最近風邪流行ってるらしいよ
風邪、大丈夫? 西浜さんはそう優しく聞いてくれる。天使かな? などと俺が幸せな気持ちになっていると未吉が風邪流行ってるらしいけど、逆に流行らないのっていつだ? などとのんきなことを言っている。
ここは例によって友人の未吉と西浜さんが2人で住んでいるマンションで、先日西浜さんにもらったカレーの入れ物を返すのと未吉に仕事の確認がありお邪魔している。季節の変わり目って風邪をひきがちという雑談が冒頭の会話につながった。
「まあ、風邪って引くときはいつでも引くしな」
「忙しいときに限って引くんだよね。あ、でも景と住んでからあまり風邪引かないなあ」
「それ完全にただの不摂生じゃん」
俺が呆れかえると未吉はそれだ! と笑った。気づいてなかったのかよ。西浜さんも笑いながら香は自分のことにあまり頓着しないからと言う。未吉香とは大学の時からの友達だが、未だにそういうところは変わらないんだなと嬉しくなるより呆れた。
大学の時から未吉は夏でも冬でも同じような服装で一部の連中からは変温動物などと言われていたし、一応きれい好きではあるようで、風呂とかはちゃんとしていたらしいけど、それ以外の自分に関することがとにかく雑だった。食事を忘れたりサプリで済ませたり、寝るのを忘れたり逆に力尽きて寝続けたりと、本当に人間生活が雑な女だった。ということを西浜さんに言うと「それ、高校の時からですよ」という驚愕の返事が返ってきた。
「え、お前よくここまで生きてたな?」
「なんとかなるもんよ」
何かスゲー雑な返事が返ってきて、むしろ未吉らしくて笑っちゃうけど、それを何とかしてきたのって俺とか西浜さんでは???? ということに気付いてしまって笑えない。
「でもなんか助けたくなりません? この子」
「なー、なんでだろうな」
「人徳かな」
「自分で言うなし」
へらっとする未吉だが俺はそんな友人が嫌いではない。むしろ大事だし信用も出来るから仕事だって頼める。西浜さんもそうなのだろう。未吉は自分については雑だけど、自分以外の誰かを疎かにしたり粗末にしたりは絶対にしないのだ。
「そういえば」
いいタイミングで未吉が声を上げる。
「こないだ南雲くんに頼まれてた時代考証終わってるよ。だいたいオッケーだけど、一か所いまいちだから確認して」
「ありがとう。助かる」
そのまま俺と未吉は仕事の話に移り西浜さんはそっと席を外した。この空気感がすごくよくて、このまま混ざれるんじゃないかと誤解してしまいそうだった。
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