妖怪
吉川 「肩こっちゃって」
藤村 「憑かれてるな」
吉川 「うん。疲れてるみたい」
藤村 「そうじゃない。憑き物が憑いているんだ」
吉川 「えぇ。何を根拠に」
藤村 「俺が推測するに、それは妖怪、肩をこらせる何かだ!」
吉川 「ものすごく具体的な名前の妖怪だな」
藤村 「主に肩をこらせたりするらしい」
吉川 「らしいっていうか、そうなんじゃないの? 名前そのまんまだし」
藤村 「これに摂り憑かれると死ぬこともある」
吉川 「まじで!?」
藤村 「あぁ。かのマリー・アントワネットもこれのせいで断頭台に」
吉川 「それは処刑だよね。妖怪のせいじゃなくて」
藤村 「こいつにとり憑かれさえしなければ今ごろは老いて益々盛ん」
吉川 「いやいや、そんなに生きちゃわないでしょ? え? 現代まで?」
藤村 「そのくらい恐ろしい」
吉川 「それは妖怪よりもマリー・アントワネットが恐ろしい」
藤村 「古くは菅原道真もこの妖怪に憑かれたと文献にある」
吉川 「そんな昔から!」
藤村 「ミッチー・ダイアリーにそう記されてる」
吉川 「多分そんなダイアリーはないと思うよ」
藤村 「肩こっちゃったかも(はぁと)って書いてある」
吉川 「道真が」
藤村 「それほどまでにメジャーな妖怪」
吉川 「そんなこと言い切られても」
藤村 「俺の妖怪アンテナも二本立ってる」
吉川 「そんなアンテナを隠し持ってたことがビックリだ」
藤村 「地下は圏外になりがち」
吉川 「役に立たないアンテナだな」
藤村 「受信すると光るぜ」
吉川 「何が光るんだ」
藤村 「何って、……妖怪が」
吉川 「妖怪が光っちゃうのか。目立つなぁ」
藤村 「遠くからでもよくわかる」
吉川 「俺の肩のも光ってる?」
藤村 「まぶしいくらいだね。笑顔とか」
吉川 「笑っちゃってるんだ。変な妖怪が」
藤村 「妖怪、肩に乗ってる何か」
吉川 「さっきと名前が違う」
藤村 「バカ! 違うよ。二つ乗ってるんだよ」
吉川 「えー! 二つも」
藤村 「いっぱいいるよ。妖怪……Tシャツ」
吉川 「これは普通のTシャツだ」
藤村 「Tシャツにど根性でへばりつく何か」
吉川 「このプリントが妖怪だったのか」
藤村 「完璧に妖怪だね。そのうち寿司を食い始める」
吉川 「微妙な嫌がらせばっかりする妖怪だな」
藤村 「妖怪、星の砂かけ婆」
吉川 「なんか観光地のお土産みたいになってる」
藤村 「と、それを掃除する妖怪」
吉川 「ちゃんと始末するんだ」
藤村 「二人の息の合ったコンビプレーのあまりの早さに、常人は星の砂が撒かれたことに気がつかない」
吉川 「やらなきゃいいじゃん」
藤村 「妖怪、やらなきゃいいじゃん」
吉川 「それは俺が言っただけだ」
藤村 「これにとり憑かれるとすぐにやらなきゃいいじゃんって言っちゃう」
吉川 「妖怪のせいだったのか」
藤村 「妖怪、妖怪のせいだったのか」
吉川 「うるさいよ」
藤村 「妖怪、うるさいよ」
吉川 「何なんだお前」
藤村 「妖怪、なんでもかんでも妖怪のせいにする人です」
吉川 「人じゃん」
藤村 「あ……」
暗転
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