第71話 中−37 農国の信仰と紅茶ケーキ
「かなり古いな、、、」
泉さんのそのつぶやきどおりだ。
手沢にまみれた、と言ってよいほどの年季の入った、しかし、きれいに手入れされているベンチや説教台、ロウソク台などの小物まで。
修繕の跡があまりないので、とてもだいじにここが利用されている、というのがわかる。
オーウトのモスクにも古いのがあり、同様に見えた。
この国、農国では、信仰は根付いているのだろう。しかも、この教会やオーウトの町々にあるモスクたちからも推測されるように、権力化していないようで、よって人々の生活に根付いて、多分、近隣の人たちが手入れしているのだろうと思われる。
宗教が権力に成ると、かなりの数の者たちは無意識に忌避していく。
権力になっていないからこそ、多くの種類の宗教が混在で、根付けるのだ。
基本、
”信じることができる”者達、というのは、素直で正直だ。
だから、
信仰を持っている者は、相手がどの信仰を持っていようが、それだけで一定の信頼をする。
信仰は自分の内部のものであり、だからこそ、押し付けることは間違いだ、自分の信仰に反することだ。
という根底部分を理解しているし、感じている。
だからこそ、他宗教を信じている者を信頼できるのだ。
ここで存在しているのが、良い宗教、であるのは間違いないな。と思う。そう感じた。
ただ、良い宗教が人々によりそっているのと、寒い時期が多いので皆長袖などの隠す服を着る。なので、モフ神はあまり出番ないんじゃなかろうか?と思う。
モフ神の神棚とか祠とか見ないもん。
「どうですか?良い教会でしょう?」
後ろに老婦人が立っていた。
「ああ、ここは落ち着く。心に良い教会だ」泉さん
にこりとする老婦人
「農国の人々は、どの神様であれ、敬うのが物凄く上手だと思います」俺
「・・・・そう、、そういう見方もあるのね、、、」ふむふむ、みたいな感じの老婦人。
「なぜ、宗教が権力になっていないんですか?農国では」直球で訊く俺
「あはは、だって神を敬っているのよ?私達は。その手下なんか敬うつもり無いわよw」
「至言だな」泉さん
あっはっはっはっは、老婦人と泉さんの笑い声が、小さな教会に響く。
「面白いご婦人だ、、よろしかったらお茶をご一緒にどうかな?」泉さん
泉さんが、スタリッツァに昨晩着いたばかりであの各国料理店しか知らない、と言うと、老婦人は「では私の行きつけに」と、連れて行ってくれた。
「これは、、、」泉さん絶句
ケーキの数が半端ではない。50種類?
ケーキメニュー、茶のメニュー、食事のメニューと3種類のメニューの薄い本があるのだ。
「とても良い薄い本でしょう?」
と老婦人はわけわからん危険語句を吐いた。
なぜかわからんが、「こいつにメガネを掛けさせてはいけない」と俺の危機センサーが働いた。
抹茶ケーキ。プスコだったか?あそこで教えたのが、ここでは既にあったのだ。
まぁ、誰でも気づくかな、この絶対的な取り合わせは!!!抹茶×クリーム!!!(逆も許可)
ちなみに最初に抹茶に砂糖をいれたのは日本人では無く外人だったらしい。んなことやりそうなのは台湾人かなぁ?
砂糖好きなタイ人かもなー。
なので、
「紅茶のクリームのケーキってないですか?」とわざと店員に訊く。
「無いですがー、少々お待ちを、、」くいついた!!
怪訝な顔をしつつもwktkな老婦人
10分もたったろうか?
「こんなんでいかがでしょうかね?」
おっさんが持ってきた。
紅茶クリームを挟んだシュー。
ナイフで切り分け、老婦人の皿に一切れ、泉さんに「あーん、」一切れ
で、俺が一切れ。
・・・・・もぐもぐもぐ、、、
「おいしいわ!抹茶もそうだけど、お茶ってクリームに合うのね!!」老婦人
泉さんは残った1切れをつまんでパクっと、、、
「とても美味しくできています。茶をもう少し濃くできればもっと美味しいでしょうね」俺
「・・・どうすれば、、」
俺はオーナーだと言った彼と厨房に。
大きめの濾し布を、麺の湯ギリに使う網の網を取り去ったモノにくっつけ長めの袋状にする。
で、結構すりつぶした紅茶をどばどば入れ、下にでかいボール。
紅茶に熱湯をばんばん注ぎ、下においたボールに紅茶が溜まる。それを取っ手付きコップで掬ってまた茶葉にかける。これを幾度か繰り返すと、そこそこ濃くなった。
「こんなもんっすかねぇ、、。煮出してもいいけど渋みが強くなるでしょう?、その渋みを利用する菓子、などには使えると思うけど、クリームはどうかなぁ?、あ、渋みクリームとあんこでどら焼きとかなら行けるかな?」
・・・・「ははぁ、、おもしろいですねぇ、、」
この茶の入れ方は、チャイの入れ方だ。
ここのオーナーは老婦人と一緒の方の教会の神様のほうなんだろう。だからチャイとおなじアチャーの淹れ方を知らないんだろうか。
席に戻ると
「あなたはおもしろいわねぇ、、、この聡明そうなお嬢ちゃんといい、」
何者か聞きたいけど、知り合ったばかりだし、あまり突っ込むもの礼儀に反すると思っているのだろう、ソレ以上の言葉を言わない老婦人。
「旅人です。武国から来ました。」俺
興味をかなり持ったようなので、
農国に入ってからのことを、プスコの武官絡みの件を除いて話した。
かなり興味をもって目をキラキラさせて聞いていた。
明日、よかったら自宅でお茶会したいから招待したい、と言われ、泉さんも了承したので行くことに。
名刺を渡された。
こっちでも名刺はあるのか、というか、まぁ西洋の文化だろうな名刺。だからここにあってもおかしくないか。
・・・・・
「これ、、、あんた、、貴族か?」泉さん
「ええ、公爵ですが、この農国では、この今の私のように、身分は関係なく自由なの。なので、気張らないで、今の服装で気軽に来てね♪」
明日は公爵家ですか、、、
「なんか、はめられたような、、、」泉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます