新しいスニーカー、買いに行こう

 先輩の大学を見に行くにあたって新しい靴を買いに行くことにした。双子の姉妹である紺乃を誘うと二つ返事でOKだったので早速家を出る。

「なんでいきなり靴?」

 並んで歩きながら紺が疑問の声を上げる。

「バイト中に自分の靴が汚いなって思ってさ。よく見たら他の人たちはちゃんときれいな靴で働いてるんだよね。確かに自分が小汚いのに他所をきれいにしても説得力ないなって思ったのよ。あと先輩の大学にお邪魔するのに身ぎれいにしとかないと先輩に悪いかなって」

 紺はふうん、と納得したような声を出しているけれど顔はあまり納得してなさそうだ。でもこういう時にうだうだ説明しても余計にこじれるだけだと思うので何も言わないでおく。黙って並んで歩いているうちに駅前のショッピングモールに到着する。シューズショップまで移動して品定めをする。

「やっぱり動きやすくて足にしっかり固定できるのがいいなあ」

「女子高生の靴選びとは思えないセリフだ」

「そりゃ学校に履いていく靴じゃないからね。バイト用なんだからバイト中に使いやすいものにするよ」

 何気なく答える。紺はやはりそっかー、とサラッと流す。

「紺は? どういうの探してるの?」

「うーん。どうしようかな。あんまりちゃんと考えてない」

「じゃあぶらぶらしてみてピンときたものを見てみよう」

 そういうことは自分で見つけなくては駄目だと思うから。

 あれこれ見てわたしは結局ハイカットのホワイトグレーのスニーカーにした。足首がしっかりしているから長時間働いても足が痛くならなそうだ。紺はまだ何か悩むように店内できょろきょろしている。

「せっかくだから全然違うのにする?」

「え?」

「わたしのとさ全然違う靴。めちゃくちゃ可愛くて見てるだけで気分上がっちゃうような靴。どうかな」

 紺はしばらくあっけにとられていたけれど、少しして大きく頷いた。

「そうしよう。藍が羨ましくてしょうがなくなるような、めちゃくちゃかわいい靴探すよ」

 2人ではりきって紺のための可愛い靴を探す。時間をかけてあれやこれや見て、結局わたしの買ったハイカットスニーカーの色違いだった。

「それでいいの?」

「うん。これ、めちゃくちゃ可愛いじゃん。配色がいいでしょ」

「うん。そうだね。紺にすごく似合うと思うよ」

「ありがと。さっき藍が買った靴もシンプルでさっぱりしてて藍が履いたらきっとかっこいいよ」

 そう、紺が笑って言った。きっとこれで彼女は大丈夫だ。わたしも気にせず好き放題しよう。

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