第三章

第87話 case87

翌日、くるみは学校でボーっと外を眺めていた。


『行かなかったらギルド解散とゴロちゃんの処分か…』


そんな事を考えていると、悠馬が話しかけてきた。


「姫野さん、今度のペアダンジョン一緒に行かない?」


くるみは悠馬の言葉に耳を傾けず、ため息をつくだけだった。



『行ったとしても脱退の条件が装備と所持品、魔法石も全部没収か… そんなことされたら、やる気なくすわなぁ それでも頑張ってたセイジ君ってすごいなぁ…』


そう思いながらボーっと空を見ているだけだった。



『あいつ、元気ないな… そりゃあんな話聞いたら、誰でもそうなるか…』


亮介は人だかりの中心から、くるみの横顔を眺めていた。



その日の放課後。


くるみと亮介が集会所に行くと、肩にゴロを乗せたセイジとノリ、太一だけではなく、シュウヤが集会所のロビーで2人を待っていた。


セイジは2人に近づくなり「今日からA+級になるから、こことはお別れだ」と切り出す。


2人はりつ子に挨拶をした後、5人で迎えの車に乗り込み、新たな集会所へと向かっていた。



新たな集会所の場所は、くるみたちの通う学校から20キロほど行った場所にあり、くるみは車を降りてすぐ『こんな場所にあったんだ…』と思っていた。


「ここがA級以上の集会所だよ」


シュウヤはそう言いながら、豪華すぎるほど豪華な洋館の中へ足を運ぶ。


洋館の中に入ると、広すぎるくらい広い玄関ホールの中には、あらゆる自動販売機が立ち並び、豪華なテーブルと椅子があちらこちらに並べられ、数人のハンターたちが自分の時間を楽しんでいた。


『全部自販機なんだ… りつ子さんみたいにカウンターで話すことってできないんだ… なんかつまんない』


くるみがそう思っていると、シュウヤは金色のブレスレットをくるみに手渡し「S級ギルドへようこそ」と声をかける。


くるみはそれを受け取り、腕に付けると同時に、装備を金色のブレスに移した後、黒いブレスレットをセイジに手渡した。


セイジはそれを受け取るなり、黙ったまま頷き、くるみもそれに答えるかのように頷く。


シュウヤはそれを確認した後、くるみを連れて中庭にあるフリーマーケットを案内した。


フリーマーケットの中には、多くのテントが立ち並び、男性や女性がここぞとばかりに声を上げている。


「お嬢ちゃん! 炎像の煉瓦あるよ!!」


「幻獣の羽、お安くなってますよ~~!!」


くるみはそんな声に耳も傾けず、ボーっとしながらシュウヤの後を歩いている。


するとシュウヤが立ち止まり「そこがマーケットの総合管理をしている受付だよ。 今までりつ子が窓口になっていた事を、これからは個人でやるからね」と言いながら、受付を指さす。


くるみは何の反応もせず、ただただボーっと眺めているだけだった。

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