544話 サリエの最新ステータス

 俺の寝室で、ミリオンズの秘密会議を開いている。

 ミティ、アイリス、モニカ、ニム、ユナ、マリアの最新ステータスの共有を終えた。


「次はサリエだ。サリエはマリア以上にレベルが上がっていて、たくさん強化したな」


「そうですね。治療回りを頑張った甲斐がありました」


 レベルが上がる条件は、不明だ。

 別にチュートリアルや説明書があったわけでもないし。


 とはいえ、この2年ほどの異世界生活で、ある程度は分かってきている。

 魔物の討伐、対人戦、剣の素振りや武闘の型稽古、魔法の行使などなど……。

 様々な行為がレベルアップに繋がる。


 また、レベルが上がれば上がるほど、次のレベルに達するために必要な経験値は多くなるようだ。

 レベルが1ケタのうちはファイティングドッグ狩りをするだけでもそこそこ上がるが、それ以上になるともっと強い魔物と戦う必要がある。


 対人戦でもレベルは上がる。

 特に、敵対者との緊迫した戦闘や武闘大会、それに初見の相手との模擬試合などではより多く経験値が入っているように感じている。


 剣の素振りや武闘の型稽古は、毎日黙々とこなすだけでもある程度の経験値が入っているようである。

 しかし、マンネリ化してくると経験値量が逓減している感覚もある。


 魔法の行使については、魔力を込めたり詠唱中のイメージを変化させる工夫によって、経験値が若干多く入る。

 また、より上級の魔法を行使するほど経験値が多く入るようだ。

 ステータス操作によって魔法系スキルを強化し、強化された魔法を行使することでまた経験値が入る。

 正のスパイラルだ。

 マリア、サリエ、リーゼロッテたちは前回より順調にレベルアップしているが、それにはこのあたりの事情も関係しているだろう。


「サリエはよく頑張ってくれているよ。ありがとう」


「いえ、妻として当然の務めですので」


 サリエがそう謙遜する。


「それで、サリエが強化したスキルは……」


「まずは、植物魔法をレベル4まで伸ばしていただきました。高威力の攻撃魔法が”オーバーヒール”だけでは、少々使い勝手が悪かったので」


 少し前の時点でサリエが取得済みの魔法は、治療魔法レベル5と植物魔法レベル2だった。

 治療魔法は、その名の通り治療を行う魔法である。

 相手に攻撃するような魔法ではない。


 例外的に、彼女の卓越した治療魔法の技量により、相手に過剰な治療魔法を施して逆にダメージを与える”オーバーヒール”という魔法が使える。

 ただし、本来の用途とは違う使い方をしているため、与えるダメージ量に対してMPの消費は大きい。

 また、攻撃範囲や詠唱時間などの条件も悪い。

 一言で言えば、コスパが悪いのだ。


 そのため、普段の魔物狩りでは植物魔法を使うことが多かった。

 しかしその植物魔法も、レベル2までではさほど高威力の攻撃魔法は使えない。

 よって、今回は植物魔法をレベル4まで伸ばしたわけだ。


「確かにそうだな。それに対して植物魔法は使い勝手がよさそうだ」


「そうですね。特に中級のリーフブレードは使いやすいです」


 ここで、植物魔法を整理しておこう。

 レベル1は、ウッドバインド。

 木の根やツルを急成長させ、敵を縛る魔法である。

 ハガ王国の六武衆クレアや、俺の妾候補の花が得意としている魔法でもある。


 レベル2は、ブランチスピア。

 槍のような形状の枝を射出する魔法だ。

 ファイアーアローの木の枝バージョンと言ってもいいだろう。


 レベル3は、リーフブレード。

 刃のような切れ味の葉っぱを飛ばす魔法だ。

 今のサリエの主戦力はこれである。


 そしてレベル4は、ジャイアントグロウス。

 周囲の植物を急成長させ、制御する魔法だ。

 巨大化させることに主に魔力を割いているため繊細な制御は難しいらしい。

 今後の鍛錬次第では化ける可能性はある。


「他に伸ばしたのは……」


「高速詠唱をレベル3にしました。戦闘時に植物魔法で攻撃する際も、治療魔法でだれかを治療する際も、詠唱時間は短いほどいいので」


