マリッジブルー

藤村 「吉川、結婚するんだって?」


吉川 「あ、うん」


藤村 「なんだ、その浮かない顔は。ははぁ~ん。さては、アレだな?」


吉川 「アレって?」


藤村 「なんだっけ。マリッジ……」


吉川 「あぁ。マリッジ……」


藤村 「マリッジ地獄だ」


吉川 「マリッジブルーだよ! なんだ、その究極に救いようのない名前は」


藤村 「そのマリッジブルーになってるんだな」


吉川 「いや、そういうわけでもないけど」


藤村 「どうせアレだろ? 結婚することになって、独身時代になにかやりのこしたことはないかとか悩んでるんだろ?」


吉川 「まぁ、そんなところかな」


藤村 「カーッ! 甘いなぁ。甘すぎるよ。そんなのマリッジブルーじゃないよ。マリンブルーだよ」


吉川 「いや、マリンブルーじゃないと思うけど」


藤村 「そんなのね、俺に言わせれば贅沢な悩みだよ」


吉川 「そうだと思うけどね」


藤村 「だいたい結婚なんて形式だけなんだから。やりたいことがあればやればいいんだよ」


吉川 「でもさ、これから家庭を持つとなると」


藤村 「そりゃ大変だよ。それに比べて俺の自由なことと言ったらないぞ。ノーパンで街だって歩けちゃう」


吉川 「別にそんなことはしたいとも思わないけど」


藤村 「あのドキドキハラハラ感といったらないぞ。なんせ、こっちは防御力0だからな」


吉川 「別にパンツに防御力はないよ」


藤村 「あと、あれもやり放題。ドラッグとか」


吉川 「それはやっちゃダメだよ! 独身とか関係ないよ」


藤村 「効くぜー。バファリン」


吉川 「そんな穏やかな効き目ののドラッグかよ」


藤村 「半分は優しさだからな。一人身が寂しい夜なんか、バファリンを抱いて寝る」


吉川 「根本的に使い方を間違えてる」


藤村 「あと、風俗にも行き放題」


吉川 「それは別に興味ない」


藤村 「ある意味、行き放題でイキ放題」


吉川 「シモネタかよ。いいよ、勝手に放題してろよ」


藤村 「あとそうだなぁ……空も飛び放題」


吉川 「飛べない」


藤村 「ほら、俺は子供の心を持ち放題だから」


吉川 「いくら放だったって飛べない」


藤村 「夢も見放題」


吉川 「そんなの結婚しても見れる」


藤村 「グフフ……もう、食べられなーい」


吉川 「美味しい関係の夢だ」


藤村 「もう、食べられませんて。シリカゲル」


吉川 「それは最初から食べられないよ! 書いてあるだろ、食べられませんて」


藤村 「あとはねー。網戸も開け放題」


吉川 「急にしょぼくなってきた」


藤村 「似てない物まねもし放題」


吉川 「それはちょっと迷惑だ」


藤村 「こんばんは、松平健です。チャチャチャ、マツケンダ~ン~ス~♪」


吉川 「似てないと言うよりも間違えちゃってるもん」


藤村 「あと節水もし放題」


吉川 「全然放題じゃないじゃないか。むしろ控えてる」


藤村 「とまぁ、こんな話もし放題なわけだ」


吉川 「なんというか、まったく羨ましいと感じなかった」


藤村 「そんなんだからダメなんだよ。まだまだ子供だからこの趣向を楽しめないんだな」


吉川 「もう大人だよ。結婚するし」


藤村 「いや、マリッジブルーになってるようじゃ、まだまだ青いよ」



暗転

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