第21話 もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふはせーいーぎー♪


「もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふはせーいーぎー♪、もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふは神だー♪、もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふは愛だよー♪、もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふは

「せんせー! あたしカタリーナーっ!! 何歌ってるのー?」

カタリーナが駆け寄ってくる。尻尾を出してばふばふ振りながら!

学はもう猫にとってのまたたび状態、最強のトリマー的地位にいた。


「モフ☆モフの神様へのお祈りの歌だよ♪、さあ一緒に!」

「「「「「もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふはせーいーぎー♪、もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふは神だー♪、もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふは愛だよー♪、もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふは最強っ!!」」」」」

子どもたち皆が一緒に歌う。


モフ教、最初の祝詞の誕生であった。


その後、きれいな毛並、毛艶、モフ☆モフ具合が獣人たちにとって重要だという認識が浸透し、獣人達は自分の毛並に注意を払うようになった。そうするとどうだろう?

今迄獣人を見下していた者達でさえ、獣人達と仲良くなりスキンシップをとろうとするではないか。

モフ教は、何の説教もナシに、人間と獣人の垣根を消したのだ。


そのことを予測できるものはいなかった。学でさえも。


それは何も遠い未来のことではなかった。






はじまりは王都に赴任した小館隊からだった。



早朝の王都。

人通りも殆ど無い夜が明けて間もない町中を狼の群れが3頭の騎兵と走り抜けている。

一匹の狼が、ヒュンと小さい路地に飛び込む。騎兵が1人、引き返して来て馬が入らない細いその路地に徒歩で入る。

男が一人建物に持たれて倒れている。

騎士が調べる。

「酔っぱらいだなー。よくやった。深夜組が見つけていないから、それから今の間、精々3時間位。俺が詰め所に連れて行くから、戻っていいよ!」

狼は群れに戻る。



小館隊が王都の警備に加わるようになって、効率が格段に良くなった。

今までは徒歩で警らしなければよく見ることはできなかった。それでも見落としはあった。

が人狼軍団が変態しているときの、嗅覚をはじめ、殺気やその他の感覚を、今のように「日常では無い状態のなにか」を見つけ出すのだ、かなりの速度で走りながら。

広い王都を1時間ほどで走り回り、ほぼ全てを網羅できる。ひとには考えられない効率である。

勿論日中も行っているが、日中は人通りがおおいので、朝や夜中ほどの疾走はできない。


「あら、小館の!これ持ってきな!」

露天のおかみが鳥串を高く6本投げる。と、それぞれがひょいと咥え取る。それが見たくてやっている者も多くなっている。

日中はそれほど異常は無いので、おやつを食べる時間くらいとれるのだ。騎士達も慣れて、出店の多い市場付近で少々休憩を入れる。


「でも、いい毛艶だよねぇ、、見惚れちまうよ、、、」

「おら、モフラーとかじゃないが、あれだけ気持ちよさそうじゃ、モフ☆モフしたがる気持もよくわかるわー」

「おじちゃん、ちょっとさわっていーい?」子供まで。

そういう場合、幼児だけにはしっぽをさらわせてあげる。7−8才くらいの男の子になると、結構いたずらするようになるので、頭やボディのほうだけだ。


小館隊のモフ☆モフは人気なのである。


王都も、東武領都と同様に獣人は多い。

小館隊が警らを始めるようになり、”毛艶”に人々の目が行き始めると、当然獣人達は自分たちの毛艶を気にし始める。小館のそれと、どうしても比較してしまうのだ。


かくして、

王都の獣人達は、オスも含めて皆毛艶に手を入れるようになった。

更に、日常的に変態して街に出る者も多くなった。手入れの行き届いた毛艶の良い毛並を  ”見せびらかしたい” のだ。


そして、ひと達も、多くの毛艶の良い毛並を日常的に目にするようになり、毛艶を見る目ができてきている。

「あれはよい艶だ、、何か塗っているのか?」

「いや、あの艶の出は、食べ物だろう、、」

など、見事な者達は、町中で見る者たちから視線を集める。

「それがたまらん!」当人

だそうだ。


面白くないのが爬虫類系の獣人達。

だがそれはそれ、鱗を磨き上げ、食べ物をいろいろ試し、オイルなどもいろいろ試し、

「皮の艶、張り」など、ひと目見て「良さ」がわかるくらいにまでになった者も出始めた。

「おお!あのリザ、素晴らしい鱗の輝きだな!!なに食べてりゃああなるんだ?」

リザードマンは尻尾を切り落としても生えてくる。「ぜひ譲ってくれ!!」と懇願される者も出てくるくらいだった。


勿論王都なので外国から来た者達も多い。犯罪者や予備軍も少なくない。

他では見られないくらいに良い毛艶、鱗、を持つ獣人達。「どのくらいの値がつくことか!!」と、誘拐されることもある。

が、数時間置きに警らしている小館隊が見逃すはずがなく、全て捕え、全員処刑されている。

被害者の命や人生に大きな危害を意図的に加える犯罪は、全て死刑だ。被害者が加害者にそれをさせる原因を意図的に作った場合、双方処刑。公平だ。




小館隊の一人が、学の家に寄って神棚によくお参りをしていた。

彼は王都に来ると、その拝む所がないのでなんとなく心もとなかったので、小館隊が駐屯している王城騎士隊本部駐屯地の中にある小館隊駐屯部大食堂にソレを作った。

人狼達は皆それを知っているので、あればあったで「うれし」かった。ので、皆それぞれ勝手に拝んでいた。


それをたまたま騎士隊大隊長が見て

「これは?」

「はい、これはモフ神様です。われわれと東武領主様を引き合わせてくれ、われわれ人狼達の生活と幸福を見守ってくださる神様です。毛艶にも気を使ってくれると聞きます」

まぁ、ガクがカタリーナ達に言った言葉の真意が大体間違いなく伝わっている

「・・ほう、、、」


大隊長が家で、たまたま

「あなた、あなたのところの部隊の狼達って、毛並良いわねぇ、、、王都の獣人達も努力してかなり良い毛並になったけど、どうしてもあそこまで艶モフいかないんだって。相談されてねぇ、、、」

「ああ、あれじゃないか?モフ神様、、」

「モフ神様?」

「うん、こんなかんじで、あんなかんじの神棚をだな・・」


主婦のネットワークは凄い。

数日のうちに、獣人各家庭にほとんどモフ神様の神棚ができた。

その後、獣人有志により、中央公園端に、祠が作られた。


小館隊ローテによって、モフ神様の歌を覚えた者達が王都に来たときから、モフ神様の歌は王都の獣人のみならずひとの子どもたちにも歌われ始めた。

子どもたちはモフ☆モフが大好きなのだから!!



「モフ☆モフの神様へのお祈りの歌だよ♪、さあ一緒に!」

「「「「「もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふはせーいーぎー♪、もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふは神だー♪、もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふは愛だよー♪、もっふもふー♪もっふもふー♪もっふもっふは最強っ!!」」」」」



学もカタリーナも、まだそれを知らない。

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