第100話 case100

アイカと再会した翌日、くるみと亮介は学校が終わってすぐに集会所へ行き、ギルドルームに入ると、セイジが待ち構えていたように「行くぞ」と声をかけ、3人はギルドルームを後にしていた。


くるみと亮介は荷物を置いてすぐ、先に行ってしまった3人を追いかけると、セイジが「S級しか開いてないな… まぁ大丈夫だろ」と言い、そのままゲートの中に飛び込み、4人もその後を追いかけていた。


魔獣の群れを退治しながらダンジョンの中を歩いていると、斧を持ち、牛の顔をした人型の魔獣が姿を現した。


「ミノタウロス… 人と牛の死骸が融合して、魔獣化してるって言うのは本当だったんだな…」


セイジが呟くように言うと、魔獣は突然太一に向かって突進し、斧を振り上げた。


太一は攻撃を受け止めると、盾で魔獣を振り払い、ノリが腕を狙ってアックスを振り抜く。


斧を持った魔獣の腕は、呆気なく切り落とされたが、見る見るうちに元の姿に戻っていた。


「頭だ!!」


セイジの言葉を聞き、ノリと亮介、くるみの3人が、魔獣に向かって飛びかかるも、魔獣はその大きな腕で振り払うばかり。


何度か攻撃を仕掛けていると、魔獣は勢いよく両腕を振り払い、3人はその風圧で飛ばされ、離れたところに着地していた。


「何このパワー…」


くるみがアックスを握り締めながら呟くと、セイジが「姫、氷だ! 弱点をつけ!」と言い、くるみは装備を凍結の鎧と、凍結のアックスに変え、離れた場所から地面に向かって氷の魔法を放つ。


くるみの放った魔法は、地面を凍らせながら突き進み、魔獣の足をがっちりと捕らえた。


セイジは動けなくなった魔獣に対し、氷の魔法を放ち、太一とノリ、亮介の3人が勢いよく飛びかかる。


亮介が魔獣の腕を切り落とすと同時に、ノリが魔獣の首を斬り、魔獣は血を噴き出しながら倒れ込んだ。


ノリが「ナイス連携!」と言いながらくるみの方を見ると、くるみはその場でしゃがみ込んだまま動こうとしなかった。


「姫?」


ノリが不安になりながらくるみに近づくと、くるみはぐったりしながら「マナポ忘れた…」と力なく言うだけだった。


ノリが「ボスまでまだまだなのに…」と言うと、セイジは亮介に「おぶってやってもらえるか? しばらくじっとしてれば回復するはず。 姫、これ持ってろ。 ボスまで使うなよ」と言い、くるみにマナポーションを手渡していた。


ノリと太一、亮介もマナポーションを渡したが、くるみはそれを使うことなく、インベトリに入れていた。


亮介はくるみの事を背負い歩き始めると、「亮ちゃんごめん…」と、くるみが力なく言うと、亮介はクスっと笑い「いや、いいよ。 気にするな」とだけ言い、3人の後を追いかけて歩いていた。


しばらく歩いていると、今度は3頭もいる熊の魔獣と対峙し、くるみは木の陰にもたれかかって座っていた。


くるみは4人の戦っている姿を見ていると、居ても立っても居られなくなってしまい、少しだけ回復をした魔力を振り絞り、4人に補助魔法をかけ始める。


『こんな事すらまともにできないなんて…』


くるみは悔しそうに顔をゆがめながら、必死に補助魔法をかけ続け、4人はそんなくるみの姿を見て、小さく笑いながら戦い続けていた。


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