夢占い

藤村 「夢占いの本買ったんだよ」


吉川 「ちょうどよかった。俺の見た夢を占ってよ」


藤村 「えー。いいけど……」


吉川 「これが凄いんだよ。全十三章に分かれた大長編」


藤村 「いや、もうちょっとお手軽なのにしてくれ」


吉川 「じゃぁ、うたた寝感覚で見たライトなやつにするか」


藤村 「そっちがいいな」


吉川 「まずね、超美人が出てくる」


藤村 「へー」


吉川 「新垣結衣を二で割ったような美人」


藤村 「いや、それはただの半分の新垣結衣だ」


吉川 「あ。かけて二で割ったような」


藤村 「なにをかけたんだ」


吉川 「ハチミツ」


藤村 「そんなものかけるなよ! それはただのちょっと甘~い半分の新垣結衣だ」


吉川 「で、その子が俺のこと好きなの」


藤村 「なんでわかるんだよ」


吉川 「なんとなくわかっちゃうんだよ」


藤村 「夢ならではのご都合主義だな」


吉川 「俺Tシャツとか着てる」


藤村 「なんだ、その需要のなさそうなTシャツは」


吉川 「俺CDの発売記念で作った」


藤村 「どこまでも都合のいい世界観」


吉川 「もちろんTシャツもハチミツまみれ」


藤村 「なんでまみれてるんだ」


吉川 「で、二人でデートするの」


藤村 「へぇ」


吉川 「六本木ヒルズへ」


藤村 「ベタだなぁ」


吉川 「もうベタベタだよ。ハチミツまみれだから」


藤村 「ヒルズまで!」


吉川 「丘中ハチミツ。ちょっとしたホイホイみたいになってる」


藤村 「六本木ヒルズってそういう場所じゃないと思うけど」


吉川 「で、そこで俺の必殺カンフーが炸裂」


藤村 「なににだ!? なんで突然戦ってるんだ」


吉川 「見事ハチミツ魔人を倒して町に平和が戻った」


藤村 「ハチミツ魔人の仕業だったのか。そこの重要なところがまるで語られてない」


吉川 「でてきたじゃん」


藤村 「知らないよ。突然でてきたよ」


吉川 「半分は新垣結衣」


藤村 「そいつか! そいつが魔人か」


吉川 「そして涙のお別れシーン」


藤村 「別れちゃうんだ。甘い生活が待ってるんじゃないんだ」


吉川 「なにそれ? 上手いこと言ったつもり?」


藤村 「い、いや……ごめん」


吉川 「さよ~なら~! 六本木ヒルズ~!」


藤村 「ヒルズとの別れか。そんなのまた来ればいい」


吉川 「そして二人は甘い生活に」


藤村 「使ってんじゃん! それ俺が言ったやつじゃん」


吉川 「どう? 夢占ってよ」


藤村 「う~ん。いや、なんというか……」


吉川 「いいから、遠慮なしに一刀両断してよ」


藤村 「ハチミツが……好き」


吉川 「バカか! なんだそれ、全然夢占いじゃないじゃん。俺が言ったまんまじゃん」


藤村 「そんなめちゃめちゃな夢わからねーよ」


吉川 「わかれよ! 夢占いも満足にできないのか、クズ! 死んでしまえ」


藤村 「なんでそこまで言われなきゃいけないんだ」


吉川 「あーもう、超冷めた。あまりのしょうもなさに平熱が二度下がったよ」


藤村 「ごめん」


吉川 「もういいよ。お前二度と俺の前に顔見せるなよ」


藤村 「うぅ」


吉川 「……という夢なんだけど、どう?」


藤村 「えっと、お前は俺のことが嫌い」


吉川 「当たってる!」



暗転

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