第88話 case88

一通り、建物内の案内を受けた後、くるみはシュウヤの後を追いかけ、ギルドルームに入った。


そこには金色をした装備作成機と、アイテム製造機、煌びやかなシャンデリアが光を放っていた。


広いギルドルームの中には、いくつものリクライニングチェアがあり、本を読んでいる人や音楽を聴いている人、休息を取っている人達が、自分の時間を楽しんでいるようだった。


「あの…」


くるみがシュウヤに声をかけると、本を読んでいた人が「静かにしてもらえるか?」と、間髪入れずにくるみを睨みながら言ってくる。


シュウヤはそれを見ながら「ここ、私語厳禁だから外に行こう」と言い、くるみをギルドルームの外へ誘い出した。


「何なの? あれ」


くるみが嫌悪感をむき出しにして言うと、シュウヤは「S級はあれが普通。 君らB級とは一緒にしないでもらいたい。 10分後にダンジョンに行くから、準備しておいて」とだけ言い、ギルドルームの中へ。


くるみは苛立ちながら自販機でマナポーションを購入し、ゲートのそばに立っていた。



しばらく待っていると、ギルドルームから20名ほどの人たちが出てきて、シュウヤは検索機を弄り始める。


すると、大きな荷物を持った女性が、ギルドルームから出てきた。


『ウィザード? いや、ヒーラー? もしかして、この人がギルド倉庫役の人?』


くるみは無言でその女性に近づき、荷物を持ってあげると、大剣を装備した男性に「勝手な行動をするな」と怒鳴られてしまった。


くるみはその声に応えることはなく、無言で荷物を抱えてゲートの前に立ち、装備を徐々に変えていく。


「…幻獣アックス?」


大剣を装備した男性は、眉間に皺を寄せたままくるみの装備を見て、小さく呟くように言っていた。


が、くるみは何も気にせず、開いたゲートの中へゆっくりと歩き出す。


シュウヤは自分よりも先にくるみが入ってしまったことに対し、苛立ちを覚えていた。



ゲートの中に入ると同時に、魔獣の群れがこちらに向かって牙をむいていた。


くるみがアックスを手にすると、大剣を装備していた男性が、くるみの前に立ちはだかり、大剣を振りぬく。


すると、振りぬいた大剣から出てきた風が、数メートル先に居た魔獣数匹を切り裂き、魔法石に変えていく。


男性はくるみを見ながらフンっと鼻であしらった後、くるみの背後へ歩き出した。



『ムカつくクソ男だな…』


くるみはそう思いながら荷物をその場に置き、ゆっくりと魔獣の前に行きながら幻獣アックスに炎のエンチャントをかけ、武器を両手で持った後、その場でグルグルと回転を始める。


くるみは炎の竜巻を作り上げた後、上昇気流に乗って勢いよく飛び立ち、風で炎の竜巻を押し込んだ。


すると、炎の竜巻は周囲の魔獣を引き込みながら直進し、森の中を燃やしながら、1本の道を作り上げる。


くるみはアックスを肩に担ぎ、唖然とする新たなギルドメンバーの横を通り過ぎる間際、大剣を装備している男性に対して、フンと鼻であしらう。


『な… なんなんだこの攻撃は… 炎の竜巻だと? この前の火球と言い、何でこんな真似が??』


シュウヤは初めて見た攻撃方法に、呆然とすることしか出来なかった。

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