節分
吉川 「コンビニで季節を感じることが多いよね。特に節分とか」
藤村 「恵方巻きはすっかり季節限定商材みたいになったな。そういう食品業界が裏で糸を引いてるんだ」
吉川 「長いものならなんでも恵方巻きの亜種として売れるらしいよ。イタリアン恵方巻きとか」
藤村 「そういうのに躍らされるのは滑稽だよ。そもそも節分ってのは四季節が始まる前日だから。2月の節分は立春の前日。だから年に四回ある。つまり我々はまだ3回節分チャンスを残してるわけだ」
吉川 「節分に対してチャンスだと思ったことは一度もないけど」
藤村 「人間ていうのは本能的に豆を撒きたいものなんだよ。豆があれば撒きたい。餅があればつきたい」
吉川 「人間全体を巻き込まないでくれない? 個人的にやりたいなら眼をつぶるけど」
藤村 「鳩や鯉に餌をあげたいと思うだろ? あれも豆撒き本能の一種だから」
吉川 「それっぽいこと言ってるけど、それっぽいだけだな」
藤村 「棟上げ式では餅を撒きたい! 撒きたい気持ちは抑えられない!」
吉川 「それ一部の地域だけじゃないの?」
藤村 「そんなことはない。世界でも撒きたい本能というのは抑えられずに物語として語り継がれてる」
吉川 「聞いたことないよ」
藤村 「豆を撒くべきか、撒かざるべきか、それが問題だ。その悩みを描いたシェイクスピアの有名な作品がかのマクベス」
吉川 「マクベスそんな話じゃないよ!」
藤村 「撒くべしの活用形がマクベスだから」
吉川 「読んだことないでしょ。豆でてこないよ」
藤村 「あー、君は翻訳されたのしか読んでないのか」
吉川 「嘘だろ? 原典は豆撒きの話なの?」
藤村 「シェイクスピッピはそう言う人間の機微を描くのが上手いから」
吉川 「彼ピッピみたいに言うなよ」
藤村 「だから立春の節分だけ豆を撒くなんてのはもったいない。何もわかってない。ほぼ撒いてないようなものだから」
吉川 「いや、撒いてるだろ」
藤村 「もっと撒けばいいんだよ。立夏の節分も立秋の節分も! 食品業界が金儲けのために割り込んでくる前に!」
吉川 「ちなみにそれはいつなの?」
藤村 「立夏の節分は5月4日、立秋の節分は8月6日だ」
吉川 「じゃ、その時にも豆を蒔こうよ。つきあうよ」
藤村 「俄然乗り気になったな」
吉川 「いや、それほど乗り気じゃないけど」
藤村 「ちなみに立春の節分は炒った大豆を撒くことになってるので、アレンジをして立夏では茹でた大豆を撒くことにしよう」
吉川 「いや、ダメだろ!」
藤村 「大豆は茹でても美味しいぞ?」
吉川 「季節的にヤバいだろ。納豆になっちゃうぞ」
藤村 「くそぉ! また裏で糸を引いてやがるのか!」
暗転
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