第38話 中−4 パリダカ


太田、福田、田中、田口の4人が一緒にこっちに着いた。

着いた場所が不幸にも攻国国境付近。

さまよった挙句、攻国内部に進んでしまい、街にたどり着いたところでいきなり捕縛された。

その時に暴れた田中は兵に殴られてぐったりし、それ以降会っていない。


兵の駐屯地みたいなところに連れて行かれ、いろいろ質問された。

彼らは外人みたいな外見なのになぜか言葉は通じた。

そして、3人は別々の場所に送られた。

福田には敗戦後のあの場所で会うまで、どうなってたかわからなかった。

俺も福田も、あれっきり田口に会っていない。


俺は、奴隷商に売られた。使えないと思われたらしい。

その後農地で農奴として働いていた。

地主はそれほど悪くはない奴だったので、、、勿論こっち基準だと、即裁判かその場で処刑されるくらいだろうけど、あっちではかなり良い方だと思う。

しかも賢くはなかったので、収穫量を上げるためと言って、いろいろやらせて、実際収穫を倍近くにし、でも農奴達の待遇を少しずつ改善させていった、奴自身は気づかないように。

その中の数人が、今回俺と来た人間たちだ。今回あの入植地に入った人間は、俺達のみだ。

こんなんでも、あの国に入った中では、かなり幸運だったんだろうな、、、、

なんたって、ここに来られたんだ。

しかも福田に会えた。


実はな、おれらは大学からの仲間達だったんだ。

たまたま最初の授業で一緒だっただけだが、なんとなく気が合って、で田口が入り、田中が入った。

卒業後、就職してもたまーにだが、会っていた。

そのたまたまのときに、なんかあったのかどうなのか、気がついたら俺達は森にいた。

で、今ココ、なわけだ。


大した物語でも無い。小説にしたら誰も読まないほど、何もないつまらん話だ。


だが、

君らを見ていると、この国の者たちを見ていると、、、

なんだかな、、

俺も「やっていいんだ」みたいな感じにさせられる。


福田、変わったろう?

まだ、別れてから今迄何があったのか詳しくは聞いていない。

が、君に拾われ。泉氏にくっついていて、そして今領主様のところにいて、随分変わったらしい。

俺らは最初は全く運がなかった。逆に進めば、最初からこの武国に入れた。

だが、俺らは遠回りし、仲間を半数失い、ぼろぼろになってやっとここにたどり着いた。

俺は幾人かの仲間も得た。攻国にいた唯一の成果だろう。でも大切な仲間達だ。一緒に生死をともにし、死線を乗り越えてきたのだ。


俺は、大恩のある領主様に貢献し、あの入植地を皆が幸せな、そうだな、この村みたいにしたい。


・・・・




俺は太田さんに言ったのか、自分に言ったのか、よく自分でもわからないが、


「もし、俺があの、最初の野原の道で、逆に歩いていたら山に入っていた。人家など無いという話だった。野垂れ死んでいた。

最初に俺を見つけたのがおっちゃん夫妻で幸運だった。最初の村がこの村で幸運だった。最初の国がこの武国で幸運だった。


この国の人達は、いい人を助けるのが好きだ。ひとの幸せを見るのが好きだ。クズは即時処分するのが好きだ。

戦うことが好きだ。侵略はキライだ。だから大量破壊兵器を封印している。多くのものを封印している。

ずっと先を見て、良いものだけを選んでいるからできることだと思う。

他者を見下すこともキライだ。可愛いものが好きだ。モフ☆モフが好きだ。贅沢は求めない。ほどほどが好きだ。

おもしろいものが好きだ。


今の、そんなこの国がずっと続けばいいのに、と思う、、、」



「よかったな。」

太田さんのその言葉が、彼の心からの言葉だと、なぜかわかった。



のんびり歩きながらそんちょ宅に帰る。太田さんは領主様の別荘ではなく、そんちょ宅に世話になるとのこと。

遠慮しているのだ。


「太田さん、馬に乗れますか?」

「乗ったこと無いなぁ、、」

「乗れると便利なので、村長に言っときますね?」

「うん、頼む。、、そうか、、馬か、、」

そそるものがあったようだ。

でも俺、まだ引いてくれる者がいないとのれないからねw乗れるとは言い難いかな、それは。荷物並w



出発までの数日、太田さんは主に馬に乗る練習をしていた。3日目にはもうひとりで村の外を軽く走っていた。

ちょっとショック。文明人のクセに、、、

まさか、福田さんも乗れるんじゃないだろうな??まさか?


・・・・・

太狼、俺をのせてくないかな?変態するとでかくなるよね、俺くらい余裕っぽいよね、できそうだよね。

あ、、でもぴょーんとか跳ねられたら終わりだな俺。


象でもいないかなぁ、、




熊は馬車を間に合わせた。

趣味に加速化されていた。

車輪は少し小さくなっていた。「道が良くなったからな」だと。

では箱が少々小さいのは? 「気のせいだ」、いやあきらかだろ?

床板とか薄いよね?だいじょうぶなの?「骨組みを基本にしているのでOK」。おー!フレーム構造にしたのか、、自分で考えたの?熊すげーな。でも、今回の王都までがテスト走行だってのが気になりますけど?

で、

随分軽くしているのに、なぜ馬が2頭? 「2頭は普通だろ?長距離なんだから」。・・・・・・

・・・・・

・・・・・


出発。

いきなり爆走しだす領主様の馬車。

それに習う俺の載っている試作車!熊が御者!!!「わーっはっはっはっは!!ははははははー!!!」

何熊?領主様の馬車を追い抜こうとしているよ?向こうも張り合っているよ?

領主様、前窓から御者台に出てきているよ!!大笑いしているお!!


ばかだこいつらっ!!


結局、領主様の馬車のほうが重いんで、いくら4頭牽きだといっても、増えれば増えるほどペースを合わせるから馬でさえへんな疲れも貯まる。先にへばったのは領主様の特製馬車。


「よっっしゃああああ!おれのかちぃいいいいいい!!!」

まだ爆走中なのに御者台に立ち上がりガッツポーズの熊。 教えなきゃよかった、、、


泊まった街の酒場で、熊は領主様に酒をおごってもらっていた。



なので、俺は試作車から移動したかったが、誰も変わってくれなかった。まぁ当然だよな、俺だっていやだわw


こいつらそういう気が非常に強いから、箱馬車レースとか開催しそうで怖いよな。

あ?フラグ?いやいやいやいや、、

あ、俺乗らないんだからいいか、、、


後の「パルリ・タカールレース」の発端であった。

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