どこでも

博士 「吉川くん! 空前絶後、言語道断の大発明じゃ」


吉川 「今度はどんな珍グッズを発明したんですか?」


博士 「聞いて驚くな! どこでもドアー……」


吉川 「えっ!? まじですか?」


博士 「ノブ」


吉川 「え……」


博士 「どこでもドアノブじゃ」


吉川 「ノブって、ドアの取っ手の?」


博士 「そう。驚いたじゃろ」


吉川 「えぇ。不本意ながら」


博士 「誰しも黄昏時にドアノブをガチャガチャしたい時があるじゃろ?」


吉川 「いまだかつてないですよ。そんな時は」


博士 「夏の思い出と共にガチャガチャと」


吉川 「しません」


博士 「そんな時に、この、どこでもドアノブ」


吉川 「ただのドアノブじゃないですか」


博士 「ただのじゃと!? どこでもといったじゃろ」


吉川 「だから持ち運びしてどこでもガチャガチャできるんでしょ?」


博士 「発想が貧困。これだから米を食ってる島国の人間は困るよ」


吉川 「あんただってそうだろうが!」


博士 「わしはチーズバーガーが主食」


吉川 「うそつけ」


博士 「ハンバーガーがおかず」


吉川 「変化の乏しい食卓だなぁ」


博士 「このドアノブはなんと異次元空間と密接に絡み合っておるのじゃ」


吉川 「え? ……ということは」


博士 「そう。このドアノブをまわせば、どこでも好きな場所」


吉川 「行けるの!?」


博士 「いや、好きな場所のドアノブがガチャガチャ言う」


吉川 「なんの意味があるんだ!」


博士 「世界中どこでもだぞ」


吉川 「必要ない!」


博士 「嫌いなやつの家のドアノブに静電気を送ることも可能」


吉川 「あ。そういう使い道もあるのか」


博士 「どうじゃ、便利じゃろ」


吉川 「いや、便利かどうかと言われると、まったく便利ではない」


博士 「そうか、やはり吉川くんはそういうと思ったよ」


吉川 「しかもこれ、微妙に実物大だからポケットとかに入らないし」


博士 「そう! そこを考慮してバージョンアップしたものがこれ!」


吉川 「あ! それは!?」


博士 「どこでもドアー……」


吉川 「うわぁ!」


博士 「の引き戸の取っ手のところのくぼみ!」


吉川 「いらないし長いよ」



暗転

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