不謹慎

吉川 「どっちか白黒つけようじゃねぇか!」


藤村 「あ、吉川さん。そこのセリフ、白黒はちょっとまずいですね」


吉川 「え? そうなの? まずいって?」


藤村 「白黒はお葬式みたいな不吉なイメージがあるのでちょっとこの場合不謹慎ですね」


吉川 「あー、そうなんだ。色々気を使う時代だね」


藤村 「なんでおめでたく赤白つける感じにしてもらえます?」


吉川 「そんな歌合戦みたいな勝負でいいの?」


藤村 「すみません、不謹慎なんで」


吉川 「わかった。どっちか赤白つけようじゃねぇか。相当自信があるみたいだからな」


藤村 「あ、吉川さん。そこもすみません」


吉川 「赤白って言ったよ?」


藤村 「その後、自信っていうのが地震を思い出させてちょっと不謹慎になっちゃうんで」


吉川 「いや、言うでしょ? 自信があるって。地震とは関係なく」


藤村 「すみません、不謹慎になっちゃうんで」


吉川 「じゃ、なんて言えばいいんですか。自信は自信でしょ」


藤村 「そこはやる気満々とかどうでしょう」


吉川 「やる気満々なようだなって、意味合いがちょっと変わりません?」


藤村 「すみません、不謹慎になっちゃうんで」


吉川 「もうなんでもそれだな。難しい時代だよ、本当」


藤村 「お願いします」


吉川 「相当やる気満々なようだな。だったら勝負だ、このロシアン・ルーレットでな」


藤村 「すみません吉川さん」


吉川 「なに!?」


藤村 「ロシアンが今非常に微妙なのでできれば違うルーレットにしてもらえたら」


吉川 「違うルーレットってなんだよ。ロシアン・ルーレット以外のルーレットじゃ意味変わるだろ」


藤村 「情勢的に不謹慎なんで」


吉川 「そもそも話が不謹慎な話なんだよ。言葉尻だけ変えてもしょうがないだろ」


藤村 「じゃ、ピーって入れることにします」


吉川 「それだと変な意味合いでてきちゃうだろ。なんかエッチなこと言ったと思われちゃうじゃん」


藤村 「どうせピー入れるんだからタマキン・ルーレットでもいいですよ」


吉川 「ダメだよ。なんだよ、タマキン・ルーレットって。ピーって入れたいだけじゃねぇか。存在しない言葉をピー入れたいがために創作するんじゃないよ」


藤村 「でも不謹慎なのよりいいんで」


吉川 「一発しか銃弾の入っていないリボルバーを順番に撃ち合うゲームって言いかえれば?」


藤村 「あー、それなら大丈夫です。ただ撃ち合うっていうのが物騒なんで、そのあとのゲームをパーティーゲームと言い換えましょう」


吉川 「パーティーゲームって言っちゃうと楽しげになっちゃうんだけど」


藤村 「でも不謹慎だとクレーム来ちゃうんで」


吉川 「一発しか銃弾の入っていないリボルバーを順番に撃ち合うパーティゲームで勝負だ! でいいの?」


藤村 「大丈夫ですね」


吉川 「本当にいいのか? じゃそれはそういう感じで、先のシーンはダメじゃない?」


藤村 「どこがですか?」


吉川 「ほら、ここ。貴様ぶっ殺すぞ! ってセリフ」


藤村 「……?」


吉川 「え? なんでスルーなの? ぶっ殺すだよ?」


藤村 「あー、ひょっとしてブロッコリーを連想させるということですか? 大丈夫です。ブロッコリーは不謹慎じゃないんで」


吉川 「違うよ。殺すは不謹慎でしょうが」


藤村 「それは日常語だし問題ないんじゃないですかね」


吉川 「日常語なの? 自信はダメだったのに?」


藤村 「地震はほら、被災者の方もいることですし」


吉川 「ぶっ殺すは被害者いるだろ」


藤村 「死人に口なしですから」


吉川 「即物的ー」



暗転

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