが、私ももちろんお手伝いしますよ。むんっ!」


 サリエとミティがそう言う。


「今のところ、候補はどなたになりそうなのでしょうか?」


「そうだな……。やはりハイブリッジ家の配下の者たちだな」


 リーゼロッテの問いに、俺はそう答える。


「え、ええっと。ニルスさんとハンナさんあたりですね?」


「ニムの言う通り、その2人は有力候補だな。農業改革が成功したら報酬を弾むことにしているし、俺としても成功を祈りたいところだ」


 豊作を条件に、彼らの故郷に食料を無償援助するという報酬を約束している。

 別に今すぐ援助してやってもいいのだが……。

 村全体への援助となると、それなりの量が必要だ。

 そして、2人の故郷はハイブリッジ騎士爵領ではない。


 領外の者へ気軽にホイホイ援助していると、我が領の住民から不平不満が出るかもしれない。

 俺の名声が高まれば一般民衆から加護の対象者が出る可能性もあるし、そのあたりにも気を配りたいところなのだ。


「レインちゃんはどう? 大会のときに迫られたんだよね? あと、クルミナちゃんは?」


「ふむ。それなら、花殿もたかし殿を気にしてござったが……」


 モニカと蓮華がそう言う。


「ああ。レインと花は、配下というよりも家族の一員として迎える形でもいいかもしれないな」


 特に花は、妾でもいいという本人の意向だ。

 結婚しなくて済むのであれば、男の俺としては非常に都合のいい存在である。


 ……ん?

 俺、結構最低なことを考えているな?

 ま、まあ、妾とはいえちゃんと人間性を尊重して接し、本人の生活費や子どもの養育費を十分に支援すれば大丈夫だろう。


 レインの意向は分からないので、慎重に様子をうかがわないとな。

 彼女はセバスやハルク男爵の関係者という側面もある。

 気軽に手を出すわけにはいかない。


「しかし、クルミナとはそういう話はなかっただろう?」


「そう? 彼女はよくレインちゃんと盛り上がっているけど」


「何の話で盛り上がってるんだ?」


 俺は聴覚強化レベル1を取得済みだ。

 盗み聞きには定評がある。

 しかしそんな俺でも、クルミナとレインが盛り上がっているところはあまり見たことがない。

 モニカは兎獣人として俺以上の聴覚を持つし、いろいろな情報を持っているようだ。


「もちろん、タカシのことだよ。カッコいいとか優しいとか気前がいいとか……」


「なにっ!? それは本当か!?」


「え? ああ、知らなかったんだ。本当だよ」


「おお……。さすがはモニカの超聴覚だ。貴重な情報をありがとう」


 レインは表彰式のときに公開告白してくるぐらいだし、本気で俺のことが好きなのだろうとは思っていた。

 こうして、俺が知らないところでも好意を向けられていると聞くと嬉しいものだ。


 さらに、まさかクルミナまでもがそうだとはな。

 いや、ただ遠巻きにキャッキャと言っているだけで、恋愛感情とはまた別の可能性もあるが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る