第16章 ハイブリッジ騎士爵領にて パーティや配下の現状確認と結婚の挨拶回り

527話 トミー、ナオン、雪月花の活動を見学

 さらに1週間ほどが経過した。

 俺は、日々領主として各種の課題に取り組んでいる。

 そして……。


「ミティ。それにアイリスとモニカも。体調は万全か?」


「はい! 大丈夫です!」


「問題ないよー」


「いざとなれば、サリエさんやナックさんもいるしね」


 彼女たちが力強く返事をする。

 この調子なら、元気な子を生んでくれそうだな。

 聞いた話では、この国の乳児死亡率は低いらしい。

 治療魔法やポーションの恩恵だそうだ。

 地球に比べると科学や医療はあまり発展していないのだが、それならそれで他の分野が発達するものなんだな。


「楽しみだな……。子どもの名前も考えておかないと……」


「ふふっ。気が早いよー。まだ性別もわかっていないのに」


 アイリスがそう言う。

 確かに、生まれて性別が判明してからでもいいか?

 今回は3人がほぼ同時期に出産となる可能性がある。

 ミティとの子ども、アイリスとの子ども、モニカとの子ども。

 それぞれの男女パターンの名前を考えておくとなると、6つの名前が必要だ。


 しかし、生まれてから慌てて考えても、すぐにいい名前を思いつくとは限らない。

 日々少しずつでも考えておくのもありだな。


「みんなのお腹は、少し膨れてきたか?」


「気のせいじゃない? ちなみに私のこれは贅肉だよ。料理の味見をし過ぎちゃったから」


 モニカがそう言う。

 妊娠の判明後、運動は控えめにしてもらっている。

 食べてばかりだと、太っていくものだ。


「私のこれもそうですね……。タカシ様にみっともないお姿を見られたくないです……」


「心配するな。俺はみんなのだらしないお腹も好きだぞ。それに、子どもにしっかり栄養を送れるように、たくさん食べないとな」


「そ、そうですか……? えへへ。そう言ってもらえると嬉しいです!」


 ミティが笑顔でそう言う。


「さて。では、そろそろ今日の仕事に行ってくるよ」


「いってらっしゃい。今日は、トミーさんたちの活動の件だったっけ?」


 モニカがそう言う。


「ああ。彼らも俺の配下として精力的に活動してくれているからな。適切に評価して報いる必要があるだろう」


「そうだねー。ボクもいろいろと働きたかったけど……。ここは彼らに任せることにするよ。”雪月花”の3人もいるしね」


「タカシ様のご無事をここからお祈りしていますね! むんっ!」


 アイリスとミティがそう言う。

 そして、俺は屋敷を出たのだった。



 その後、西の森へとやってきた。

 今日の仕事場はここだ。

 トミーと”雪月花”、それにナオンとその部下たちも同行している。


「今日はここで魔物の間引きを行ってもらう。話は聞いているな?」


「はっ! なんでも、この森の奥地にある採掘場までの安全な街道をつくるとか」


「その通りだ。この交通の便がよくなれば、ハイブリッジ騎士爵領の発展は加速するだろう」


 採掘場で取れた魔石をラーグの街に運搬し、便利に使用したり他の街に売ったりする。

 ラーグの街で仕入れた食料や備品を採掘場に運搬することで、採掘の効率がよくなる。

 採掘場にもラーグの街にも、そして周囲の街にも好影響がある。


「素晴らしい考えですぜ! さっすがはタカシの旦那!」


 トミーがそう言う。

 まあ、考えたのは俺ではなく、町長やトリスタだけどな。


「ふん。さっさとやっていくわよ!」


 ツキがやる気満々といった感じでそう言う。

 そして、思い思いに散らばり狩りが始まった。

 トミーは、もともとのパーティメンバー数人とともに動いている。

 ”雪月花”は3人で。

 ナオンは、5人の部下とともに動いている。


「へへっ! おらよっと!!」


 トミーの身体能力はさすがだ。

 闘気の出力がなかなかの高水準である。

 パーティメンバーの者たちと力を合わせて、ゴブリンやハウンドウルフなどを撃破していく。


「……凍って。アイスレイン……!!」


「影魔法……朧」


「敵を縛って~。ウッドバインド~!!」


 ”雪月花”の3人は、魔法で攻撃を繰り出している。

 彼女たちはそれぞれ武闘や武器による戦闘も可能だが、魔法も中級クラスだ。

 ユキは水魔法、ツキは影魔法、ハナは植物魔法である。


 名前の印象から連想できる通りの魔法となっているので、覚えやすいな。

 たまたまなのか、本人が意図して該当属性の魔法を鍛錬したのか、あるいは親が子どもの適正を見抜いてそれにちなんだ名前を付けたのか。

 少しだけ気になるところだ。


 そう言えば、彼女たちの本来の名前は漢字だそうだ。

 ユキは雪。

 ツキは月。

 ハナは花だ。

 ひょっとして、ヤマト連邦の出身だったりするのだろうか。

 今度聞いておこう。


「お前たち! フォーメーションBで行くぞ!」


「「了解です! ナオン隊長!!」」


「行きますよぉっ!」


 ナオンたちの連携はさすがだ。

 王都騎士団で同じ小隊に属していただけはある。

 それに、個々の戦闘能力もなかなかだ。

 冒険者ランクで言えば、ナオンはCランク相当、他の5人はDランクといったところだろうか。


 彼女たちが順調にゴブリンやポイズンコブラを討伐していく。

 この仕事ぶりなら、今後も安定して魔物を間引いてくれそうだな。

 今日の俺の視察の目的は済んだ。

 そろそろ俺も魔物狩りに加勢するか。

 ちょうどそんなことを考えていたとき。


「……むっ!? リトルベアか……」


 俺はそう呟く。

 リトルベアは、中級の魔物だ。

 Cランク冒険者にとっては特に強敵というわけではないが、それでもソロや1パーティで撃破するのは難しい。


「ここは俺が……」


 Bランクである俺なら、瞬殺できる相手だ。

 安全に狩るためにも、俺が戦ってやろう。

 そう思ったが……。


「待ってくだせえ! タカシの旦那の手は煩わせません!」


「私たちにお任せを、我が主」


 トミーとナオンがそう言う。

 彼らがそう言うのであれば、ここは任せてみることにしよう。

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