診断
医者 「お次の方、吉川さん。どうぞー」
吉川 「失礼します」
医者 「どうなされました?」
吉川 「なんか胸の辺りにですね、圧迫感みたいなものがありまして」
医者 「そうですか。はい。では二三伺ってよろしいですか? 当院を選んだ理由は?」
吉川 「え? あの、近かったからですけど」
医者 「そうですか。学生時代に特に打ち込んだものとかあります?」
吉川 「学生時代? え? それがなにか?」
医者 「ないですか?」
吉川 「いや、しいて言えばダンスサークルにいましたけど」
医者 「なるほど。そこでなにか学んだこととかありますかね?」
吉川 「え? あの。胸の圧迫感は? 診療ですか、これ?」
医者 「ええ。まず一つずつね。自分自身を動物に例えるとしたら何でしょう?」
吉川 「それを聞いてどうするんですか? ゾウだったら腎臓が悪いとかわかるんですか?」
医者 「みなさんに伺ってますので」
吉川 「じゃぁ、ボノボですね」
医者 「はい。わかりました。では何か疾患が見つかって当院に通院することになった時、やってみたいこととかありますか?」
吉川 「やってみたいこと? それは治療ですよ」
医者 「なるほどなるほど。他の方も皆さんそうおっしゃるんですよね」
吉川 「え? ダメだった? なんか点数の低い返しをしてしまった感がでてるんですが」
医者 「では当院としてあなたを治療するメリットをアピールしてください」
吉川 「メリット!? なんで? 医者ってそういうものだっけ?」
医者 「この不況の折、当院での治療を希望してくださる方が沢山いらっしゃるんですよ。その方々よりも優れてる点などをアピールしていただければ」
吉川 「そういうシステムなの? 面接的な? 診療はしてくれないの?」
医者 「これも一環で」
吉川 「はぁ。結構時間には厳しいので、予約した時間に遅れたりはしないと思います」
医者 「それはいいですね。当院としては望んだ人材です」
吉川 「その程度で? 他の患者は時間守らないの? 他の人は何をアピールしてたの?」
医者 「そういうのはお伝えできないのですが、あくまで一例としては執行猶予中なのであんまり暴力は振るわないとアピールされた方もいました」
吉川 「最悪なのいるじゃん。あんまり暴力振るいませんってむしろマイナスのアピールでしょ」
医者 「リーダーシップとかは自分ではあると思いますか?」
吉川 「リーダーシップが? 必要? 患者として?」
医者 「やっぱり待合室などでそういう患者さんがいるとグッと生産性が上がりますからね」
吉川 「そんな患者嫌じゃない? 待合室で仕切ってるやつ。ネットに晒されて炎上するタイプですよ。だいたい病院で生産性ってなに?」
医者 「最後になにかご質問等ありますか?」
吉川 「胸の圧迫感は!? そのことだけを知りたいんですけど!」
医者 「そうですね。また追ってこちらの方からご連絡させていただきますので」
吉川 「今わからないの!? 病院なのに。このワンクッションはなんなの? この時間で診察してよ」
医者 「本日はありがとうございました」
吉川 「帰れってこと? まだ診てもらってないのに!」
医者 「吉川様のご健勝をお祈り申し上げます」
吉川 「祈るんじゃねーよ!」
暗転
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます