期間限定
藤村 「いらっしゃいませー。こちらからご注文お願いします」
吉川 「えっと、なんかCMでやってた期間限定のバーガーを」
藤村 「お客様、いつどこでCMをご覧になりました?」
吉川 「え? どこだっけな。それわからないとダメなの?」
藤村 「その期間によって期間限定のバーガーが違うので」
吉川 「あ、そんなに色々あるの? 昨日見たんだけど。なんか大きくて2枚の」
藤村 「なんか大きくて2枚のバーガーですか?」
吉川 「そんな、そのまんまの名前じゃなかったと思うんだけど」
藤村 「申し訳ございません。そちらは期間のほうが終わってしまいまして」
吉川 「あ、終わっちゃったの? ギリギリだったんだ」
藤村 「ほんのさっき、終わっちゃいました。材料は捨てるほど余ってるんですけど、期間終わっちゃったので出すとポテトの揚げ油をかけられるんですよ」
吉川 「なにその拷問。お店大丈夫?」
藤村 「出さなければかけられませんから。大丈夫です」
吉川 「厳しいね」
藤村 「ただその他にも期間限定バーガーがありますが」
吉川 「他にもあるの? どんなの?」
藤村 「大きくて3枚のバーガーです」
吉川 「あ、全然そっちの方がいいじゃん」
藤村 「4・3・2・1……」
吉川 「じゃ、それのセットで」
藤村 「すみません、たった今それも終わっちゃいまして」
吉川 「今すすめてたじゃない? どういうこと? からかってるの?」
藤村 「ちょうど終わりのカウントダウンのタイミングで」
吉川 「今のカウントダウンそういう意味なの? 秒刻み? 逆にすごいな」
藤村 「他に期間限定ですとちょっとお待ちいただかないと」
吉川 「あ、なに? 今から作るから時間がかかる的な?」
藤村 「いえ、40分後にその期間が始まりますので」
吉川 「徹底管理だな。意味あるのその期間は。前倒しできないの?」
藤村 「前倒しすると揚げ油をぶっかけられます。お客様も」
吉川 「こっちも? 嫌だそれは。絶対に。そっか、期間限定がちょうどない期間なのか」
藤村 「ただ現在、星座限定バーガーのキャンペーンも行っております」
吉川 「なに星座限定って、どういうこと?」
藤村 「おうし座の方にはビーフバーガー、うお座の方にはフィッシュバーガー、かに座の方にはクラブバーガー、ちなみにお客様は何座ですか?」
吉川 「おとめ座ですけど」
藤村 「ひぃぃぃっ! 殺人鬼! 助けてー!」
吉川 「いや、別にとって喰いやしないよ。聞かれたから答えただけでしょうが」
藤村 「本当ですか? 怖い。ちょっと怖いんで、ご注文を繰り返させていただきますね」
吉川 「別にそれは怖くなくても繰り返せよ。繰りかえるから怖くなくなるって効果ないだろ」
藤村 「あ、ただいまちょうど期間限定のドリンクの方を……」
吉川 「あるの? そういうのも」
藤村 「考えてました。あったらいいなって」
吉川 「別にそれは報告しなくていいよ。いちいち考えてたこと教えてくれる店員は煩わしいでしょ」
藤村 「あとキッズメニューですとおもちゃの方が選べまして、こちらの127種類の中から一つ」
吉川 「多いな。選ぶだけで大変でしょ」
藤村 「選べるんですが、今もう一番人気のないこの気持ち悪いヘドロみたいのしか残ってないです。いかがですか?」
吉川 「いらないよ。それを聞いてワクワクする人間いないよ」
藤村 「でもここにあっても気持ち悪いんで」
吉川 「押し付けようとするなよ。あくまでサービスだろ」
藤村 「あ、お客様。ちょうど期間限定のバーガーが開始しました」
吉川 「え? 大丈夫? カウントダウンは?」
藤村 「大丈夫です。まだ2分ほどありますから落ち着いてください」
吉川 「それにしても短いな。まぁ、大丈夫か。あの大きいやつでしょ? CMでやってた」
藤村 「まさにそれです。お客様の望んだ通りの。気持ち悪いヘドロみたいなのも付きません」
吉川 「そうだな、わざわざ言わなくてもいいけどな。じゃあそれを」
藤村 「あ、ちょうど私のバイトのシフト終わりましたので帰らせてもらいます」
吉川 「え、ちょっと待ってよ。注文の途中で帰らないでしょ、普通」
藤村 「期間限定のバイトなんで」
吉川 「バイトって普通そういうもんだけど。え? 代わりの人いないの?」
藤村 「大丈夫です。そのうち来ると思います。それでは失礼します」
吉川 「間に合わないじゃん、また期間……」
暗転
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