とりあえず全部花粉のせい

 天気のいい春の日。高校生の娘二人はもう少しで学校が始まるので、その前にと並んで靴を買いに行った。冬の終わりからそれぞれに違った変化があったようで、双子でいつも一緒で同じように過ごしていたからかお互いに複雑な思いもあったようだけど、励ましあえるといいなと思う。こればかりは親とは言え二人の間でのことだから、そうとやかく口ははさめない。

「お昼ごはんはどうしようかしらね」

 春休みが始まってからはだいたい双子の両方かどちらかが一緒に昼を食べていたけれど、そういうわけで今日は一人だ。こんなにいい天気だから外に食べに行こうか? いや止めよう。テレビの花粉情報を見て即座に取り止める。こんな日に外出したら鼻と目がやられて食事どころではない。

 冷蔵庫を覗くと、まあ何もない。なんでだっけ? 食材はある。今週の朝晩の食材はあるものの、すぐ食べられそうなものが何もない。渋々帽子とマスクを装着してコンビニに向かう。

 外はやはり気持ちのいい陽気で、穏やかな風と穏やかな日差しが柔らかく射している。これで花粉が飛んでなきゃな。せっかくの陽気を楽しめず、すさんだ気持ちでコンビニに到着すると春だから桜餅が売っていた。そして隣には柏餅もあった。

「みそあん!!!!」

 なんと柏餅のみそあん入りのものが置いてあった。すごい。嬉しい。わたしは柏餅はみそあん派なのだ。しかしなかなか売っていない。こしあんと粒あんは割と時期を問わず和菓子屋さんに置いている。みそあんはどうしたことか柏餅のシーズンと思われる4月からGWまでしか置いていない。みそあん差別だ。だからみそあんの柏餅を見かけたら、素早く購入するし、販売されているひと月の間に1年分食べるようにしている。

「お願いします」

 レジでお昼ごはんとみそあんの柏餅をあるだけ買って店を出た。

 花粉はまだ飛んでいる。しかし往路とは気分が打って変わって小躍りしそうな楽しい気持ちで帰途に就いた。今年もみそあんの時期が来たのだ。落ち込んでいる場合ではない。



こちらの更新は今日で終わりとして、明日以降は「小説家になろう」の方で続けていきます。カクヨムで呼んでくださった方々、ありがとうございました。

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