出られない部屋

藤村 「はっ!? ここは一体どこなんだ?」


謎声 「ようこそ。ここはセックスをしないと出られない部屋です」


藤村 「な、なんだって! 一体どういうことだ?」


謎声 「セックスをしなければこの部屋から出ることはできません」


藤村 「ムフッ。そうかー。わかった。しょうがない! そういうシステムならばしょうがない。連れてこられた以上は従うしかないもんな」


謎声 「なんかニヤニヤしてません?」


藤村 「してないよ。シリアスだよ。ハムレットと同じくらいシリアスな顔してる。むしろ苦悩してるよ。本来そういうことはお互いの気持ちを確かめあってするべきことだし。よくないよ。人の尊厳を踏みにじるひどい行為だよ」


謎声 「言われてみればそうですね」


藤村 「反省はあとでもできる! なっちゃったもんはもうしょうがないから、今回で終わりにしよう。今回はしょうがないから俺は受け入れるよ。嫌だけどね? 嫌だけどしょうがないことだからこれは。やるよ」


謎声 「確かに軽率な行動でした」


藤村 「いや、ちょっと待って! 軽率は軽率。だけど、人は過ちを犯す生き物だから。それを責めてもしょうがない。今回限りできっちり終わらせよう」


謎声 「扉の鍵を開けます」


藤村 「待って! そういうのよくないよ。確かに過ちは過ちだけど、一度やると決めたことを中途半端に撤回するのはダメ。やりきって、それから反省すればいいから。中途半端なままでやめると、反省も中途半端になっちゃう。俺の方はもう気にせずに。背負うよ、俺も。お互い様ということで」


謎声 「わかりました。ではどうぞ」


藤村 「……ん? どうぞって何かな? いないんだけど、相手が」


謎声 「……」


藤村 「おーい! 相手がいないよ? ダメでしょ、そこはきちんとやらないと。こういうのは事前の用意が一番大事なんだから。そういう雑な仕事されると閉じ込められる方も困るよ。ちゃんと相手がここに来るようにしてもらわないとさ。こっちも遊びでやってるわけじゃないんだから。お互いに真剣にやらなきゃ。プロでしょ? 恥ずかしくないの? ほら~、扉の鍵も開いてる。なにこれ? ダメだよこういうのは。次の部屋は? 違う人が来るの?」


謎声 「……」


藤村 「おーい。どうした? 大丈夫か? なにかトラブル? こっちはこっちで相手さえ来てくれればなんとかやるから平気ですよ? もしもーし。あれかな? ちょっと強く言い過ぎたかな? ごめんね。こっちも真剣にやってたからさ。熱が入っちゃったけど、別に責めてるわけじゃないんだよ。失敗とか恐れずにさ、リラックスしてやっていこ? どうかな? 相手は元々いるわけでしょ? その人も一人で待ってたら寂しいと思うんだわ。こういうのはお互い様だから。俺はわかるんだよね、そういうの。結構ピンと来るタイプだから。だからとりあえず会って、それからにしない? なんだったらこっちで流れ作っておくから。セッティングだけしてもらえればあとは流れでバーってできちゃうから。ほんと、そっちに迷惑かけないよ? 任せてくれればいいから。あれ? また鍵あいてるじゃん」


謎声 「……」


藤村 「ちょっと困るよ。このまま出ちゃうよ? 逃げちゃったらもう大変なことになるよ? 俺だってさ、いつまで黙ってられるかわからないんだから。いい? 次の部屋にいるんでしょうね? 相手が。頼むよ? これでもしいなかったら俺は本当に出るところ出るからね? 悪いけど。冗談で済むこととすまないことがあるから」


吉川 「あ! 人だ!」


藤村 「ハァハァ……。あなたが相手ですか?」


吉川 「そうだ」


藤村 「わー!」


吉川 「クソッ! なんて力で締め付けてくるんだ。ぶっ殺してやる!」


藤村 「なんでっ!?」



暗転

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