婚約
吉川 「良子」
良子 「なぁに? 深刻な顔して。便秘にはいちぢく浣腸が効果的だよ」
吉川 「いや、便秘じゃない」
良子 「下痢なら正露丸」
吉川 「そうじゃない。シモ関係じゃないんだ」
良子 「言っておくけど、シモ関係じゃないなら良子は相談に乗れないよ?」
吉川 「なんでシモ限定なんだ。そうじゃない。これを受け取ってくれないか?」
良子 「こ、これ」
吉川 「うん」
良子 「すごい手触りのいい箱! ベロア素材ね! こんな手触り欲しかったんだー」
吉川 「いや、箱じゃなくて、中身」
良子 「こ、これ」
吉川 「うん」
良子 「これってひょっとして」
吉川 「うん」
良子 「翻訳こんにゃくっ!?」
吉川 「違う! 婚約指輪」
良子 「ぎょへー! 婚約こんにゃく!?」
吉川 「どう見ても、こんにゃくじゃないだろ」
良子 「あら、どうしましょ。どうしましょ。こんなのをもらってしまったら」
吉川 「うん。ちょっと真剣に考えてみて欲しいんだ。結婚」
良子 「結婚!? 結婚と言うと、身体を洗うやつ?」
吉川 「それは石鹸だ。全然違う。間違えようがない」
良子 「あらら。気が動転してもう、なにがなにやら」
吉川 「まぁ、すぐにじゃなくていいからさ」
良子 「え……。でも、早くしないとこの世界は滅びてしまうよ」
吉川 「どんな邪教に入ってるんだ。そんなに先の話でもない」
良子 「あらら、どうしましょ。なんか、こういうの思っても見なかったからリアクションのとりかたが中途半端になってしまう」
吉川 「いや、無理にリアクションしなくていいよ」
良子 「いやいや、こんなことしてもらっちゃっていいんですか? これまた今日お日柄も良く……」
吉川 「なんか、言葉遣いがおかしくなってるぞ」
良子 「良子はね。結婚よりプリンの方がいい」
吉川 「プリン。結婚したら死ぬほど食べさせてあげるよ」
良子 「死ぬほど!? 殺す気なのね! 保険金殺人をするつもりなのね! そのための結婚なのね!」
吉川 「いや、死ななくてもいいから、好きなだけ食べていいよ」
良子 「まじでー!? プリンを? 好きなだけ? ということは、単純に考えて、東京ドーム3000分の1くらいの量のプリンを!?」
吉川 「全然単純じゃないし、わかりづらくなってる」
良子 「あわわわ。どうしましょう。プリンに目がくらんで、もう私、優等生じゃいられない」
吉川 「はじめから優等生じゃない」
良子 「じゃあさ、ウェディングケーキはプリンでいい?」
吉川 「う、うん。いいんじゃないかな」
良子 「新郎のお父さんもプリンでいい?」
吉川 「いや、うちのオヤジをプリンにされては困る」
良子 「じゃ、新郎がプリン」
吉川 「俺と結婚しろよ。プリンと添い遂げてどうするんだ」
良子 「あぁ、混乱してきて、なにがなにやら、プリンなのかこんにゃくなのか」
吉川 「こんにゃくははじめから出てきてないから」
良子 「でも、嬉しい!」
吉川 「本当?」
良子 「うん。だって吉川くんのこと大好きだもん。大豆より大好き」
吉川 「大豆に負けなくて良かった」
良子 「二人で幸せになろうね」
吉川 「あぁ」
良子 「プリンみたいな関係を作ろう!」
吉川 「それってどんな?」
良子 「プッチンて」
吉川 「縁起の悪い」
暗転
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