第29話 case29
くるみは翌日になっても、ふてくされたままでいた。
『煉瓦くれるって言ったのに… 炎の鎧、あれがないとダメなんだよなぁ…』
そう思いながら教室の外を眺め、ため息をつく。
すると突然、パシッと頭を叩かれ、視線とむけると教師が立っていた。
「今ギルドについて説明していたんだが、聞いてたか?」
「あ… すいません…」
「ったく… ちゃんと集中しろ。 死ぬぞ」
「…はい」
クラスメイトがクスクス笑う中、くるみはため息をついていた。
この日は実践訓練がなく、学校が終わった後、すぐにギルド集会所へ。
くるみは集会所についてすぐ、りつ子に煉瓦を安くするようお願いしていたが、聞き入れてくれるどころか、どんどん値上がりしてしまう始末。
くるみはギルドルームに入ってすぐ、ソファに倒れこんだ。
「ちーっす」とノリの声が聞こえても、くるみは顔をあげることなく「ちゃーっす」と言うだけ。
すると、くるみの腰の上にノリが勢い良く座り、くるみは「ふがあああ」と声を上げ、背骨をボキボキと鳴らしていた。
「何落ち込んでるのよ?」
「煉瓦欲しい」
「煉瓦?」
「炎像の煉瓦。 この前、学校の訓練ダンジョン行ったら、炎の石像出てきた」
「お前それ本当か!?」
この言葉に反応したのはセイジだった。
「うん。2重ダンジョン開いて炎の石像出てきた。 人の形したやつ。 石って生物じゃないよね? なんで魔獣化するの?」
「おそらく化石だったんだろうな。 何千年も前に亡くなった人が化石化して、それが魔獣化したんだろう」
「じゃあさ、人を殺したって事?」
「いや、死体を殺しても殺人にはならん。 ファイヤーゴーレムは俺も見たことがない」
「ふーん…」
「それより、訓練ダンジョンに2重ダンジョンが発生する方が問題だな。 教師には言ったのか?」
「言ってないよ? マジックウォーリアのことも言ってない」
「そうか…」
するとノリが立ち上がり、アイテム製造機を弄り始めた。
「あーダメだ。 素材があれば作れるっぽいけど、ギルドの修練度が足りないわ。 もっとギルドレベル上げれば作れるようになるかも。 って事で、ダンジョン行こうか!」
くるみはゆっくりと起き上がり「仕方ない! 煉瓦のためだ! 行くか!!」と言い、準備を始める。
セイジは黙ったままギルドルームを後にし、ダンジョン案内機を操作していた。
『ファイアーゴーレム… 本当に存在していたのか… てっきり、噂でしかないと思っていたんだが…』
そう思いながら操作をしていると、一つのダンジョンに目を止める。
『黄色信号? 2重ダンジョンの可能性あり。 もしかしたらいるかもしれん』
セイジはすぐにダンジョンの予約を入れ、ギルドルームへ向かい、遅れてきた太一たちに話をした。
太一は「危なそうだから、ポーション大量に持って行った方が良さそうだね」と言い、準備を始める。
ノリとくるみもポーションの準備をし、4人は準備万端の状態で、ゲートの中に消えて行った。
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