「確かにそうだ。攻撃時に短い方がいいのは全員に言えることだが、治療魔法の要であるサリエは特に詠唱時間が短い方がいいだろうな」


 強大な魔物や不意の暗殺者によって生死に関わる大怪我を負った者がいれば、高速詠唱スキルの有無による数秒~数十秒の差が生死を分ける可能性がある。


「残りは裁縫術と社交術ですね。それぞれレベル3まで伸ばしていただきました。冒険者活動だけではなく、妻として家庭内のことや貴族界のこともお任せください」


「ああ。頼りにしているぞ」


 裁縫術は、ミリオンズにおいてサリエしか持っていないスキルだ。

 もともと裁縫術レベル1を持っていたし、サリエは裁縫が好きで得意としていた。

 レベル3に伸ばしたので、一端のプロを名乗ってもおかしくないぐらいの技量を得たことになる。


 また、社交術もサリエしか持っていないスキルだ。

 セバスしか持っていない執事術やトリスタしか持っていない策謀術もそうだが、こうした戦闘技法系以外の技術はステータス操作では取得できない傾向がある。

 闘気術などと同様、最初は自力で取得する必要があるのだろう。


 俺たちミリオンズはほとんどが平民なので、社交に関する知識や経験を持っている者は少ない。

 伯爵家長女のリーゼロッテやハガ王国の王女であるマリアは社交術を持っていてもおかしくなかったような気もするが、実際のところ持っていない。

 リーゼロッテは貴族令嬢にしてはそのあたりがやや適当だし、マリアはまだ10歳ぐらいだ。

 彼女たちが社交術のスキルを持っていないのもうなずける。


 そんなミリオンズにおいて、貴族界の社交はサリエが要だ。

 頼りにしておこう。


「サリエが強化したスキルは以上だったな? スキルポイントが15余っているが……」


「そうですね。急いで伸ばしたいスキルもありませんので、あえて少しだけ余らせています」


 確かに、今は有事ではないのでバッファを多めに残しておいて問題ないだろう。

 だが……。


「HP強化はどうだろうか? サリエは治療の要だし、戦闘時に万が一先に倒れてしまっては一大事だ」


 まあ、俺、アイリス、マリア、リーゼロッテも治療魔法は使えるので即全滅にはならないが。

 抜きん出た治療魔法の腕を持つサリエが残っていてくれた方が、戦闘は安定するだろう。


「タカシさんがそう仰るのであれば、私に否やはございません」


「よし! では、今から早速上げようか?」


「はい。お願いします」


 俺はサリエのステータス操作画面を開き、HP強化を取得した。

 サリエは、治療魔法を軸に、攻撃魔法、裁縫術、社交術など多岐の分野で頼りになる存在だ。

 今後も、ミリオンズの成り上がり、ハイブリッジ騎士爵領の発展、そして世界滅亡の危機に立ち向かう上で大きな活躍を見せてくれるだろう。

 期待したいところだ。




レベル23、サリエ=ハルク

種族:ヒューマン

身分:モルガン=ハルク男爵家次女

役割:医師

職業:治療魔法士

ランク:C

二つ名:”過剰治療”のサリエ

ギルド貢献値:2000万ガル


HP:251(139+42+70)

MP:194(84+26+84)

腕力: 96(74+22)

脚力: 99(76+23)

体力: 99(76+23)

器用:107(82+25)

魔力:212(92+28+92)


武器:オリハルコンクラブ

防具:レザーアーマー(上)


残りスキルポイント:5

スキル:

棒術レベル2

HP強化レベル1

MP強化レベル3

魔力強化レベル3

植物魔法レベル4「ウッドバインド、ブランチスピア、リーフブレード、ジャイアントグロウス」

治療魔法レベル5「キュア、ヒール、エリアヒール、リカバリー、治療魔法創造」

高速詠唱レベル3

裁縫術レベル3

社交術レベル3


称号:

タカシの加護を受けし者

アヴァロン迷宮踏破者

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