コンサル

吉川 「もはや赤字続きで、どうしたらいいのかわからなくなり、一つ手を貸していただきたいと思い相談させていただいたんですが」


藤村 「わかりましたコン。まかせてくだサル」


吉川 「なんですか、その語尾。ふざけてるんですか?」


藤村 「はい。実はふざけました。なんかコンサルっぽいことしようかなぁと思ったんですが何も思いつかず。しかも結構恥ずかしかったんでもう二度としません」


吉川 「そうですね。二度としないでほしいです」


藤村 「ではまず手始めになんですが、炎上マーケティングでいきましょうか」


吉川 「初手で? 嫌なんですけど、なんで炎上マーケティングなんですか?」


藤村 「はい。皆さんそう言われます。ただ、スティーブ・ジョブズもこう言ってるんですよ。それを踏まえて、あえて挑戦してみるべきではないかと」


吉川 「スティーブ・ジョブズがなんて言ってるんですか?」


藤村 「こう言ってます。あの……。まぁ、色々言ってます。特にマーケティングのことはいっぱい言ってます。なのでそれを踏まえてですね」


吉川 「具体的になんて言ってるんですか? なにも伝わってこないんですが」


藤村 「だいたい言ってますよ、言いそうなことは。それは各自調べていただくとして。それを踏まえてですね」


吉川 「踏めないよ。なんて言ってるんだよ。ジョブズが炎上マーケティングを肯定してるの?」


藤村 「まぁそうですね。そうと取れなくもないことを言わなかったとも限らないとは言い切れない感じではありますね」


吉川 「なんだよ、そのなんもかんもぼんやりしてる明言は」


藤村 「特にお手軽なのが入る系ですね。冷蔵庫に入ったり、食洗機に入ったり、色々入り込むと話題になります」


吉川 「話題になっても店に来ないでしょうが」


藤村 「ただまだ一度も揚げ物をするフライヤーの中に入った人はいないので、そういう意味ではフロンティアになれるかと」


吉川 「なりたくないよ。文字通り炎上というか大火傷だろ。なんの得があるんだよ」


藤村 「まずは損とか得とか、そういう目先のことは脇に置いておきましょう」


吉川 「急にコンサルっぽさだすなよ。嫌だよ炎上マーケティングだけは」


藤村 「そうなるともう最後の手段しかないですね」


吉川 「次で最後なの? 炎上マーケティングの次で? 実質一本しか武器仕込まずにやってきたの?」


藤村 「ただこれは諸刃の剣なので……」


吉川 「初手で炎上マーケティング勧めておいて、なんで怖気づいてるの?」


藤村 「あ、炎上マーケティングはもう刃だらけというか、ウニみたいなもので持った人全員怪我するやつですから」


吉川 「ウニを持ってくるなよ! せめてなんらかの武器にしろよ」


藤村 「なのでご提案です。あるコンセプトというのを全面に押し出してはどうでしょう?」


吉川 「なに? コンセプト?」


藤村 「そうです。執事がいる店とか、ゴリラがいる店とか、地獄を模した店とか、ジャングルを模した店とか、中世の世界観とか、マウンテンゴリラのいる山とか、クロスリバーゴリラのいる川とかですね」


吉川 「なんか提案にゴリラが多いな! ゴリラめいてるぞ? 選ばないからな、ゴリラは」


藤村 「ニシローランドゴリラと子育てができる店でも?」


吉川 「選ばないよ! なんでとっておきみたいな顔して出すんだよ、それを。全然魅力ないからな」


藤村 「ひょっとして。ウータン派ですか? 奇遇ですねぇ! 実は私も……」


吉川 「奇遇じゃないよ! そんな派閥があったことすら初めて知ったよ。大型類人猿に一切興味ないよ。ただコンセプトってのはまだまともな意見に思える」


藤村 「ですよね。ちょうどこの店の感じを活かして、こういうのはどうですかね。コンサルがいる店」


吉川 「どういうこと?」


藤村 「つまり私のようなコンサルが常に相談に乗ってくれるという、もうこのまんま今からでもやれるという企画で」


吉川 「あなたを? ここに?」


藤村 「私だけじゃなんなんで、他にも何名か来てもらって」


吉川 「あぁ、そうなの。あなただけでは不安だったけどそれならねぇ。それが最後の手段なんでしょ?」


藤村 「最後ですね」


吉川 「そうかぁ。じゃ、それを試してみるかな」


藤村 「わかりました。じゃ、急いで何頭かサルを集めてきます」


吉川 「待てよ、サル諦めてないのかよっ!」



暗転

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